"慈善屋"の革命少女
第1話
ごうごうと雪が窓に吹きつけてくる。
ぴゅうと壁からの隙間風が僕の顔を撫でる。あまりにもの寒さに僕はコートの中にぎゅっと縮こまった。
前にも述べたかもしれないが、
目の前でチロチロと火を吹いている石油ストーブを見つめる。冬の
「
出た目はまた1。
駒をひとつ進めると、僕はふてくされたように椅子に深々と座りなおした。
「ほんま
哀れな目つきですでにゴールまであがっている
今、退屈を持て余した僕は
「これで、吾輩もゴールであるな。」
あっさりと6を出した
体育祭が終わってからしばらくたって、世紀の番狂わせに熱狂していた生徒たちもずいぶんと落ち着いている。
体育祭で見事に優勝した
「いやー、それにしても《いずみ》殿は残念でしたな、まさかずっとあんなしょぼい出目しか出ないとは吾輩、感服しましたぞ!」
雑な煽りをしてくる
変わったところといえば、妙にボディタッチが増えたことぐらいか。うがぁ、と飛びついてきた
別に
いつも
それに、まだ僕は化学室で寝泊まりしている。機会を逃したというか、なんだか今図書室に戻ることはできない気がしたのだ。
まだ
「
そんなふうに深く自分の考えに没頭していた僕の口に、
口の中に広がるきなこの風味と砂糖の甘み、そしてなによりもすさまじい熱に僕が目を白黒させていると、目の前の
どうやら石油ストーブの上で焼いていた餅がうまくできあがったらしい。
「しぃ~しぃ~お~う!」
僕が低い声で名前を呼ぶと、何が面白いのか
賑やかだった
灰色に染まった空を見つめながら、僕は口の中に残っていた餅をよく噛んで飲みこんだ。
「
もこもこの半纏を羽織った
「ああ、いや。
そう、
ストーブの傍で手をさすっていたはずの
「なんや、
「あ、うん。将来的には、ね……。」
「……それはえろう寂しいなぁ、いつまでもここにおってほしいわ。」
「あ、あはははは……。考えとくよ。」
僕の苦し紛れの言葉に
変わったといえば
また
「あ、そういえばまだ
「そうなん? やったらうちもついてくわ。今日は薄暗いからいろいろと危ないやろ。」
距離をとりたい一心での僕の言葉と裏腹に、
机の上にしばし二人で化学室を後にする旨の書置きを
扉を開けた瞬間、室内とは比べ物にならないほどの寒風が吹き荒れる。外の廊下の窓はどれも割られているので、外からの風を遮るものがなにもないのだ。
降りしきる雪は校舎の中にも入りこんでいて、廊下はうっすらと白く積もっていた。
あまりにもの寒さに体が震える。今年は特に厳冬らしく、特に
廊下を進むにつれて、僕はなにかがおかしいことに気がついた。ボロボロの布切れにくるまった生徒たちがえんえんとなにをするでもなく廊下の片隅でうずくまっているのだ。
何の気なしに近くの窓が割れた廃教室の中を覗きこんでみる。そこに広がっている光景をみて、僕は目を見張った。
何人もの生徒が、暖房器具のない寒風吹きさすぶ廃教室でなけなしの毛布にくるまって震えているのだ。
おかしい、こんな光景は僕は今まで見たことはなかった。
恐らくは、石油代を払うことができずに石油ストーブのある教室から追い出された生徒たちなのだろう。冬の
だから、僕が驚いたのはその存在ではなく、数だった。
普段ならこれほどまでに追い詰められた生徒など数人いるかいないかだった。だから、僕がどこかの廃教室に密かに石油ストーブを持ちこんで提供すればよかった。
だが、今年の人数ではそんなことをするわけにはいかない。いくらなんでも僕はそんな大金を用意できない。
いったいこれは何が起こっているのか。
「ねぇ、君。お金は使い切ってしまったの?」
僕は傍で横になっている一人の男子生徒に声をかけた。しばし胡乱げに僕を見上げていたその生徒は、しばらくしてその重い口を開く。
「あの体育祭の賭博だよ、それですべてが狂っちまったんだ。」
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