第6話「リオの本性」

午前7時


宿のベッドで寝ていたミアが目を覚ます。


「ん~…もう朝か~…」


ベッドから起き上がると

洗面所で顔を洗い、宿で出された朝食を済ませ

歯を磨き、宿を出る。


「さて、ミラの情報収集始めよっと」


ミアは人の多い街の中心部へ行き

道行く人々に姉の肖像画を見せ

何か知ってることはないか尋ねたが

自信の求めているような情報は中々得られなかった。


それから二時間ほど経った後

ミアは路地裏に座り込んでいた。


「はぁ~…全然ダメだ…

この街にもいないか…ミラのことを知ってる人は」


途方に暮れていた彼女だったが

すぐに気持ちを切り替える。


「クヨクヨしてたところで

どうにもならないか…

よし…!もう少し聞いて回ろう!」


そう言うとミアは

スッと立ち上がり

路地裏から街の方へと出る。

すると近くから

男の怒鳴りが聞こえた。


「殺すぞコラァァァァァァァ!!!」


何事かと思い

声のする方向に行ってみると

人だかりが出来ていた。

そして人だかりの真ん中から

見覚えのある顔がひょこんと出ていた。


「リオ・ウルフ…!」


そう呟くと、ミアはすぐに

近くにいた人に声をかける。


「すいません、何があったんですか?」


「ん?ああ、何かチンピラの男が

長身の兄ちゃんに喧嘩吹っ掛けてんだよ

理由は知らんけどね」


「け、喧嘩?」


ミアがそう言った直後

チンピラの男が怒鳴り出す。


「てめぇぇぇぇぇ!!!

ちょっとデカイからって

調子に乗ってんじゃねえぞぉぉぉぉ!!!」


そう言うとリオが返答する。


「別に調子になんて乗ってないが?

てか俺のこと殺すんだろ?御託はいいから

とっとと来いよゴミカス」


ゴキャアッ!!!


リオがそう言った直後

チンピラはリオの顔に渾身の

右フックを喰らわせる…が

リオは全くグラつかない。


「オラァァァァァァ!!!」


バキッ!!!ゴキッ!!!ベキッ!!!

ベキッ!!!ゴキッ!!!バキッ!!!


チンピラはこれだけで終わるものかと

さらに全身に連打を浴びせる。

そしてもう一回顔面に攻撃を浴びせようと

右拳を伸ばした瞬間…


パシッ


「!!」


リオはチンピラの右拳を左手で受け止めた。

そしてそのまま凄まじい力で握りしめる。


ググググググググググググッ


「~ッ!!!がぁぁぁぁぁ!!!」


あまりの痛みに

チンピラは思わず声を上げ

そのまま両膝を地面に着ける。

そしてリオはチンピラに向かい

ドスの効いた声でこう言った。


「次は俺の番だな」


そう言うとリオは

チンピラの顔面に

トーキックを浴びせる。


ベキャアッ!!!


「かっ…!!!」


ドシャッ!


チンピラは蹴られた勢いで

そのまま地面に

仰向けに倒れた。


「かっ…はぁ…はぁ…」


今の蹴りで鼻は完全に折れ

チンピラは戦意のほとんどを

失っていた。

そしてそこにリオが近づき

馬乗りになる。


「これで終わりと思うなよ?」


そう言うとリオは

右拳で顔面に連打を浴びせる。


バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!

バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!


殴る!殴る!何度も殴る!


「オラオラ!!もっと楽しもうぜ!!

チ◯カスベイベー!!」


チンピラの顔とリオの拳は

みるみると鮮血に染まっていく。


「……れ…」


ピタッ


チンピラが

か細い声で何かを言ったため

リオは手を止める。


「ああ!?なんてぇ!?

ワンモアプリーズ!!!」


「もう…やべでぐれ……

俺が悪がった……」


プチンッ


それを聞いた瞬間

リオの何かが切れた。


リオはスッと立ち上がり

チンピラの髪を鷲掴みにして

無理やり立たせて叫んだ。


「タメグチィィィィ!?そこは敬語だろうが!!

「すいませんでした私が悪かったです

もうやめてください」ダルルォォォォ!?

オオ!?ボケカスコラァ!!殺スゾォォ!?」


するとチンピラは恐怖で涙を流し

震えながらリオに言った。


「す…すびばぜんでじた……

私が悪がったです…もう…やべでぐだざい……」


それに対し

リオが答える。


「嫌です(^○^)」


そう言うとリオはチンピラの顔面を

思いっきり近くの壁に叩きつけた。

何度も何度も叩きつけた。


ゴスッ!!ゴスッ!!ゴスッ!!

ゴスッ!!ゴスッ!!ゴスッ!!


「ンギモチイィッ!!!暴力最高!!!

ウルフの血が騒ぐぅぅぅぅ!!!」


その場にいた街の住人達は

今すぐリオを

止めるべきだと思っていたが

恐ろしさのあまり

誰も止めることができなかった。

しかし一人の勇気ある少女が

リオに近づき、二の腕を掴み

こう叫んだ。


「もういいでしょ!!それ以上やったら

その人死んじゃうよ!!」


止めたのはミアだった。

するとリオはピタっと手を止め

ミアの顔をじーっと見つめ

こう言った。


「……何だお前…?」


「!!」


ミアは戦慄した!

何とこの男、昨日会ったばかりの

自分のことを忘れていたのである!


「ふ~…まぁいいわ…」


ドサッ


リオはチンピラを手から離した。


「誰だか知らんけど後はよろしこ」


そう言いながらリオは去っていった。

リオが去ると住人達は一斉に

ミアに近づいてきた。


「き、君…勇気あるなぁ…」


「よくあんな怪物に近づけたわね…」


「とても勇敢で天晴れじゃ」


住人達が称賛する中

ミアはリオにボコられた

チンピラのもとへ近づき

チンピラをお姫様抱っこする。


「すいません、どなたか病院に

案内してくれませんか?

この人を連れていきたいんです」


「あ、私が案内するわ」


案内役を買ってくれたのは

その場にいた一人の女性だった。


「こっちよ、歩いて5分も掛からないわ」


「ありがとうございます」


ミアは女性についていく。

そして、ついていきながら

こう思っていた。


(リオ・ウルフ……噂通りのヤバい奴だったな…

森の中で会った時は猫被ってたのかな…)


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