第17話
「お前、
明らかに染めたものであろう、安っぽい金髪の男が怯えた様子で
いつも通り微笑んでいるだけの
もちろん、その原因はすべて
僕が手に持つ透明な液体の入った500mlビーカー。特段おかしなところはないように見えるこの容器の中身は水酸化ナトリウム水溶液である。
しばらく
確かに
そう反論したのだけれど、
自己防衛と称して人体にじゅうぶん有害な薬品を持ち歩いている僕はこれで晴れて我が母校、
はこぼさないよう細心の注意を払ってビーカーを水平に保っている僕は、中でさざ波をたてる液体を見つめながら使う時が来ないよう神仏に祈った。
「ええ、お初にお目にかかるのかしら、私の名前は
「御託はいい、”銀行屋”の妖怪がいったい俺になんの用だ。」
もったいぶってスカートの端をつまんだ
「
「………あ? 冗談は寝て言えや、アホかお前。」
まるで勝利を確信したかのように
「とうとう現実も見えなくなったか? 用心棒が裏切って例の金庫の秘密を漏らしたところでお前は用済みだ、詰んでんだよ。だいたい
よりにもよって
「あら、
だからこそ、
「……あ? どういうことだ?」
「あなたが最後に"転売屋"として帳簿に触れたのはいったいいつだったかしら?」
今度こそ確信を突かれた
どうせブラフだ、気にすることはない。それに帳簿への記入は実際に商品の販売をしている旧応接室前の廊下でしている、知ろうと思えば知れないこともない。
そうだ、それがどうした。冷静になった
「だからなんなんだよ、あれはべつに仕事を引き継いで裏方に回っただけだ。一日中帳簿睨んでるお前にはわからねえかもしれねえが、出世なんだよ。」
不敵な態度を崩さずに済んだ
「へえ、そうなの。わたしはてっきり左遷なのだと思っていたわ。差し出がましかったようね、ごめんなさい。」
「ああ、だからとっとと俺の視界から失せろ。」
「繰り返しになるけれど、ごめんなさいね。
なんの変哲もない茶色の封筒が
そんなはずはない。
一瞬、
「ニセの手紙になんぞ騙されんぞ。お前がモノホンを手に入れられるはずがねぇ。」
「
その問いかけに
自分が"郵便屋"に呼び出されたから来た、そのことに何の意味が?
その時、
「お前、まさか"郵便屋"とグルなのか……?」
静かに黙ったまま
たしかにあの"郵便屋"そのものが
「そう、その手紙の中で
「
「……ああ、認めるよ。俺は確かに
「あら?」
「だが、だからといって俺がお前に寝返るなんて思うなよ。」
結局、なにも変わっていないのだ。
「俺は
「あら、それじゃあアレは諦めるのかしら?」
どこか諦念を浮かべる
「まあ、どうせバイクのことも知ってるよな。」
金属質の機械が表紙に載った雑誌がずらりと並んでいる。それを
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