第16話
「それにしても、
「
「隠していて悪かったのである。しかし、ここはあの
無機質な言葉を口から流しだす
「そもそも
「残念なことに
「前々から話していた
昨日僕に語った通り、
本来ならば"転売屋"の中でも重鎮である
「前にも言ったが、流石に"郵便屋"の立場を私物化していることを公にするとこれからの活動に差支えがある。急に今日と言われたとて……。」
「もちろん、お礼は弾むわ。」
あまりにも急な仕事にしぶる
「これは……。」
小さな紙きれを掴んだまま目線を外せないでいる
「アレを買うお金が欲しいんでしょう? 迷っている時間が果たしてあるのかしら?」
僕には理解できない言葉に、しかし
「……わかった、
「ええ、それで構わないわ。
ちっとも悪びれていなさそうな口調で
「ああ、そうそう。
ついで旧音楽室を後にしようとした僕を
「もっと早くに言っておけばよかったのだけれど。」
爬虫類のような黄金の瞳が幸福の絶頂に歪んでいる。その唇は三日月もかくやとばかりに弧を描いていた。
「
――――――――あの日の約束だけは破っちゃ駄目よ?
日がとっくりと暮れたその日の晩。暗い校舎の廊下を歩く一人の男の姿があった。周囲に鋭い目つきを飛ばしながら闊歩するその姿からは、つい先ほどまで
細身ながらも暴力の匂いを隠しきれない
「
ここ数日の
あの"銀行屋"の
「まだ勝敗もついてねぇってのにあの馬鹿はよぉ。」
走り屋をやっていた頃はこんなもんじゃなかった。敵対する団体には意識が続く限り殴りこみをかけ続ける。自分がボスなら
「まぁ、あの女がこっちに寝返ったっんだから仕方ねぇつったらそうなのか?」
桜木の脳裏に一人の女子生徒の姿が思い浮かぶ。
曰く、地元で腕を鳴らした札つきの不良5人を1分もかけずに診療所送りにした。曰く、力士と見紛うばかりの巨漢を片腕で持ちあげたことがある……。
真偽は不明なものの、
それだけではない。長年つき従ってきた
確かに、
だが、
「自分は隠せてるつもりなんだろうがな、バレバレなんだよ!」
体の奥底から湧きあがってくる焦燥と憤激に任せて
親指の爪をかじりながら
最近、
当然といえば当然だ。本来ならば
あの
「クソがッ……。」
いつだって昨日のように思い出せる、アスファルトの上を爆音で疾走した日々。一度味わえば病みつきになるあのエンジン音とバイクの振動を再び取り戻すまでは
しかし、どうしようもない。
行き場のない苛立ちをぶちまけるように、自分をこんな夜遅くに呼び出した"郵便屋"に心の中で罵詈雑言を浴びせかける。そもそもこんな深夜にあの"郵便屋"に呼び出されるなど初めてだ、面倒なことこの上ない。
怒りに震えながら歩くこと数分。
「ちっ、"郵便屋"のヤローをなんだってこんな辺鄙な教室で待たなたきゃいけねぇんだ。」
脳裏に浮かぶ背丈の低い
暗闇に浮かびあがる窓際の人影に
新調したばかりの制服が白の埃にうっすらと汚されたのに気を悪くした
"郵便屋"は一体全体どういうつもりで
もしかすると、
そうでなければ、かつては愛知県一帯で悪名を轟かせた凶悪な走り屋であり今や"転売屋"として高校の裏を牛耳っている
肩を怒らせて今にも人影に掴みかかろうとした
雲に覆われていた月がその顔を覗かせる。廃教室にさしこむ月光はその人影の正体を静かに照らし出した。
「初めましてかしら?
悪魔のような笑みを浮かべた怪物、
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