第10話
「
太陽が完全に地平線から離れ
さしもの数奇院といえども疲労で完全に顔が死んだ僕の手札をイカサマなしで見透かすことは難しかったらしく、あれから数十回ほどババ抜きをしたのち、ようやくミスをしたのだ。
しかし、
つい先ほどまで
「あれだけお話したのに、まだわからないのかしら?」
話を無視し続けたせいでへそを曲げてしまった
「はぁ……。」
しばらくの間僕がだんまりを決めこんでいると、
びくびくとその様子を見ていると、どこか意固地になったかのようにキッと僕を睨みつけてきた
「
「行くってどこに?」
「あら、あなたはどうして図書室を出ようとしたのかしら?
顎に手をあててしばらく
「もしかして、
期待に満ち溢れたその声に、
「だって、そうしないとわたしにかまってくれないでしょう?」
「な、なにをしているの、
「いや、
結局僕は二度目の足の鈍痛にまたも悶え苦しむ羽目になったのだった。
「
苦笑しながら僕は
とはいっても簡単な話で、実は僕が廃教室で食料を配っている中に
警戒されないよう、待ち合わせ場所は相手にとって親しみのあるであろう運動場の脇の用具庫の中と指定してある。そこで僕は
日中でもうす暗い木陰にある用具庫の錆びついた扉を無理やり開ける。相手はすでに中で待っているらしかった。
派手に紫色に染めた短髪にまるでナナフシのように節くれだった手足。蛇というよりかは昆虫といった印象を与える神経質そうな女子生徒がひとり用具庫の奥の壁に背中をもたれかけて僕を待っている。
その女子生徒、
「
「ああ。」
どこか緊張した様子の
「最初に確認しときたいんだが、アタシに"銀行屋"が接触してきたのは今回の体育祭での八百長とかの話かい? だったら悪いけどアタシは絶対にお断りだからな。」
緊張したように
「いやいや、そんな話じゃなくて。実は聞きたいことがあって声をかけさせてもらったんだ。」
「聞きたいこと?」
未だ警戒心を解く気配のない
「はぁ、それで?」
僕の言いたいことがまだ理解できないと言わんばかりに
「僕はただその人のことが心配で仕方がないんだ。ドーピングは必ず体に負担をかけるし、はっきり言って僕はやめてほしい。それでその、言いにくいことだけど…。」
「経験者のアタシに話を聞きに来たってことかい?」
「はぁん、アンタのいいたいことはだいたい分かった。それでだ、本当に話はそれだけなんだろうな?」
「ああ、
「…そうかい。」
絶対に僕の言葉を信じていないような声色で
「それで、ドーピングについて知りたいって話だったな?」
「うん。」
「ま、ドーピングはいけないことだ、なんてこと言わないのは気に入ったよ。アタシは自分にできることはなんでもやるってのがモットーだからな、そういう連中のことは理解できねえんだ。」
だが、まあダチの体が心配だってんならわからなくもない。そうつぶやいた
「まあ、まずは基礎知識の確認だ。去年男女混合の徒競走で一位だったヤツは除いてこの高校の体育祭に出るヤツはほとんどがドーピングしてるってことは知ってんな?」
初めて聞いた話に、一瞬僕の思考が止まる。その様子を見て
「おいおい、知らなかったのかよ。さてはおめえ、体育祭で賭けたことねえクチだな?」
僕は頷くほかない。
「アタシも支援者から聞いた話なんだけどさ、体育祭のドーピングのレベルってのは毎年桁違いに上がってんだよ。去年とは比べもんにならないほどクスリの使い方が上手くなっていってるってこった。」
「つまりだ、ドーピングをやめたとしてそのダチとやらに勝算はもうねえ。もしもあんたがドーピングをやめさせてえなら、まず体育祭の出場を諦めさせるこったな。」
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