第10話「桃色髪の美女」

時刻は午前10時ちょっと過ぎ。

グルメの街「ンニャピ」の広場で

金髪少女が黒褐色の竜に対して

三角絞めを決めていた。


「甘っちょろい三角だな…!小娘…!!」


「はん!強がり言っちゃって!」


グググ~


ミアは絞めている力を

さらに強くする。


「さぁ…とっととタップした方が

いいんじゃないの?

このままじゃ…マジで天に召されるよ?」


「……プ」


「え?何て?」


「ネバーギブアップ!!!」


そう言うと竜は

絞められている状態のまま立ち上がり

ミアを自身の肩の高さまで持ち上げる。


「なっ…!?ウソでしょ!?」


「失神しろやメスガキャアアアアア!!!」


竜はそう叫びながら

ミアを地面に叩きつけた。


ゴシャアッ!!!


「かはっ…!!」


ミアはとっさに頭を守ったため

脳震盪を防ぐことはできた。

とはいえ結構なダメージだ。

それに叩きつけられた衝撃で

三角絞めも解除されてしまった。


「今度はこっちの番じゃい!」


竜はミアの上に覆い被さり

ミアの首と上方に上げさせた右腕を腋の下から

襷の様にして自分の両腕で捕らえた。

これは肩固めの態勢だ。


「チィッ…!ナメんなっつの!」


ミアはすぐさま下半身を上に上げて

ブンブンと何回か振り

その勢いで左肩の方向に向かって後転して

見事に脱出。


「やるな小娘!」


「どうも…!」


二人はそう言って立ち上がると

構えをとりつつ、また一定の距離をつくる。

すると周りから声援が聞こえてきた。


「いいぞー!金髪姉ちゃん!」


「竜さん頑張ってー!」


「にゃ~ん(どっちもガンバ)」


どうやらいつの間にか

ギャラリー達が集まっていたようだ。

そしてミアは声援の最中

心の中でこう考えていた。


(ヤツと私の実力は五分…

このまま普通に戦っても

一生決着は着かないだろう…

ならば…)


((この右拳に全身全霊全てをかけ

被弾上等覚悟でヤツの顎に全力でブチ込む!!!))


ミアと竜は同じことを考えていた。

ジリジリと少しずつ距離を詰めていく二人。

あたりには緊張感が走る。


ジリ…ジリ…ジリ…


「「るぁぁぁぁ!!!!」」


二人は叫びながら一気に距離を詰め

渾身の右ストレートを

互いの顎に向けて放つ。


「「昇天しろやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」


パシイッ!


「「!?」」


誰もが勝負を決すると思ったその瞬間

突然ある人物が二人の間に入り

拳をキャッチする。


「あ…あなたは…!」


その人物とはリオだった。


「二人とも、もうそのへんにしとけよ…

互いに恨みがない二人が

これ以上傷付け合ってどうすんだよ」


「……」


スッ…


先に拳を下げたのはミアだった。


(確かにコイツの言う通りだ…

何無駄なことやってんだろ私…)


そう心の中で思い

ふと竜の方を向いたミア。

すると竜は拳を下げ

リオの顔を見ながら

プルプルと震えていた。

トイレに行きたいのだろうか?

そう思った瞬間…!


ボフン!!!


なんと!

竜は突如として

桃色髪の巨乳美女に変身したのだ!


「は!?」


驚き困惑するミア。

そしてその巨乳美女は

リオにおもいっきり抱きついた。


「リオォォォォォォ!!

久しぶりぃぃぃぃぃぃぃん!!

この街に来てたんだねぇぇ!!」


「ああ、ちょいとヤボ用でな…

ていうか、相変わらず元気そうだなジェシカ」


二人は知り合いの様だった。


「……どうなってんの?」


ミアはその様子を見ながら

ポカーンとしていた。


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