第13話
「
「あら、わたし哀しいわ。わたしはあなたをかけがえのない友人だとばかり慕っていたのに、あなたはわたしの顔すら覚えていてくれなかったのね?」
僕が半信半疑で口を開くと、
しばらくその彫刻のように美しい笑みを呆然と眺めてから、正気を取り戻す。そういえば、僕は岩場の上から
慌てて体中をまさぐるも、どこにも傷はない。慌てて起きあがって初めて僕は自分が木の枝で作られたクッションの上に横たわっていることに気がついた。
「あなたが落ちてくるのを待つのは退屈だったもの。それにしても驚くぐらいにうまくいったわね。」
どうやら幸運なことに
慌てて自分の足で立とうとしてよろけてしまう。無言で支えてくれた
ナイフ片手に崖上から襲いかかってきた
「
「別に、朝になっても帰ってこない
どうやら岩場の上での僕と
警戒を露わにする
「それにしても、あの臆病な
あの日、卓球場で
「それにしても、わたしの"銀行屋"に虫けらが混ざっていることが分かったのだから
全身に戦慄が走る。
「………この、悪魔。殺せない、無念。」
すこし怯えた様子の
「ふぅ~ん、そんなことがあったのね。」
向かい側の椅子に座る
「わたし、あなたが帰ってこなかったせいで一晩中起きていたの。」
"銀行屋"が寝ている間に襲撃をしかけてくる生徒がいるかもしれないということで、僕と
「それは、ごめん。」
謝罪の言葉を口にはしたが、僕は
こと荒事に関して"銀行屋"で最も長けていたのは
そもそも僕は裏切られたばかりか
そんな僕の心境もいざ知らず、
なにかもの言いたげな僕の様子に気がついたのか、
「わたし、疲れたの。早く眠りにつきたいから、質問があるなら手短にお願いするわ。」
「授業はどうするんだよ。もうすこしで朝礼が始まっちゃうぞ。」
「そんなもの休めばいいじゃない。中身なら後でわたしが教えてあげるから。」
どうやら、
そんな
「それでは、天才である
「あら、お言葉ですけれどわたしは
「べつに虚栄ではないわ、事実よ。だってわたしは
「……は?」
僕の膝に後頭部を埋めながら、
「ええ。その封筒の中身が
それどころか、
「このわたしが、自分の飼っている"銀行屋"をなんの首輪もつけずに信じていると思ったのかしら? あいにくとわたしはそこまで楽天的でも愚かでもないわ。」
「もしかして例のあの漫画がバレたのも……。」
「そうよ、
あの家庭科室での一件はすべて僕に釘を刺すための三文芝居だったというわけだ。……ということは
内心で友情を裏切った
「それならどうしてもっと早くに対処しなかったんだ。アブリルが寝返るのを止めさせることもできたし、僕にわざわざ手紙のお使いを頼むなんて遠回りに裏切りを公にする必要もなかったじゃないか。」
そこまで全てを知っていながら、どうして
「わたし言ったでしょう、わたしの"銀行屋"に虫けらが混ざっていることが分かったのだから
違う、
「あなたにあの封筒を任せたのはね、試験だったの。」
――
「気がつかなくてもそれはそれでよかったのだけれど。」
「あれはね、あなたが真に信ずるに足る従順な犬なのか確かめる儀式よ。」
僕は冷や汗を流しながら、やっぱり
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