第15話
図書室の机に日がな一日ずっと座っては本から目を離そうとしない。まるで僕に話しかけられるのを拒否しているかのように
「あのさ、
「
話しかけてもけんもほろろにあしらわれるばかりである。
他力本願と非難されてもぐうの音も出ないのだが、僕は
しかし、今やその助けはもはや期待できそうになかった。
さらに、今最も僕の頭を悩ませているのが
話すらできないのでは、説得も何もあったものではない。正直言って、僕は行き詰っていた。
だからこそだろうか、
化学室の前で、僕は自分の手が震えていることに気がつく。
僕は今黄泉の国への扉を開けようとしているのかもしれない。
ギュッと目を瞑る。僕は覚悟を決めて地獄の門を開けた。
「遅かったなぁ、
冷たく獰猛な声が僕の鼓膜を震わす。黒い実験台がずらりと並んでいる化学室の奥、そこに悪魔のような真紅の瞳を輝かせた
突然の僕の訪問にかかわらず、一切驚いた様子を見せない
「……僕がくるって予想していたの?」
「まぁ、
背筋をすらりとのばした
僕は
「お願いがあるんだ、
「ほぉん、
相変わらず悪事に手を染めてしまった生徒には手厳しい評価を下す
「でも、そのかわりに
「
「ふぅん……。」
「せやな、それなら例の書類、見るん手伝ってもらおうか。」
「例の書類?」
「
戸惑う僕に近づいた
「……それをいったい何に使うつもりなのかな?」
声が固くならないよう細心の注意をはらって
が、流石にあの画集までは考えていなかった。そもそも
内心の動揺を押し殺している僕の横にたった
「ああ、あの画集はまだ図書室におったころに気がついてな、いろいろと調べたいことがあったんやけど、その前に
「で、ええやろ?
まるで獲物を解体するかのような冷徹な無表情でこちらを凝視してくる
あの画集は個人情報の保護などいっさい存在しない、最悪の書類だ。それを目の前の苛烈な倫理観を持つ
だが、そうでもしなければ
「で、どうなん?」
答えを促してくる
「いいよ、それで。」
「よっしゃ、じゃ決まりや。画集を見せてくれる代わりにうちは絶対に
「それで、どうやって
「そんなん簡単や。その
「は?」
僕は
「いや、でもそれはやり過ぎじゃ……。」
「なにを言っとるんや、
そうだ、そういえば
「それにしても、どうやって
「だから画集を見る必要があるんやないか。」
僕との約束を反故にされないためにも、
「僕は何をすればいいんだ。」
「図書室に引きこもっとる
「決行はあんた次第や。別にうちはいつまで待ってもええけど、そのぶん体育祭が近づいてまうからよう考えや。」
僕は腹をくくった。
「いや、明後日にやろう。早ければ早いほどいい。」
コーヒーの真っ黒な水面に、
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