第31話
「むっ!?」
いきなり飛びついてきた
グズグズと
「い、
勝ったはずなのに大粒の涙をこぼしている
「そうだね、おめでとう。」
番狂わせに怒号と悲鳴が飛び交う運動場で、
体育祭の喧騒からすこし離れた脇の階段、その日陰からじっと運動場を見つめる人影がひとつあった。
いつもの余裕たっぷりな笑みは剥がれ落ちて、どこか虚ろな表情だ。視界のなかで抱きあって勝利を喜んでいる
嫉妬、羨望、激情、悲哀……。
そんな普段通りではない
「いかんでええの、
ニコニコと、人好きのしそうな笑みを浮かべた
「……なんのようかしら、
声色であらわになる嫌悪感を隠そうともせずに
しかし、
相変わらずニコニコと口の端を持ちあげながら、
「ああ、そうやったな。今の
「……誰のせいだと思っているのかしら。」
「そんなん決まっとる、
ピシリと、空間にひびが入ったような音を幻聴する。人ひとりぐらいなら簡単に殺せそうなほど剣呑な雰囲気がたちこめる
初めて
「なにか間違っとるか? どちらにしろ、
あんたみたいな生まれつきの悪の権化が、
暗にそう告げる
「……それで、言いたかったことはそれだけかしら?」
「いや、そんなわけないやんか。実は
「ふぅん……。あいにくとわたしも忙しいの、手短にお願いできるかしら?」
「知っとる通り、うちは
「弱点も何も、
そして、そのために必要なのは明確な弱みである。
家族、地位、財産、人望……。なんでもいいから
「だから、うちはずっと頭を抱えとった。
「あら、それはよかったわ。わたしだって幸せでいたいもの。」
「いや、残念やけど見つけてしもたわ。体育祭の間はあからさまやったからな。」
――――――
勝ち誇ったかのように
「今回の体育祭でも、この前の
「
「っ!」
とたん、
「ああ、ああ、やっぱりそうやった! せやったんや!」
歓喜に満ちた様子で
「うちは、宣言するわ!
「楽しみやなぁ、
「っ、
冷静さを取り戻した
焦った
「ああ、うちもう行かなあかんわ。
ふと我に返ったかのように
そのまま階段を去っていく
「ええか、うちはなにがなんでも
どうして自分はあんなにも動揺してしまったのだろう。なぜ
その理由を、
だからこそ、怖い。
そして、体育祭でその恐怖は現実化し始めている。
「ああ、これでは
自嘲する。しかたがないではないか。これほどまでに人を好きになったことはなかったのだから。
うつむく。これほどまでに恐ろしくなったのはいつぶりだろうか。
そんな視界に、手のひらが差し出された。
「さ、
目の前で、底抜けに優しい
その手を握りながら
――ああ、いつまでわたしは
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