第23話
鈍い音が応接室に響く。
この応接室に連れてこられてからいったいどれほどの間
頭蓋骨の中に響く鈍痛が絶え間ない責め苦を与え続ける。喧嘩など
頭から冷水を浴びせかけられる。口まで覆うほどの水の勢いに僕は溺れ死にそうだった。
「おい、
ぐったりとうなだれる僕の顔を覗きこみながら
なんでもいいから、こんなことやめてほしい。
そうだ、"銀行屋"がなんだ、今味わっている苦悶から逃れることと比べたらいったいいかほどのものだというのだ。
「あ………。」
「ん、もしかして教えてくれんのか? 聞こえねえからもうすこし大きな声で言ってくれよ。」
とうとう僕が口を割ると思ったのか、
「鍵は、校舎の……。」
「校舎のどこに隠したんだ?」
まさに具体的な隠し場所を口にしようとしたその瞬間、脳裏になぜか
「っ!」
思いっきり舌を歯で噛む。口の中に血の鉄くさい味が広がるのをこらえながら、僕は自らを思いっきり罵倒した。
今、自分は何をしようとした?
確かに
唾液を垂れ流しながら、無理やり唇を持ち上げる。
「おい、校舎のどこに隠したんだよ?」
「言うわけないだろーが、バーカ。」
近づいてきた
よかった、今度こそ正解を選ぶことができた。そう安心する僕に清流寺が見舞ったのは、案の定言葉ではなく顔面への情け容赦ない拳だった。
つい先ほどまでの折檻とはわけが違う、
「てめぇ、こっちが下手に出てらぁ調子に乗ってんじゃねえよ!」
激昂して顔を真っ赤に染め上げた
「このっ! くそ野郎が! 俺を! 馬鹿にすんじゃねえ!」
「
「ああ!? 俺に意見すんのかよ、お前!」
見かねたのか間に割って入ろうとした子分が
「いろいろと細かく指図しやがって! なにが
台風のように荒れ狂う
どうやらその人物は
一通り応接室を破壊した
僕の前に立ち尽くす
「そもそもなんで
ドカッ、バキッ。
まるで漫画のような音をたてながら、鬱憤を晴らすように
「ああっ、くそイライラしやがる! もういい、お前はここでもう二度と歩けないぐれぇ凹してやんよ!」
激昂している
コンコン。
「…………あ? なんの用だ?」
応接室の殺伐とした雰囲気に似つかわしくない軽い音で扉が叩かれる。せっかくの八つ当たりに水をさされて苛立つ
「先生、近づいてる。
扉の先からは聞きなれた
「はぁ? あいつはなにやってんだよ。」
どうやらこの事態は本来あり得ないことだったらしい。口汚く自らの支援者を罵りながら
永遠にも思われた地獄のリンチが小休止し、僕はひと時の平穏に歓喜した。とはいうものの、今まで振るわれた情け容赦ない暴行に僕はなにも考えられなくなっていたのだが。
「とにかく、外、来る。至急、重大。」
「わあったよ、
ガチャリと、扉が音をたてて開けられる。
部屋の外の廊下は、月明りがさしこんでいて明るいようだ。今まで応接室は真っ暗闇だったので、しんしんと降り注ぐ月光に僕は目をショボショボさせた。
ああ、駄目だ。久しぶりの光に安心してしまうと、ピンと張りつめた緊張がきれてしまう。そう気がついた頃には手遅れで、僕の意識はとろけていく。
最後に残された理性が、逆光の中に人影を捉える。
小柄で、それでいて闇夜の中でもひと際輝く銀の髪。キラキラと冷たく輝く黄金の瞳を目にしたような気がする。
「あら、こんばんは。今日はいい月夜ね、
あれは、
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