第28話「どうか安らかに」

「死ねぇぇぇぇ!!!リオ・ウルフゥゥゥ!!」


全身に氣を纏ったヨーゼフは

リオに斬りかかる。


カキィン!


「な……なにぃ!?」


なんとリオの胴体を

斬りつけた剣が折れたのだ。


「残念……そんなナマクラじゃ

俺には傷一つ付けられねぇよ」


「……チィッ!ならこれはどうだ!!

ハァァァァァァァァァァ……!!」


ヨーゼフは剣を捨て、右手に

氣を集め始める。

するとどんどん剣の様な形のオーラが

でき始める。


「ほ~……"氣剣"か

それを使えるなんて中々やるじゃねえの」


「俺の氣剣はオリハルコンをも斬り裂く!!!

でやぁぁぁぁぁ!!!」


キィン!!!  


「………ッ!!」


ヨーゼフは驚愕した。

何とリオは氣剣を

右人差し指で受け止めたのだ。


「こ……この化物が……!!」


「悪ぃけどよ~……鍛え方が違うんだよ」


そういうとリオは左手で

ヨーゼフの眉間にデコピンを

ピーンッと喰らわした。


「かっ………!!」


ズシャッ


デコピンで脳を揺らされたヨーゼフは

失神して床に倒れた。


「へっ、一丁上がりっと

さてとトムさん、早速こいつを

あの彼女の元に連れていこう」


「あ、ああ………」


リオのあまりの強さに

呆然としていたトムだった。




~トム宅~


「わーお、こりゃ驚いた」


「~~ッッ!!!」


リオ達は驚いた。

寝室にいたのは

例の黒髪ロングの

女性レヴナントだけではなく

その他複数の血塗れの

女性レヴナント達もいたのだ。

おそらく彼女達はヨーゼフの地下室で

亡くなっていた女性達だろう。


「クゥゥゥゥゥゥゥン!」


ドサッ!!


トムはあまりに恐ろしすぎる光景に

失神してしまった。


「ほいよ!取れたてピチピチの

変態サイコ殺人鬼のヨーゼフさんだよ!

煮るなり焼くなり好きにしてちょ!」


そう言ってリオは

抱えていたヨーゼフを彼女達の元へ投げる。


ドサッ


「……ん…ん~……?」


投げられた衝撃で

目を覚ましたヨーゼフ。


「!!」


ヨーゼフは戦慄した。

目の前には恐ろしい形相で

自信を見つめる大量のレヴナント達が

いたからである。


「こ、こいつらはレヴナントか!!

氣で蹴散らして………!!」


ザンッ!!


「がっ……!?」


ドシャッ!!


「おいおい……余計な事せず

死を受け入れましょうや」


リオは立ち上がろうとしたヨーゼフの脚に

腰に下げている愛刀"白狼"で斬撃を飛ばした。


「ぐっ……!!ぐぅぅぅ……!!」


脚の痛みで巧く氣を練れないヨーゼフ。

そんなヨーゼフにレヴナント達は

近寄ってくる。


「く、来るな!!来るんじゃねぇぇ!!

醜い化物どもがぁぁぁぁ!!」


そんな叫びも虚しく

レヴナント達はヨーゼフに

一斉に襲いかかかる。


「がっ………!!がぁぁぁぁぁぁ!!!」


まずは数体が精気を吸い取る。

そしてそれで弱ったところで

他の数体で四肢を掴み、そのまま引きちぎる。


ブチブチブチィン!


両手両脚を失い

ダルマになるヨーゼフ。

そして最後は黒髪ロングが

ヨーゼフの口に手を突っ込み

そのまま舌を引っこ抜いた。


ブシャアアアアアアッ!!


部屋全体に血が飛び散る。


ドサッ!


床に倒れたヨーゼフは

凄まじい顔で絶命していた。


パチパチパチパチ


「ヒュ~!バイオレンス&エキサイティング!」


リオは彼女達を拍手で称賛した。

すると彼女達はリオの元へと近づいてくる。


「ん?何ぞ何ぞ?」


彼女達は一斉にリオに

ペコリと頭を下げた。

あのサイコ殺人鬼野郎を

自分達の元へと連れてきてくれた

感謝の気持ちらしい。


「よせよ、礼をされる程の事なんて

してないっつの」


リオがそう言うと黒髪ロングの彼女が

その場いるレヴナント達を代表するかの様に

リオの元へと近づき手を軽く握り締める。

どうやらテレパシーで何かを伝えたいらしい。


「ん………?……フムフム……

ああ分かった、安心しな

俺が全てやっとくよ」


リオがそう答えると

彼女達はニコリと笑い

また軽く頭を下げ、フワーっと消えていった。


「どうか安らかに………」


合掌するリオ。


「……あ、そうだ……

あのおっさん起こさないと……」


リオは失神してるトムの元に近寄り

軽く顔をペチペチと叩く。


「おい、おっさん!トムさん!起きろ!」


「……ん~……?」


「終わったよ、彼女達は成仏した。」


「え?」


「これでアンタにかかってる呪術も

消えたはずだと思う、一応見してみ」


リオはトムの首の後ろを

自信の方へと向ける。


「……よし、消えてる……

これで安心だな………」


「ホッ………よかった~……

これでまだまだ生きられる~……」


安堵のため息をつくトム。


「フッ……その命大事にしろよ

んじゃ、俺はやる事があるから

この辺でおさらばするよ」


「え?一体何をするんだ!?」


「あのサイコ野郎の家の地下にあった

女性達の遺体……アレを街の外れにある

森に埋めるんだよ

さっき彼女達に頼まれたからな……」


「あ!俺も手伝うよ!」


「お?マジで?助かるよ」





~街外れの森~



「ーーーーフ~……これで全部か……」


全ての遺体を埋め終えたリオとトム。


「しっかしどうして

ここに埋めて欲しかったんだろうな~……」


疑問に思うトム。


「……多分自然豊かな場所で

安らかに眠りたかったんじゃないか…?」


「……なるほど……」


「よし、んじゃトムさん

埋め終わったところで

もう一回合掌しておこう」


「ああ」


パン


2人は遺体を埋めた場所に

手を合わせて目を瞑り

安らかに眠れる様に祈りを捧げる。


「……さてと~……

やる事もやったし、俺行くわ、んじゃな」


リオはトムにそう告げ

その場から去ろうとする。


「あ!待ってくれよ!

まだお礼してないぜ!?」


「いや~、俺そういうのいいんだわ

めんどくせーし

てことなんで、バ~~イ」


トムはそう言って去って行く

リオに対して叫んだ。


「あ、改めて言うけどさ~!!

ありがとうな~!!

旦那は命の恩人だよ~!!

この恩は一生忘れないよ~!!」


そんなトムに対して

リオは前を向いて歩きながら

軽く右手を振った。


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