第23話「悪霊」

街に着くなり

休息を取るための宿を探していたリオ。

すると後ろから

ひどくやつれきった1人の中年男性から

声をかけられる。


「ちょ、ちょいとそこの旦那!!

スレイヤーの方かい!?」


「…ん?ああ…そうだけど?」


男性はリオの右手の甲を見て

彼がスレイヤーだと判断したのだろう。

今更だがスレイヤーの人達は皆

左右どちらかの手の甲に魔法で練り込んだ

特殊なタトゥーを入れているのだ。


「俺はこの街で商人をやっている

トムという者なんだが

無理を承知でお願いしたい事があるんだ!!

聞いてくれないか!?」


1秒でも早くベッドの上で

休息を取りたかったリオは少し悩んだが

了承する事にした。


「しゃあないな……話してみろよ」


「ああ!!ありがとう!!

実は、最近俺の近くに

幽霊が出るんだ!!」


「幽霊?」


「ああ!!髪の長い女の霊だ!!

毎晩寝てる時に急に金縛りにあって

ソイツが俺の枕元にスーッと現れて

上にのしかかって来て

首を絞めながらブツブツと

何かを唱えるんだ!!

で、10分くらい経つとまた

スーッと消えていくんだ!!」


「………」


「最初は住んでる家が悪いんだと思って

すぐに引っ越したんだ……!!

けど……アイツはどこへ行っても現れるんだ…!!」

だからさ…!!アンタに

何とかしてほしいんだよ!!

スレイヤーなら何か

対処法とか知ってるんだろ!?」


話を聞いていたリオは推測していた。


(………多分レヴナントの類だな………)



レヴナントとは

この世に数多く存在する

魔物の分類種の1つである。


特徴的なのは

この魔物達は元人間という事である。

生前この世に強い未練を残した者が

死後怨霊となって魔物と化すのだ。


レヴナント達をこの世から

消滅させる方法は2つある。

1つは、氣による攻撃、もしくは中級以上の魔法。

2つ目は、生前の未練を解決する事。


(前者の方がスムーズに解決できるんだが…

俺にも一応人の心はある……

なんで後者でいくとするか……)


そう決めたリオは男性に話しかける。


「なぁ、とりあえず

アンタが今住んでる家に

行ってもいいか?

色々調べたりしたいんでね」


「あ、ああ…!!もちろんだよ!!

来てくれ!!案内するよ!!」


そう言って男性は

案内しようと振り返る。


「ん……?ちょっと待て……!!」


ガシッ


リオは急に男性の首を両手で掴み

そこに自身の顔を近づけた。


「な……!?なんだい!?」


「…………………」


リオは首の後ろを

数秒ジーッと見つめた後に

男性に言った。


「アンタ………"呪術"にかかってるな……」


「え!?ど……どういう事だい!?」


「変にはぐらかしてもあれだし……

ストレートに言うぜ……?」

アンタはこのままじゃ1週間以内に死ぬ」


「なっ……!?」





呪術とは……この世に存在する

超自然的力の1つである。

魔法学用語では"黒魔術"とも呼ばれている。


リオが男性の"呪術状態"に気付いた理由は

首の後ろであった。

男性が後ろに振り返った際に

首の後ろに黒色のクモの巣状の毛細血管が

浮かび上がっているのに気付いたのだ。

これは呪術を受けた際に身体に表れる

症状の1つなのである。




(そういえばさっき、毎晩霊が

ブツブツ何かを唱えてるとか言ってたな…

おそらくそれは"死の呪文"だったんだろうな……)


「な……なぁ!?

い……一体どうすればいいんだ!?

俺は死にたくねぇよ!!」


「呪術を解くには一流の魔術師に

"呪術解除魔法"をかけてもらう……

もしくは術をかけた

レヴナントを消滅させる事だ……

まぁ、現時点の場合後者しか方法はないな」


「じゃ、じゃあ!!

早いとこそのレヴナントとかいうのを

消滅させてくれよ!!

金ならいくらでも払うからさ!!」


「ああ、できる限り努力はするよ……」


2人はその後、急いで家へと向かった。

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