第16話「氣と魔法」

「ルァァァァァァ!!!」


剣を片手に

ダイヤモンドアサシン(以下、ダイアサ)に

ものすごい勢いで突っ込むミア。

狙いはダイヤの鎧で覆われていない

首部分だ。


キィンッ!!


ダイアサは、そうはさせるものかと

自慢のブレードで攻撃を受け止める。

するとミアはそのまま

つばぜり合い状態のままダイアサを

近くの壁へと押し込む。


そして右手で剣を押し込んだ状態のまま

左手でダイアサの左腕をとり、自身の左足を

相手の左足に掛けてテイクダウンを決める。

すると倒れたはずみで首が無防備になったので

そこに両手で剣を当てて一気に押し込んだ。


ザクッ!


(手応えあり!終わった!)


そう思った瞬間

目の前でボフンッと煙がモクモク。


そして煙の中から

「ハズレ」と書かれた紙を貼られた

一体の藁人形が現れた。


「なっ…!?変わり身の術!?」


ミアが切断したのは

ダイアサの首ではなく

人形の首だったのだ。


「グルルァァ(おしかったな)」


「!!」


スパンッ!


ミアの背後から突然現れたダイアサは

彼女の背中を斬りつけた。


「…ぐっ…!!」


地面に転がり込むミア。


「グル、ラララァ(チィ、避けたか)」


ダイアサは彼女を

縦に真っ二つにするつもりだったが

とっさに避けられたため

願いは叶わなかったようだ。


「ふ~、ヤッベ…私としたことが…

0.5秒秒遅れをとっちゃった~ん☆

てへ☆」


ミアは立ち上がり

軽々しい発言をするが

その表情には余裕がなかった。

斬撃は思ったよりも深めに入っていたようだ。


「アッオウ!!」


ダイアサは叫びながら

ミアの方へと走っていき

頸動脈を狙ってブレードで斬り掛かる。


キィンッ!


剣でガードするミア。


キィンッ! キィンッ! カキィンッ!


洞窟内で激しい剣撃が繰り広げられる。


「ハァ…ハァッ…」


激しく動けば動くほど

ズキズキと背中に焼けるような激痛が走る。


(Sランクとはいえ…まさかここまで苦戦

する事になるとはね…)


剣の腕は互角

そして全身を包む硬いダイヤの鎧。

このまま普通に戦っていては

勝てないと感じたミア。


すると剣撃の最中に突然手を前に出して

ダイアサに向かって唱える。


「フレイム」


ボワアッ!


ミアがそう唱えた瞬間、彼女の手から

紅い炎が飛び出し、ダイアサを包む。


「アヅイ!!!」


ダイアサは熱くて地面に転がりだす。


ミアが出した「フレイム」とは「魔法」である。

魔法とはこの世界に存在する特殊な力の事である。



魔法は大きく分けて三段階存在する。

初級、中級、上級。

ちなみにミアが出した「フレイム」は初級魔法である。

相手に致命傷は与えられないが

ある程度のダメージを負わすことはできる。


ところで、ミアはなぜ初級の魔法を出したのか?

中級、上級の強力な魔法を使えばいいじゃないかと思う人もいるかもしれない。


その答えは……ミアは初級魔法しか使えないからである。

これは彼女に限らず他のスレイヤー全般がそうなのだ。

「スレイヤー養成学校」には

魔法の授業カリキュラムは少ないのだ。

中級以上の魔法が使えるのは基本的に

「魔法学校」を卒業した「魔術師」だけなのである。



「グゥ~……ソビエタッタタワ~………」


ダイアサは下半身をプルプルさせながら立ち上がる。

初級魔法の割には結構効いたようだ。

炎属性が弱点だったのだろうか。

そしてそんな状態のダイアサに

ミアはさらに魔法を放つ。


「フェター!」


ミアが唱えるとダイアサの足元から

無数の鎖が飛び出し

全身を拘束し、動きを封じる。


「ファッ!?」


驚くダイアサ。


そして動きを封じている間、ミアは剣を構え

低い声を発する。


「ハァァァァァァァァァ~…」


するとだんだんとミアの全身から

山吹色のオーラが出てくる。


「グルルルル~…ペイス!!!」


ブチィィィン!!


ダイアサは鎖を解き

鬼の様な形相でミアの方へと走っていく。


「ガァァァァァァァ!!!」


右手だけではなく左手もブレードに変化させて

ベーゴマの様に横に高速回転をしながら

ミアに斬り掛かる。

それに対してミアは


「飛んで火に入る夏の虫!!!」


ザンッ!!!


ミアはダイアサのボディを硬いダイヤの鎧ごと

おもいっきりブった斬った。


「ガッ……!?」


ドサッ!


地面に倒れたダイアサは既に絶命していた。


「ふい~…ようやく終わった…」


そう言いながらミアは剣を鞘に納める。


しかし、ミアはなぜ硬い鎧ごと斬る事ができたのか?

それは「氣」を高めたからである。

「氣」とは、人間の全身に流れる

特殊なエネルギーの事である。

ミアを含めた多くのスレイヤー達は

厳しい訓練の末にこの「氣」を自在に

コントロールできるようになり強靭な力を発揮する事が可能となるのだ。


「ああ~…疲れた!」


戦いが終わり、ミアはドサッと地面に座り込む。


「疲れたしお腹空いたし傷の手当てもしなきゃだし

ちょいとここらで休憩しますか」


呑気に休憩を始めたミア。

しかし、この時の彼女には知る由もなかった…

これより先にはダイアサ以上の魔物が

存在したということを…


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