第4話 異世界証券取引の仕組み
「それにしても、ふしぎな仕組みですね。異世界のお金が交換できるなんて。誰がお金を出してるんですか?」
「各世界ですニャ。実際にはお金を出しているわけではないのですが、まぁそれは良いですニャ。それで、この取引所に各世界の口座や貸金庫がありますニャ。金庫は亜空間になっていて、何でも保管できますニャ」
「なるほど」
「各世界はお互いに少しずつ相手のお金やそれに準じるものを持ち合っていて、ここで調整していますニャ」
「そうだったんですね」
「はいですニャ。あとは商品取引というものもありますニャ」
「商品?」
「たとえばある世界では石油はゴミですが、地球では貴重品ですニャ。そういったもののやり繰りも、ここでやってますニャ」
「なるほど」
「こんな風に、いくつもの世界の品々が複雑に絡み合って、価値が入り乱れていますニャ。その価値を整理して、交換するルールを作っているのがこの取引所ですニャ」
「へぇ、すごいですね」
ユタカは心の底から思った。
「ですニャ。でもまぁ、各世界のリスクの軽減と異世界召喚者への褒賞の支払いのために使われてるのが実情ですニャ」
「面白い仕組みですね。異世界召喚ってそんなにあるんですか」
「最近はしょっちゅうですニャ」
確かに思い当たるフシがあるな、とユタカは思った。
「召喚しても、報酬払わない世界とかありそうですが」
「そこはまぁ性善説ですニャ。でもまぁ、なかなか悪いことはできませんニャ」
「神様的な方がいらっしゃるんですか?」
「いえいえ、もっと怖い人たちですニャ」
「怖い?」
「まあとにかく、ここがあれば大丈夫ですニャ」
そういうものだと理解しておこう、ユタカはそう思った。
そうこうしているうちに、猫の後ろから猿人がやってきて何かを手渡した。
「お待たせしたニャ。口座への振り込みが完了しましたニャ。これで元の世界に帰っていただいて問題ないですニャ。口座は全て作り直していますニャ」
猫はいくつかの銀行の通帳とカードを渡してきた。どれも見覚えのあるもので、名前は全て自分になっているが、見たことがない金額が印字されていた。
「そういえば、どうやって元の世界に戻れば良いのでしょうか?」
「専用のゲートがありますニャ」
「そうなんですね。ありがとうございます。それではそろそろ帰ろうかと思います」
「はいですニャ。この度はお疲れさまでしたニャ」
そう言って、猫が頭を下げたときだった。
ドン、と隣ですごい音がした。
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