第3話 「お前もかよっ!」ってなった件


「なんか無理やり出かけさせられたけどー、やっぱめんどくさいなぁ。この剣抜いたらそれこそほんとに魔王討伐しなきゃなのか~。めんどー。抜くのやめようかなぁ」


 ……は?


「そもそも別にぃ、魔王が暴れたところで僕、自分の身くらい守れるもーん。最悪世界滅んだところでそれはそれだしぃ、お金にも困ってないし~。魔王討伐するメリットないよねぇ。よぉし、やーめたっ!」


 ……は?!


「でもここから動くのもめんどくさいなぁ~。もうここ家にしちゃお」


 ……はぁぁぁ?!


 勇者(?)はそう言って、ホントに寝る用意をし始めた。


「お休みぃ」


 嘘だろ?! こんな奴が勇者かよ?!

 責任感なさすぎだろ!

 

 冗談だろ、と思って見つめるけど……うん、寝てる。

 ま、マジかよ……。


 ま、いっか。これで俺も動かなくてよくなったわけだし。ラッキーじゃんか。寝よ~。

 俺も、今度こそおやすみ!





 

 ………………………………。





 って、寝れるかぁぁぁぁっ!!!


 魔王が暴れるとか世界滅びるとか言われて! 寝れるわけねぇだろっ!


「おい! 勇者っ! ここまで来たら抜けよ?!」


 つい怒鳴ってしまう。って俺、剣なのにしゃべれんのな……?


「は?」

 

 勇者(?)が起き上がり、間抜けな声を出した。

 

「え? 誰? 僕のほかに誰かいるの?」

「俺だよ!」

「へ?」

「俺だって! 剣!」

「剣~? 剣がしゃべってるの?」

「そうだよ! お前なぁ、勇者だろ! 無責任なこと言ってんじゃねぇよ」

 

 俺がそういうと、勇者(?)は一瞬、怒ったような、悲しいような表情をして――でも、次の瞬間には、無表情に戻っていた。

 

「だって、僕だってなりたくて勇者になったんじゃないし〜」

「そうなのか?」

 

 確かにさっきも『無理やり出かけさせられた』……って、言ってたよな。

 

「そそ。好んでこんなめんどくさい役職つくわけないじゃ〜ん」


 勇者をめんどくさいとか言うな?!

 でもそういえば、こいつずっと『めんどくさい』を連発してた気が……。


「あ〜、めんどくさい。なんで僕ばっかり……何もしたくない。ずっと寝てたい」


 おいおいおい俺と考え方全く一緒じゃねぇか!

 お前もぐうたらなのかよっ!?!


 

 暴れそうな魔王がいるのに勇者はぐうたらって……



 ――世界滅ぶぞ、これ?


 

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