第21話
「ふ~ん、ふ~ん。」
「
「ん? 悪人に騙されとった友人がようやく目が覚めたんやで、嬉しくなってもなんも問題ないやろ?」
「ほんとうに
今、僕たちは
「うん? そりゃそうやで。あたりまえやんか。」
「よく考えてみ?
心底見下しているように
自分の考える悪人に対してはとことん厳しい
コンコン。
控えめに化学室の扉が叩かれる。僕は教卓の上にかかっている時計に目をやった。
もうかなり夜が更けている。こんな時間にやってくるなんていったい誰なんだろう。すわ何者かの襲撃かとも警戒しながら、扉を開けたその先にいたのは。
「
どこか無理のある笑みを浮かべた
目の前に置かれた真っ黒なコーヒーを
「元気にしてた?」
「まぁ、そうであるな。体育祭にむけた練習で忙しくて若干ばてておるが、それでも不調ではないな。」
言葉とは裏腹に
ちょうど
そして、それはくしくも僕の考えと一致している。
「それでだな、
「もう、吾輩のことは放っておいてほしいのだ。」
それは、どこか僕が予期していた言葉であった。僕は慎重に言葉を選ぶ。
「それでも、僕は
しかし、僕の思いは
「いや、吾輩にはもうドーピングしか手段がないのだ! 体育祭で勝つためには、それぐらいしなければ
落ちくぼんだ目でしきりに
「ドーピングしてもまったく
強迫観念に突き動かされたように勝利とドーピングに固執する
僕はできる限り
「うんうん、わかったよ。それで、ドーピングの薬はどれぐらい使うよう
「
浴びるほどに大量の薬を
あの日、僕たちが覗いていた空き教室の中で
どちらのほうが効果があるかは、言わずとも理解できるだろう。なにごとも過ぎれば毒に転ずるのは節理なのだから。
これで確定である、
「そういえば、
「? いや、そういえば聞いたこともないな。しかし、それがどうかしたのか?」
「
一瞬、僕は躊躇した。どうみても不安定な精神状態である
だが、
「うん、知ってる。
「…………
僕の言葉を全く信じていない様子で
「
そんな
「逆に聞くけど、
「それが賭けというものだろう? おおかた
未だ意固地な
「これを見たらわかるよ。」
ガタリと、
「これは偽造写真だ。そうだ、それに違いない……。」
「この
現実逃避めいた
「そんな、そんなはずが……。」
「そもそも、薬をとればとるだけいいなんて言われていることがおかしいよね。」
僕の追い打ちともいえる言葉に
「
「あ…、あ…。」
その哀れな姿に僕はなんといえばいいのかわからなかった。
「まあ、
意気消沈した
全身がブルブルと恐怖に震えている。
まるで神話の怪物でも目にしてしまったかのように、
「どうして……。」
「ん? なんや、聞こえんかったわ。もう一度言ってくれへんか?」
「どうして、吾輩が、中学でドーピングをしていたことを知っているのだ……?」
「ま、ちょいちょいと調べもんしてな。」
とたん、
「ぃ、
肯定の意をこめて僕が首を縦に振ると、
歪む、
「あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああ!」
気が狂ったように叫び出した
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