第5話
中身がなくなって軽くなったビニール袋を片手に、僕と
ふと、
「
「いや、違うよ。たんなる偽善者だよ。」
「違わんで。」
「うちはこの
「しかたないよ、転校してきてすぐなんだから。」
また、沈黙が僕と
「
「そうだなぁ、酷い高校だとは思ってるよ。だけど、変えようがないから。」
しばらくして、もとの廊下まで戻ってくる。
「
「うん、ほかにいくあてないからなぁ。」
たわいのない話を二人でしていると、遠くから巨漢が近づいてくるのがみえた。その男に僕は見覚えがある。嫌なやつと出くわしたものだ、僕は顔をしかめた。
「夜も更けてきたわけだし、そろそろ旧図書室に戻らない?」
さりげなくその場を離れようと
二メートルはあろうかという巨躯を、鎖だらけの改造制服に押しこめた男が僕たちの前に立ちふさがる。脂ぎった坊主頭が蛍光灯の光を反射してテカテカと照っていた。
僕は嫌々ながらも声をかけざるを得ない。
「
暴力をいつも振るい、まるで王侯貴族のような尊大な態度をいつもとっているこの
「……おい、お前。そこの
鼻息を荒くしながら、
僕はまったく意味がわからなかった。僕と
と思った瞬間、僕の視界は悪趣味な指輪だらけの拳に埋め尽くされた。
目を覚ますと、オレンジの眩い光が目に入ってくる。たまらず起き上がると、そこはソファの上だった。
脇で心配げに見つめてくる
「よかった、大丈夫やったんか!」
抱き着いてきた
「ええい、離れんか!」
ひっついてくる
ここは旧応接室、つまりは
「
僕が小声で
「すまんかったな、
扉が開き、豪快に笑っている
その姿からはまったく反省の色がみられない。人一人を殴って気絶させているにも関わらず、だ。まさに横暴で自分の都合しか考えていない
「
「まったく、
なぜか満面の笑顔の
「それで
「……うちは遠慮しとくわ。そもそも、
「まったくお堅いねぇ、そんな法律なんて気にせずに飲んじまえばいいのに。酒はうまいぜ!」
「
僕は
自己中心的な
「
不気味なまでに上機嫌な
心細げな
「いや、僕は
「そうか、それはよかった。だけどなにぶん急なもんだからお前の分の料理は用意してねぇぞ?」
山奥でめったに手に入らない刺身からよく脂ののったステーキ、食後にはほどよい冷たさのアイスクリーム。おそらくこの高校で普通に暮らしていればけっしてお目にかかることのないような嗜好品が次々と出される。
それはまさに"転売屋"として巨万の富を築き上げている
「
まるで当然といわんばかりに口いっぱいにステーキを頬張る
どうしてだろうか? 正直なことを告げると、僕はすこし
そんなことを
「
「こうやってる今も
僕は
だが、僕はその答えは聞くまでもないと知っていた。
「ああ、そいつは俺も心が痛いぜ? でも食っていくためにはしょうがないだろ?」
ほら、
「……うち、そろそろ失礼するわ。」
バッと立ち上がった
けっきょく
「おい、
低い声が背後から響く。振り返らずとも僕は
「あのクソアマは俺の獲物だ。奪ったら承知しねぇぞ。」
奪うとか奪われるとか、いったい
「そんなこと知らないね。どっちにしろ誰と親しくするか最後に決めるのは
「……"銀行屋"だろうがなんだろうが、必ず後悔するぜ。」
その野蛮な瞳の光を僕は努めて無視した。
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