第4話 意気投合しちゃった件
んだよこの世界……ふざけてんのか?
なんでこんなやつが勇者なんだよ?!
突っ込みたいのは山々。
だが……!
「めっっっっちゃわかる!!!」
「は?」
思わず声を上げてしまう。だってしょうがねぇじゃん、俺もぐうたらなんだからっ!
「だよなっ。能力があるからって、何でもかんでも押し付けてくんじゃねーって感じだよな!」
「だ……だよねっ!?」
ぽか~んと間抜けな顔をしていた勇者だったが、いきなり我に返ったように食いついてきた。
「なんでやりたくないこと強要されなきゃなんないのって思うよね?! 『使命』とか『正義』とか言うけどさ。別にあいつらのために努力したんじゃないもん!」
「おぉ〜、話分かってんじゃん!」
「そっちこそ!」
なんか、勇者と意気投合しちまった。
「僕はソラ。めちゃくちゃ嫌だけど一応勇者だよ。君は?」
「俺は勇吾。なぁソラ、お前、俺が何に見える?」
「何に見えるって……伝説の剣でしょ」
「やっぱ剣だよなぁ。でも、
「え……君が伝説の剣でしょ」
「いや……実は俺、この世界のヤツじゃねぇんだ。転生したっぽくてさ」
「は?」
目を白黒させるソラ。ま、そりゃそうだよなぁ。
「なんか気づいたら剣になってたんだよ。んで、お前が来たってわけ。状況分かんねぇから説明してくんね?」
「僕のが状況分かんないんだけど……? 説明って、全部?」
「もち」
「……めんどくさいからヤダ」
「だよなーそうなると思った」
「ねぇ、もうどーでもいーし寝ない?」
「あー……そうすっか」
「ここ僕らの家でいーよね?」
「いいんじゃね?」
「やったね。布団と枕持って来てよかった~」
「寝る気満々じゃねぇか。てかどこから出したんだよ?!」
「僕、一日十時間は寝ないとダメなの。だからいつも収納魔道具に携帯してる」
「収納魔道具ぅ! お決まり設定再びかよ!」
「あーもう、おっきい声出さないでよ。おやすみ」
光の速さで布団を準備したソラは、寝転がろうとする。
あー、柔らかい布団羨ましい。入れてとは言わんが、せめてこの寝ずれぇ体制だけでも変えてもらいたい。
この勇者一回寝たら絶対もう起き上がってこねぇやつだ。てことは今がラストチャンス! そう思った俺は、慌てて声をかける。
「待て待て。横にしてくれ」
「えー。めんどくさぁい」
「頼むって」
「しょーがないなぁ。よいしょ」
しぶしぶ起き上がった勇者は、オレの柄を掴む。
そして、グイっと引き抜いた。
すると……。
「わッ?!」
「なんだなんだ?!」
視界が真っ白になるほどのまばゆい光がオレから発せられる。パァァァという効果音付きだ。
光が収まり、うっすらと目を開け――俺とソラはピキンと固まる。
大きなリボンがついたフリフリなワンピース(いわゆるゴスロリという奴だろう)。
髪はピンク色でふわふわなツインテール。
手にはハートのついたスティックを持っており、頭の上にはウサギ耳のカチューシャ。
そんなとてつもないファッションをした、小学生くらいの少女が突如目に入ってきたら、大体の人は俺たちのような反応をするだろう。
「てってれーんっ☆ 勇者ソラは、“伝説の剣ユーゴ”を手に入れましたぁっ!」
わーい、おめでとうございまーすっ☆ パチパチ~☆
ゴスロリうさ耳少女が、ものっすごいアニメ声でものっすごい大げさに褒めたたえる。
ぱぁんと何かがはじける音が響いて、銀テープが辺りをひらひらと舞い、ソラの頭にはらりと乗った。
「……」
「……」
俺とソラは無言で視線を交わす。
俺たちは今、全く同じことを思っているのだろう。
――めんどくさいことに巻き込まれた気がする――。
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