第15話IF  剣城君、童貞卒業おめでとう

「剣城君、やっほー。お待たせ」


「姫宮先生、今日はその……よろしくお願いします」


「ふふっ、そんなに緊張しなくてもいいのに」


 新宿駅東口にあるファッションビルの前で無事に姫宮先生と合流した俺だったが、正直言ってめちゃくちゃ緊張していた。これから目の前にいるめちゃくちゃ美人な姫宮先生とエッチするのだ。そんなの緊張するなという方が無理に違いない。


「じゃあ早速ラブホテルに行きましょうか」


「そうですね、行きましょうか」


 俺は姫宮先生と一緒に新宿歌舞伎町方面に向かって歩き始める。ちなみに俺達の目的地は歌舞伎町2丁目にあるラブホテル街だ。


「せっかくだし、腕を組んで歩かない?」


「……そうですね、せっかくなので」


 姫宮先生からそう誘われた俺は少し迷いはしたものの、腕を組んで歩く事を了承した。するとそんな俺の様子を見ていた姫宮先生は笑い出す。


「剣城君は反応が本当にピュアだから見てて飽きないよ」


 姫宮先生から笑われて恥ずかしくなった俺は顔が赤くなってしまう。結局俺は目的地のラブホテルに着くまでその事をネタにされて、ひたすら姫宮先生から揶揄われ続けた。

 しばらくしてラブホテルに到着した俺達はフロントで受付を済ませると部屋の中に入る。ラブホテルに来るのが初めてだった俺は受付などのやり方がさっぱり分からなかったが、姫宮先生が手慣れた様子でパネルを操作していたため何も心配はいらなかった。


「とりあえず私はちょっと汗をかいてるし、シャワーを浴びてくるね。剣城君は適当にくつろいで待ってて」


 そう言い残した姫宮先生が脱衣所の中に入っていく姿を見届けた後、部屋の中に何があるのか気になった俺は辺りをキョロキョロと見渡し始める。ベッドの枕元にコンドームが置かれていたり、大人のおもちゃが入った自動販売機が設置されている事以外は普通のビジネスホテルとあまり変わりなかった。

 まあ、姫宮先生曰くラブホテルは部屋によって雰囲気などが全然違うため、たまたまこの部屋がビジネスホテルに近いだけなのかもしれない。

 速攻でする事が無くなった俺は姫宮先生がシャワーを浴び終わるまでテレビを見て暇を潰そうと考え始める。テーブルの上に置かれていたリモコンを手に取った俺は早速テレビをつけるわけだが、なんと大音量でAVが流れ始めた。


「おいおいマジか。ラブホのテレビってAV映るのかよ」


 AVが映る事を知らなかった俺はかなり驚かされたが、これから姫宮先生とテレビの中に映っている男女と同じ事をするのだ。こんな事くらいで怖気づいている場合ではない。それからチャンネルを変えて普通のニュースを見ているとシャワーを浴び終わった姫宮先生が部屋の中に戻ってくる。


「お待たせ。じゃあ早速エッチしようか」


「は、はい」


 妖艶な表情を浮かべた全裸の姫宮先生からそう声をかけられた俺は着ていた服を全て脱ぐ。そして俺達はベッドの上で一つになった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「剣城君、童貞卒業おめでとう」


「ありがとうございます」


 一通りの行為を終えた俺と姫宮先生は全裸で体を密着させてベッドで横になっていた。遂に念願の童貞卒業を果たした訳だが、正直あまり実感は無い。緊張し過ぎていたせいでよく分からないまま終わったというのが初体験の感想だ。

 だがそれでも童貞を卒業した事には変わりない。クラスで童貞を卒業している男子はまだ数人しかいないため、俺はかなり早い方だと言える。


「中々体の相性が良かったから私も久々に楽しめたし、今後も剣城君には相手をして欲しいな」


「それってつまりそういう事ですよね?」


「うん、多分剣城君が想像してる通りだよ」


 俺は姫宮先生とピロートークをしていたわけだが、彼女の口から出た言葉を聞いてめちゃくちゃ嬉しい気持ちになった。つまり姫宮先生は俺の事を彼氏にしたいと言ってくれているのだ。

 体の関係になった後で付き合うというのは順序が逆な気はするが、そんな事今更関係ない。姫宮先生と俺は教師と生徒という関係だが、愛の前では些細な事だ。


「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」


「うん、よろしくね。また次会う予定とかに関してはLIMEで話そうか」


 姫宮先生はにこやかな笑顔を浮かべながらそう話してくれた。今日は童貞を卒業できただけでなくめちゃくちゃ美人な彼女までできたため人生最高の日と言っても過言ではないだろう。

 そんな事を考えながら浮かれるわけだが、この時の俺は姫宮先生のたくさんいるセフレの中の1人に選ばれただけに過ぎないという事に気づいてすらいなかった。

 そして途中アランの裏切りにあった事で俺の童貞卒業の阻止に失敗したエレンが、怒り狂って学内に血の雨を降らせるような大事件を引き起こす事になるとは知る由も無い。

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