第26話「嗅覚」

例の女性の霊から聞いた現場へと

着いたリオとトム。


「ここで殺されたのか………」


そう言いながら

殺害現場を神妙な顔で見回すトム。


「………うっし、じゃあ追跡始めっか」


リオは早速鼻をスンスンし始める。


「……する……するぜ……

金のニオイがプンプンと……」


リオはニオイを辿りながら足を進めて行く。

そしてトムはそれに着いて行く。


現場から20分くらい歩いたところで

ある大きな家へと着いた。


「ここでニオイが止まってる……

おそらく犯人はこの家の主だな」


「………そ、そんなバカな………」


「ん?何がだ?」


「ここは……"ヨーゼフ"の家だ……!」


「ヨーゼフ?」


「ああ……!この街で一番偉い人だよ!

気さくで……優しくて……住人思いで……

ま、まさか彼が殺人だなんて……」


「ま、とりあえず確認してみようや」


ドンドンドンドンドン!


リオは扉をノックする。


「ヨーゼフさんよ~!!

いらっしゃいますかね~!!??」


返事がない。

どうやら留守の様だ。


「………多分この時間帯は散歩に

行ってるんだと思う」


「じゃあ勝手に上がらせてもらうとしますかね」


バアアアアアアアン!!


そう言ってリオは扉を蹴破った。


「おじゃましま~」


「か、勝手に入って大丈夫だろうか……」


2人は中へと入っていく。


「ほ~……立派な家だこと……」


中には大きなダイニングテーブルに

豪華なシャンデリア、金製の大きな壺

プリケツタイガーの剥製

そして、難しそうな書物が入った

5段の本棚が置かれていた。


「ヨーゼフってのは

随分金持ち……スンスンスン………」


リオは"何かの臭い"に気付く。


(……微かにだが……"死臭"がする……

それも"人間"の……

数は……1、2……17体か………)


「ど、どうかしたのか?」


トムはリオに聞く。


「ああ……この家から微かにだが

人間の死臭がする……」


「え!?」


「スンスンスン………」


リオは本棚の方を見る。


「あの本棚がどうかしたのか?」


「あそこから臭う」


「え!?ほ、本当か!?

でも、あそこに死体の入る

スペースなんて………」


「………」


リオは本棚に近づき周りを調べ始める。


「…………ん?」


何かに気付いたリオ。


「ど、どうした?」


「この本棚……変じゃないか?」


「え?ど、どこが変なんだ?」


「この本棚、5段になってるだろ?」

ほら………見てみろよ

真ん中の段に入ってる本は全部綺麗なのに

残りの段に入ってる本はみんな埃被ってる」


「あ~……言われて見れば……確かに…

でも、そんなに変て言う程か?

単にその段の本がお気に入りで

いつも頻繁に取り出してるんだろ」


「いつも頻繁に………か」


リオは真ん中の段に入った

分厚い8冊の本を何冊か手に取り

ペラペラとめくり始める。


(特別変わった事はねぇか…………ん!?)


何かに気付いたのか

リオはその段の本を全部取り出して

ページをめくり始める。

そしてそれが終わると

順番を並べ替えながら棚に戻し始めた。


「な、何してるんだ!?」

 

「まぁ見てろって………できた!」


リオは本を並べ終える。

するとギギギギィ~と音を立て

扉が開くかの様に

壁ごと本棚が手前に動き

2人の目の前には

下へと続く階段があらわれた。


「か、隠し部屋!?

い、いや!!、というより

どうやって仕掛けに気付いたんだ!?」


「本の中身さ」


「中身?」


「ああ、背表紙に各々1~8巻の数字が

振ってあるだろ?

でな、俺が最初手に取ったのは

1~3巻だったんだ」


「ふむふむ」


「けど、中身は違った……

1巻の中身は4巻、2巻の中身は7巻

そんで、3巻の中身は5巻だったんだ」


「ほうほう!?」


「つまりよ、1~8巻を

綺麗順番に並べてると思わせておいて

実際の並びは4、7、5、1、6、2、8、3

だったんだよ」


「ほ~~!!」


「んで、何か怪しいな~と思って

数字の順番通りに並べて替えてみたら

仕掛けが作動ってワケよ」


「なるほど!仕掛けがバレない様に

表紙を入れ替えて

カモフラージュしてたんだな!」


「ああ、その通りだ」


(にしても……スンスンスン……)


階段の下からは

先程より強い死臭を感じた。

おそらくこの先に死体があるのだろう。


「よし、そんじゃ先へ進むとしようぜ」


そう言ってリオはトムと共に

階段を降りて行った。

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