第16話
深夜の図書室、普段なら
そんな図書室の扉が、突然開いた。入口からさしこむ眩い光ががらんとした教室をスウッと照らす。長い陰と短い影がふたつ隣りあって明るくなった床にのびた。
懐中電灯片手にずんずんと目当ての本棚へとむかっていく
「ええと、確かアレは大判本の棚に置かれとったな。すると、ひぃ、ふぅ、みぃ………、ここか。」
「あった、これや!
バラバラと厚紙が机一面に広がる。お宝を目の前にした海賊のように目を輝かせた
パシャリ、パシャリ……。
「
ひっきりなしにあたりを見渡す僕とは対照的に落ち着き払った様子の
そしてさらに、それにもかかわらず僕は最悪の手段で
早い話、僕は
もちろんそれは嘘なのだが、いくらなんでも
どこか不気味な笑顔を浮かべた
おそらくこのことがバレた暁には僕は殺されるだろう、そう絶望して光を失った目で僕は
「見ぃ、
「
知的な印象のあった
「どうしたんや、
「ここ、
首を傾げて
なにかあるのに違いない、そう僕の第六感が訴えかけてくる。そうでなくても冷静に考えてかつて
「確かにそれならその
が、すぐに柔和な笑顔を取り戻した
「
どうやら蛇塚は完ぺきな生徒を演じていたらしく、資料には少しもドーピングという悪事の片鱗は記録されていない。唯一、ドーピングの禁止薬物が混入した薬害事件に巻きこまれたと書かれているだけで、それ以外は平凡というべきか将来を嘱望されたアスリートとしての人生を歩んでいたそうだ。
「たいしたことは書いとらんな。まあ、
「そうだね、そろそろ
そして、紙の山もだいぶ減ってきたところで僕は見慣れた名前の記された資料をたまたま手に取った。
興味がひかれるのを我慢して僕はその資料を金属の輪に通した。あまり人の秘密をじろじろと見るべきではないだろう。
だが、その考えを僕はすぐさま捨てた。信じられない言葉がその上で踊っていることに気がついてしまったからだ。
もはや考えることすらできなかった。金属の輪から乱暴に
驚いてこちらを見つめる
「
続く文を見る前に息と覚悟を整える。
そう、僕はもっと深く考えるべきだったのだ。
では、あの明るく真面目で努力家な
僕は震える声で続きを読みあげる。そこには、簡潔に
「県大会にて抜き打ちのドーピング検査に陽性を示し、常習的な薬物の使用が明らかになる。以降、陸上の資格を完全に抹消された。」
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