第19話
「どういうこと?」
「
「え? う~ん……。」
どうやら
聞いていた時はまったく疑うことのなかった言葉のひとつひとつを詳しく吟味していく。そうしているうちに僕はおかしな発言に気がついた。
「もしかしてだけどさ、
「そうや、
その言葉自体は問題ない。でも、
普通の
そんな高校の生徒である点において
「やったら、誰からその暴力禁止の条件を聞いたんやろか。もう決まっとるも同然やけど。」
数回とはいえ直接会ったことのなる僕の経験から言わせてもらうならば、
「最も可能性のあるんは
「ついさっき考えさせてほしいいうて抜け出していったのは
僕はさっと顔から血の気がひいていくのを感じた。それではもう手遅れだ、なぜって僕たちが
僕が冷や汗をかいていることに気がついたのか、
「なに勝手に焦っとるねん。これは絶好の機会やろが。」
「絶好の機会?」
「思わず口滑らしてまうようなぬるい
ようやく目の前から近づく
退屈そうに
二人にしか伝わらない符号が交差する。そのまま二人は振り返ることもなく遠ざかっていった。
あらかじめ示し合わせておいた空き教室に集まった二人はカーテンを閉じ、扉の窓を黒いテープで覆うと、中央で密談を開始した。
「それでいったいなんの用ですか? 不用意な接触は控えるようにと言い含めておいたはずですが。」
「
「そうですか、
」
「そもそも相手は"銀行屋"の一員ですよ? この高校の生徒の経歴なんてすぐに丸裸にできるはずだ、どうせ自分と君が過去にドーピングを一緒になってやっていたことでも気がついたのでしょう。」
「でも、もしもあんたとあたしとの関係が知られたとしたら………!」
「いいえ、
「そうですね、もしも自分の弱みを明かせとでも脅されたのならなにか適当なことでも言ってさしあげなさい。君が心配する必要は全くありません、
「っ……!」
「なにも悩むことはありません。自分が必ず君を優勝へと導いてあげます。」
「せっかくなので、今週分の薬を渡しておきましょうか。いいですか、必ずこの紙に書いてある通りの使用量を守るのですよ。」
「ひさしぶりだから………。」
どこかもじもじとする
「しかたないですね。すこしだけですよ。」
二人の体がひとつになっていく。唇を重ねあうその姿はまさに秘密の恋人の密会と形容するのがふさわしいようなものだった。
まあ、僕たちが一部始終をバッチシ見てたんだけれど。
なにやらいたたまれない気持ちになりながら、僕は壁に開けた覗き穴から目を逸らす。隣から覗きこんでいた
今、僕たちは
二人が話をする前に素早く、そして静かにその間の壁にキリで穴を開けたのである。木造のおんぼろ校舎だからこそできた力技だった。
「結局、
しばらく歩いて声が届かないようになってから僕は
先ほど、
「まあ、順当に考えれば
「なんで?」
「普通に考えて
「じゃあ
「なんらかの細工が施されとってもおかしくないな。敵に塩贈るほど
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