信じる者は救われる

とある王様の物語Ⅳ

 少年は、いつも泣いていました。

 雨空の下でいましめられていた時も、

 雪の日に川に沈められていた時も、

 食事をその場の“ノリ”で汚されていた時も、

 石を投げられ殴られ蹴られ、便所の水を啜らされていた時も、

 彼が大切そうに抱える物や人を嗤われた時も、

 少年はいつも、泣いていました。


 王様は少年を、着実に追い詰めていました。

 彼が受ける苦痛を冷ややかに測り、

 標本でも作るみたいに観察し刺しきました。

 別段ずば抜けて面白いわけではありませんでしたが、

 丁度それ以上の娯楽が無かったので、王様は少年を責め続けました。

 退屈も止め時も感じなかったのは、王様が不満だったからです。

 何故かって?


 少年が、諦めていなかったからです。


 どれだけ沢山の手に蹂躙され、

 足で凌辱され、

 それでも少年は、無言の内に聞いてきます。

 「もうやめよう」「こんなことは辛いだけ」、

 そう言っていることが、

 王様と理解し合えると信じていることが、

 その目を見ただけで分かったからです。

 少年はいつまでも、問い掛ける者でした。

 答えるのではなく、尋ねる側でした。

 王様は、彼を折る方法を探しました。

 彼が祈る方向を探りました。

 そして、彼が見るひとを見つけました。

 その間も、王様が嫌いな彼は変わりません。

 王様と分かち合えない未熟を呪って、

 周囲に触れられない臆病を自虐して、


 少年はいつも、泣いていました。

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