第25話
闇夜の校舎に鈍い打撃音が広がる。一階の応接室、その目の前の廊下で異様な光景が繰り広げられていた。
十数人の生徒が、円を描くようにしてぐるりと廊下の一角を取り囲んでいる。その円の中心では目を覆いたくなるようなリンチが続けられていた。
「ガッ、グッ、ゴッ!」
およそ人の出すものとは思えぬ呻き声が
なんとか顔面に降り注ぐ固い金属の塊を防いでいる
そんな凄惨な現場から少し離れたところで、ニコニコとした笑顔を崩さない
そんな人間の善性が麻痺してしまったかのような悪逆の業から、かつて
ある者はそのあまりにもの凄惨さに吐き気を催し、目を背けている。またある者はその埒外の残虐さに一種の憧憬の念を抱くように頬を赤く染めている。牧師や仏僧が目にしたら卒倒しそうな倫理の欠落した作業は、最終的に
「ごめんなさいね、痛いわよね? でも、一週間ほど前に
虚ろな目で天井を眺める
「イガァッ! ひっ、わ、わかった! 俺が悪かった、その、あの…………。」
「あら、もしかして忘れてしまったの? 反省が足りていないのかしら?」
「ヒッ、ち、違う! やめてくれ、やめてくれぇっ!」
再び無言で
「
「あ、ああ! 思い出した、あの
「
「あ、い、いや、許して……。ガアァァァァァ!」
「い、
いろいろな体液をまき散らしながら
「もう、二度と
ぶんぶんと首を千切れんばかりに振る
「これは、わたしとの取引を裏切った分よ。これでおあいこ様ということかしら。」
ほんとうはもっとキチンと償ってほしかったのだけれど、
「
ウキウキとした
「あ、
しかし、それはあまりにも遅きに徹した。
「アレは、なに?」
途端、時が止まる。
ゴッソリと感情が抜け落ちた
しんしんと静かにふける夜に、冷たい風が通り過ぎる。青白い顔をしながら
顔つきの
「ああ、残念だわ。
うすら寒い沈黙の中で、
「いいことを思いついたわ。」
言葉面とは裏腹に心底冷たい声で
「
激怒した主に逆らうとどうなるのか手に取るように想像できる
いったい
「さて。」
にこりともせずに
「
それが指し示すことはつまり――――――。
しかし、誰も動こうとしない。それも当然である、いい上司だったとは口が裂けても言えないものの誰が好き好んでかつての仲間であった
「
「ほんとうは優しい人だったのね、勘違いしていたわ。」
――――――でも、そんなに優しくてわたしの役に立ってくれるのかしら?
「それでいいの?」
「お、おい、
怯えきった震え声に努めて耳を閉ざしながら、
つんざくような絶叫が放たれる。
もはや地獄さながらの激痛から逃れようともがく
その姿を見て、数人の決意した生徒が前に歩み出て凶器を手にした。
「ひっ、やめて、やめてください、ほんとうに、一生のお願いだからぁ……。」
「アアアアアアァァァァァァァッ!」
その凄惨な光景に眉ひとつ動かさない
「それで、あなたたちはどうするの? ただそこでじっと見つめているだけ?」
その言葉が合図にして、堰を切ったように"転売屋"の面々が殺到する。怯えきった表情を恐怖に歪めながら押しあいへしあいして拷問器具を奪いあうその光景は控えめにいってこの世のものではなかった。
心のうちから湧きあがる様々な感情に顔をぐちゃぐちゃにしながら、奇声をあげて
狂気の宴はいつまでともなく続けられた。
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