ある地獄
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
不毛の墓碑がつらつら列する、
過ちの記憶の中心で、
そこら一面の針が振れる音。
光と灰が降りしきり、
泥の隙間に染み入り満ちて、
一兵一匹たりとも逃さず、
内から破りて死を与え、
芯に根付いて生を変え、
あっちとこっちを切っては繋げ、
出来上がりしは理想の配偶。
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
耳に馴染んだその引っ掻きは、
音ですらなく景色の一辺。
あの青い光が瞬いて以来、
モノクロオムが覆い被さり、
一切合切が沈黙し、
鳴り響くノイズは、
躍動を意味せず。
それは網膜が劣化した故か、
或いはこの地の色が褪せたか。
答えを聞くことはもうできない。
正解を考えるに足る平衡もない。
これらを為した誰かさん方は、
空の上から見て知らぬ振り。
落とした雷に責任も取らず、
だから分かっていないのだ。
だから発見できぬのだ。
そこで何が起こっているのか。
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
「コッペリア……おお、コッペリア………」
白髪白髭の老齢老躯。
記されし波形を前にして、
左右の
泡と一緒にブクブクと、
口の端から喜色を垂らす。
「美しいよ、コッペリア……。素晴らしいよ、私のコッペリア……」
壁のように積まれているのは、
乱痴気騒ぎの跡地であっても、
吹き込まれた声を忘れぬ媒体。
酔いも夜闇も炎も波も、
それらを奪えず尽き果てた。
「コッペリア……、次は何を聞かせてくれるんだい?」
呆然と、
泰然と、
悄然と、
陶然と、
そのちっぽけな皺枯れは待つ。
「コッペリア、嗚呼、コッペリア——」
——今度はどんな
——4分33秒かな?
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
ガー!ガー!ガガッガッガッガ、ガーガガー!ガリガリガリ!
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