第27話「惨い」

「ヴォエエエエエエエエエ!!!」


ドボドボドボ


嘔吐するトム。


「…………何てこったい………」


険しい表情をするリオ。


隠し階段をおりた2人。

おりた先にあったのは広い部屋。

そこには地獄の様な光景が

広がっていたのである。


2人の目の前にあったのは

複数の女性の遺体であった。

全身をズタズタに切り裂かれ

床に転がされている者。

四肢を切断され

壁に磔にされている者。

そして真ん中に置かれている台には

切断された女性の生首が複数。


「……トムさんよぉ……これで分かったな……

気さくで優しい街のお偉いさんの正体は

とんだマジキチサイコ野郎だってな」


「ヴォエエエエエエエエエエエ!!!」


「………とりあえず壁に磔にされてる

女性達を下ろしてあげないとな……」


リオは壁に近づき

遺体を下ろそうとする。

そしてその遺体の顔を見てハッとなる。


「彼女は……!」


リオが下ろそうとした1人の遺体。

よく見るとその遺体は

トムの寝室に"レヴナント"として

現れた女性だった。


「………惨い事しやがる……」


その後全ての磔遺体を

下ろし終えたリオは

この部屋にある遺体を全て

部屋の真ん中辺りに集めて

そこで合掌。

そしてトムの元に近寄る。


「トムさん……とりあえずここを出よう

んで、街の警備団にここの事を知らせて

早いとこヨーゼフとかいう奴を見つけて

アンタの家の寝室にいる

彼女の元に連れて行こう」


「………あ、ああ……そうだな……」


口周りに付いたゲロをハンカチで拭い

トムは立ち上がる。

そして2人は

おりてきた階段をのぼろうとする。


ガァン!!


「あだぁ!!!」


ズシャアッ!


階段をのぼろうとしたトムは

"見えない何か"に頭をぶつけ地面に倒れる。


「あだだだ……な、何なんだよ一体……!」


リオはトムがぶつかった辺りに近づき

軽く手を伸ばす。


コンコンコン


「…これは……"氣壁(きへき)"か」


「きへき!?何だそりゃ!?」


「"氣"によって作られる壁さ

スレイヤーが魔物と戦う時によく使う技さ」



「ーーーその通りだ」


「「!!」」


リオの説明に何者かがアンサーし

階段をおりてくる。


コッ…コッ…コッ…



「おいおい噂の

ヨーゼフさんかな?」


階段をおりてきて

2人の目の前に姿を現したのは

右手に剣を持ち

身長190cm前後で痩せ型の

30代半ばのM字ハゲの男性だった。

そして男性は2人に自己紹介をする。


「俺はヨーゼフ

この街で一番偉い人間だ」


「ほう、アンタが……

随分と男前じゃねーの」


リオは獣の様な鋭い目付きで

ヨーゼフを睨みながら言う。

そしてヨーゼフは

そんなリオを見ながら質問した。


「お前……見たところスレイヤーのようだな

名前は?」


「リオ・ウルフ」


「リオ・ウルフ……!!

そうか……お前があの噂のクレイジーウルフか……」


「ああ、そうだ

つかよ~、アンタもスレイヤーだろ?

こんな頑丈な氣壁を作れるなんてよ~」


「ふふふ、"元"な

今はとっくに引退して

街のお偉いさんをやってる」


「へぇ~…じゃあその元スレイヤーの

ヨーゼフさんに聞きたいんだけどよ~

最近この街で起きてると言われてる

女性失踪事件……

それらは全てアンタの仕業か?」


「ああそうだ」


「今俺達の後ろにある

無惨に痛め付けられた女性達の遺体は

全員アンタが拉致して殺した女性達か?」


「ああそうだ」


「やっぱりな~、女性達に付いてた

"ある男のニオイ"と"アンタのニオイ"

見事に一致してんもん」


リオとヨーゼフがそんな会話をしてる中

リオの後ろにいたトムが

ヨーゼフに恐る恐る質問する。


「ヨ……ヨーゼフさん……

あなたみたいな優しい人間が

い、一体どうしてこんな事を……!?」


「………………ふふ」


「え!?」


「ハッハッハッハッハ!!!

優しい人間!?

俺は元々こんな人間だぜ!?

今までは猫被ってたんだよぉぉぉ!!!」


「なっ……!?」


「俺はスレイヤー時代から

夜な夜な女を捕まえては強姦し、殺してた!!

で、その後は自室で死体の解体ショー!!」


「とんだマジキチ野郎だな」


「でな、ある時ふと思ったんだよ!!

このままこんな事してたら

自分が死んだ時

地獄に堕とされちまうんじゃないかって!!

俺は結構そういうの信じるタイプでね!!」


「「……………」」


「そこで俺が考えたのは

スレイヤーを辞めて、街の偉い人になって

そこで住人達を優しくサポート

してあげるって事よぉぉぉ!!

そうすれば神様は俺が死んだ時に

天国に連れていってくれると

思ったんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「「……………」」


「けどな……やっぱり無理だった……

殺人の衝動を抑えるのは……

ある日の夜、街を歩いていたら

すげー好みの黒髪ロングの女を見つけて

そのまま路地裏に連れ込んで

強姦殺人しちまった…………

そっからはもう歯止めが効かなくなって

今に至るってワケよ

フフフのフ~ン」


「…………言いてえ事はそれだけかよ

クソ野郎……」


「フッ…」


リオの言葉に対して

ヨーゼフは軽く笑い

全身に山吹色のオーラを纏い

2人に剣を向ける。


「悪いけどよ~、てめぇら2人には

ここで死んでもらうぜ

この街の住人誰1人も知らない秘密を

知られちまったからな」

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