第27話
パチリ。目を覚ます。どうやら僕は眠っていたようだ。なにやら懐かしい夢を見ていた気がする。
見慣れた図書室のボロっちい天井をぼんやりと見つめていると、全身の節々が痛むことに気がついた。痛い、尋常じゃないぐらい痛い。
………というか、なんだか全身が消毒液くさい。首をすこし動かしてみると、体中にびっしりと湿布が張り付けられているようだった。
鈍く走る痛みをこらえながら体を起こすと、すぐ側の椅子に腰かけていた
「あ、
いつまでも固まって動こうとしない
「残念なのだけれどもう朝ではないの、昼よ。」
動揺を取り繕うかのようにすこしぎこちない笑みを浮かべた
「あ、アブリル、ありがとう。………………アブリル!?」
まるで当然とばかりに
「
どうやら
「もしかして、
「ええ、その通り。」
ふと思い当たることを口走ると、
「………教えてくれてもよかったのに。」
「
ジト目で
なにはともあれ、よかった。
僕はほっと胸をなでおろした。なんだかんだ言って僕は
………しかし、もしそうならどうして今になって僕に明かしたのだろうか。
「
「なにかしら?」
ソファに横たわったまま、
「もしかして、もう
「ご明察、その通り。もう
どうやら僕は決着の瞬間の間ずっと気絶していたらしい。残念というべきか、もったいないというべきか。僕がアタフタしている間に
しかし、それにしても
「これは単なる確認なんだけれど、
軽い気持ちの僕の言葉に
「……もし、誰かがわたしに明確な害意をもって攻撃してきたのなら、必要に駆られて全力で抵抗するのは当然でしょう? その結果がいかなるものであれ。」
「でも、
僕と
これまで
しばらくして僕に振り返った
「しかたがないじゃない、あなたをあれだけ痛めつけたのは
感情がむき出しになった
「……
問いかけるも、
「
その視線を追うと、高校のある谷間を流れる急流の川が目に入る。まさか。
「あと数日もしたら、下流で溺死体が見つかるかもしれないわね。」
「ッ!」
居ても立ってもいられなくなった僕は、痛みの走る体を引きずりながら図書室を出ようと扉に向かう。そんな僕の前に、無言で
「
ボソリと、呟く。僕のことを冷たく淀んだ瞳で見つめる
「あなたは文字通り
それは違うと言い返そうとするも、続く
「そもそも、
僕は目を見開く。僕が
「初めは、あなたらしいことだと思って黙認していたわ。差しさわりもなかったもの。でも、まさかどこまで
あの日の夜のことを持ち出されて、僕はなにも言い返すことができなかった。確かにあの無断外出はあまりにも脳みそがお花畑だったとしか言いようがない。結局のところは
「で、でも! あの時はもしかしたら
ドガァン!
「そこが一番の問題なのよ。どうしてあなたは他人のことのためにそれほどやすやすと自分を危険にさらせるの? わたしが言うべきことではないのかもしれないけれど、あなたはおかしいわ、自己評価が狂っている。」
理解ができない、結果はともあれ人助けそのものは悪いことではないはずだ。どうして
僕が黙りこんでいると、
「ええ、もういいわ。私の言葉は届かないというわけね。もういいわ、どこへなりと行きなさい。」
なにがなんだかわからないまま、ぐちゃぐちゃの心で僕は図書室を後にした。
「っ、はぁ。」
「
眉をひそめて暗に
「ええ、いいの。どうせ見つけられずに帰ってくるわ。私ですら
そんなこと、ほんとうに突き落とした人間ぐらいにしかわからないでしょうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます