第11話「パクチー」

~とあるパンケーキ屋~


「あなた、なっかなか根性あるじゃない」


ドミグラスドラゴンこと巨乳美女のジェシカは

席に座りパンケーキを食べながら目の前に

座っているミアにそう言う。


聞くところによると

彼女は二年程前に、ある人物との戦いに敗れ

傷付き、疲弊し、森の中で

死にかけていたところを偶然通りかかった

リオによって助けられたのだと言う。

それ以来二人は親友になったのだそうだ。

そして彼女は現在、趣味であちこちを

旅しているようだ。


「しかしよ~お前相変わらず戦いが好きだよな

こんなところにまで来て無差別バトルだもんな」


ジェシカの隣に座っていた

リオが言う。


「しょうがないじゅわ~ん

戦闘民族なんだも~ん私」


そう言いながら

リオの腕にしがみつく。


この二人できてんのか?

ミアがそう思いながら見ていると

ジェシカは彼女の方へと顔を向けた。


「ねぇ、ミアってさ~

どうしてあちこち旅してんの?趣味?」


「ううん、人捜し」


「人?」


「うん、二年前に失踪した

双子の姉のミラを捜してるんだ」


「そっかなるほど…姉捜しか…

ちなみに聞くんだけど

どんな見た目?そっくり?」


ジェシカが聞くと

ミアはポーチから姉の肖像画を出し

二人に見せる。


「こんな感じ、一卵性だから顔は一緒

でもミラの場合、左目が赤色なんだ…

二人は何か知ってることない?」


「…うーん…見たことないかな~

そんな人物…リオは?」


「俺もない、済まぬ」


「そっか…ありがとう」


ミアは肖像画をポーチにしまう。

するとジェシカが言い出す。


「あ、そうだ!

アイツなら何か知ってるんじゃない?」


「アイツ?」


ミアが聞く。


「うん、セロリ・ベーコンっていう名前の情報屋

確か今「パクチー」に滞在してるって噂を聞いたよ」


パクチー…

ここからそう遠くない街だ。


「ありがとう!

早速行って聞いてみる!

またどこかで会おうね!それじゃ!」


そう言ってミアは

颯爽と去って行った。


「元気がいいね~あの子

それに良い子、裏表がなく真っ直ぐしてる」


「ああ、そうだな…

けどさ…言っちゃなんだけど

ありゃ早死にするタイプだと俺は思うぜ」


「それリオが言う?」


「「ハハハハハ」」


二人は笑いだす。

そして笑いの後に

ジェシカは低いトーンで

リオに対してあることを聞いた。


「……ねぇ…リオ…」


「ん?」


「まだ…アイツへの復讐の思い…

変わってない…?」


「………ああ」


「…あのさ!

余計なお世話かもしんないけど…!」


「分かってるよ」


「え?」


「復讐なんかしたって大切だった人達は

もう戻らない…だろ?」


「……」


「分かってる…

俺だってそんなことは分かってる…

けどさ……」


リオは瞳孔を開き

右拳を強く握り締める。


「俺は…あのクソ野郎を…!!

村の連中や…母さんを殺した

あのドグザレ野郎を絶対に許せねぇ…!!

無惨に…!!凄惨に…!!

ブチ殺してやらねぇと

気が済まねぇ…!!」


そう言うとリオは

百戦錬磨のジェシカですら

恐怖するくらいの殺気を放った。

するとその殺気により

店内にいた客や従業員が全員失神してしまった。


「…ッ!!ヤベェ…!!

俺としたことが…」


リオは我に返り

とっさに店を出る。

そしてジェシカはそれを追った。




それから30分程経った頃…




~「ンニャピ」出入口付近~




「じゃあ私こっちだからさ…

また、どっかで会えると良いね」


「ああ、また近いうち会えるさ

んじゃな!」


そう言ってリオが次の目的地へ

歩きだそうとすると

ジェシカが呼び止める。


「ねぇ!リオ!」


「ん?」


リオはジェシカの方へと振り返る。


「あのさ…その~…なんというか…

生きて!」


「え?」


「えーっとさ!何言ってるか

分かんないと思うけどさ!

とにかく…生きて!絶対死なないで!

分かった!?」


ジェシカの発言に

しばらく沈黙するリオ。

が、すぐにニコりと笑って答えた。


「ああ!分かった!

しぶとく図太く百万年くらい生きるわ!」


「よし!」


グッドサインを出すジェシカ。

そして、その後二人は手を振りながら

それぞれの道へと歩いて行った。


(ありがとな…ジェシカ…

俺なんかを気遣ってくれてよ…

でも悪いけど、約束は守れそうにねぇ…

俺は多分アイツとの戦いで死ぬと思う…)


リオは心の中でそう言いながら

目的地へと足を進めて行った。

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