第14話
なるべく起こさないように気をつけながら、僕は
どうも、僕はこれからしばらくの間、
手持無沙汰な僕は、
かつて
僕は、首から下げられた
なんの変哲もない、ただの鍵だ。ただし、この鍵を
いかなる衝撃や薬品にも耐えるその金庫を開けるには、ふたつの鍵が必要だ。そして、それらは"銀行屋"の各々に分散して預けられ、守られている。
僕が
授業が始まって廊下の喧騒も遠のき、旧図書室はいつの間にか静寂に支配されていた。
がらり。旧図書室の扉が音をたてて開かれる。心臓が飛び出るほど驚いた僕は、その突然の来訪者の正体を知って胸をなでおろした。
「なんだ、
「なんだとはなんやねん、うちは心配して来たったっちゅうのに。」
頬を膨らませて不満を表明している
「おっ、
ソファで僕の隣にどさっと座った
「
えいえいと、どこか日頃の気苦労や恨みを晴らすように
「それで、昨晩はなにがあったん。
どうやら僕が昨日の晩に高校まで帰ってこなかったことについて
全てを聞き終えた
「アブリルはんが山の中に住んどることはいったん置いといてやな、そないな山ん中に一人で、それもなんの準備もせんと行くなんて自殺行為もええとこやろ。」
「……そういえば、
「ああ、そんなもんもうええわ。あんな教室で勉強なんかやってられんで、あんたらのほうが心配やったんや。」
ふと、気になった疑問が口をついて出てくる。やさぐれた様子の
おかしい、父親である先生を尊敬していた
「なんや、うちがこないなこと言うんがそんなにおかしいか。」
僕が心配げな眼差しを送っていると、
「簡単な話や、うちもこの
どこか遠くを見つめるような梅小路の目は、現実に疲れはてたような哀愁を漂わせていた。どうやら授業中は弩のつくほど真面目だった
「あとな、これは
今更ながらつくづく我が母校の荒れ具合に戦慄を覚えていると、梅小路がぼそりと僕たち"銀行屋"に決別を告げた。
「そう、
僕は別に驚くことはなかった。
あの日、
「うちも心の中で割り切ろう思たんやけれどな、ごめんやけどもう限界やわ。」
最近、
「しばらくの間は化学室のあたりをウロチョロしとるつもりやから、よろしく頼むで。」
「うん、これからも教室ではよろしくね。」
僕は
「あのな、気悪くせんでほしいねんけれど、うちどうしても気になってしもてん。どうして
いきなりプロのボクサーにアッパーを喰らわされたような気持ちだった。いったいどうして、そんなカビの生えたような昔の出来事を掘り返してきたのだろう。
「パパに聞いたらな、あんたが
僕は苦々しいような、懐かしいような思いに襲われた。若さゆえの衝動に駆られ、僕が向う見ずに突っ走ったあの頃の記憶が堰を切ったように思い出される。
「でも、うちはそうやとは思えん。今の今まで見つめてきたうちには
いつの間にか、
「なあ、もしかしてなんやけどあんたは
目を逸らすことができない。それほど鮮烈な
「なんでそんなやつと一緒におるん? 弱みでも握られとるんか?」
「やったらさ、
しかし、その言葉が形になることは永久になかった。
いつの間にか起きていた
「――――そこまでよ。これ以上は到底看過できないわ。」
真の髄まで冷えるような、声。
「
それは、
「っ、わかったわ。遅かれ早かれうちもここから引っ越すつもりやったし。」
焦ったような、怯えたような
対照的に一切の情を感じさせない無色透明な
僕と
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