第12話 剣城君にはもう1つ聞きたい事があるんだけど
姫宮先生と一緒に食事をしてから今日で1週間が経過していた。あの夜童貞を卒業させてあげようかと提案されたせいで俺は姫宮先生の事を猛烈に意識するようになってしまったのだ。
だが姫宮先生がいつも通り俺に接して来ている事を考えると、恐らくあの夜の事を全く覚えていないに違いない。もし覚えていたのであればいつも通りの対応なんて絶対できないだろう。
そんな事を考えながら今日一日を過ごしていたわけだが姫宮先生から放課後職員室に呼び出されたため、俺はエレンに帰りが遅くなる事を伝えてから職員室へと向かう。
「一体何のようだろ、ひょっとしてこの間の授業の件かな?」
もしかしたら追加で何か俺に聞きたい事があるのかもしれない。もしくはこの間提出した進路希望調査票の件という可能性もある。
「……姫宮先生、今大丈夫ですか?」
職員室に着いた俺は机に座って忙しそうに作業をしていた姫宮先生に恐る恐る話しかけた。すると姫宮先生は顔をあげて俺を見た後、笑顔で微笑みながら口を開く。
「あっ、剣城君。待ってたよ。この間提出してもらった進路希望調査票の件でちょっと聞きたい事があってね」
「はい、なんでしょう」
「実は剣城君が書いてた志望大学なんだけど、全部学部が書かれてなかったから教えて欲しくてさ」
そう話しながら姫宮先生は俺の提出した進路希望調査票を目の前に差し出してくる。中身を確認すると大学名に関してはちゃんと第5志望まで埋めていたものの学部が全て抜け落ちていた。
「本当ですね、すみません。今すぐに書きます」
「うん、よろしく」
俺は姫宮先生からボールペンを借りて机で記入し始めるわけだが、その様子を隣で見ていた姫宮先生が話しかけてくる。
「……予想はしてたけど難関大学ばかり志望してるんだね」
「一応将来は大企業に入りたいと思ってるので」
俺の志望は国公立大学である東京州立大学や京都国立大学、私立大学である
「そっか、ちゃんと今から将来の事を考えてるんだね。私が高校2年生の時は全く何も考えてなかったから大違いだよ」
「それでも今立派に先生をやってるんだから別に良いじゃないですか」
「本当に? そう言ってくれると嬉しいな、ありがとう」
俺の言葉を聞いて嬉しそうに微笑む姫宮先生につい見惚れてしまった。するとそんな俺の視線に気付いた姫宮先生はニヤニヤとした表情になる。
「剣城君、ひょっとして今私に見惚れてた?」
「そ、そんな事は無いですよ」
「じゃあそういう事にしておいてあげる」
慌てて否定する俺だったが姫宮先生の反応的にきっとバレバレに違いない。それから志望大学の学部を全て書き終えた俺は姫宮先生にチェックしてもらう。
「うん、今度は大丈夫」
「お手数をおかけしました。じゃあ俺はそろそろ帰りますね」
「あっ、ちょっと待って。剣城君にはもう1つ聞きたい事があるんだけど」
そう言って職員室の外に出ようとする俺だったが、姫宮先生に呼び止められてその場に立ち止まる。そして姫宮先生は俺の耳元に顔を近づけると小さな声でささやく。
「……ねえ、剣城君。結局先生とはいつエッチしてくれるの?」
そんな事を突然言われた俺は驚きのあまりここが職員室という事もすっかり忘れて大声を出しそうになる。だが寸前で姫宮先生に口を押さえられたおかげで声を出さずに済む。それから俺達は周りに聞こえないように小声で話し始める。
「……まさかあの夜の事、覚えてたんですか?」
「うん、どんな内容の会話をしたかまで全部しっかりと覚えてる」
なんと姫宮先生はあの日の出来事をしっかりと覚えていたのだ。だがそれを知ってとある疑問が生まれてくる。それはなぜ今まで忘れていたふりをしていたのかという事だ。するとそんな俺の疑問を感じ取ったのか、姫宮先生は理由を話し始める。
「最初は忘れたふりをしてあの夜のやりとりを全部無かった事にしようかなとも思ってた。でも剣城君があまりにも私に情熱的な視線を向けてくるからさ、先生我慢できなくなっちゃった」
どうやらこの1週間、姫宮先生を性的な目線で見ていた事も完全にバレていたらしい。女性は男性からの視線に敏感とはよく聞くが、姫宮先生も例外ではないようだ。
「だからさ、今度の日曜日ラブホに行って先生といっぱいエッチしよう」
「で、でも俺達は生徒と教師ですよ? それは流石に不味いんじゃ……」
「今更真面目ぶっても遅いよ。それともひょっとして剣城君は先生とエッチしたくないのかな?」
もし仮に俺達が生徒同士であればエッチしても問題ない気はするが、それが生徒と教師なら話は変わってくる。未成年と性行為をするのは合意があったとしても犯罪なのだ。
だからはっきりと拒絶の意思を伝えようとする俺だったが、性欲に負けてつい別の言葉を話してしまう。
「……すみません、少しだけ考えさせてください」
「ふふっ、良い返事を期待して待ってるね」
それから俺は職員室を出てエレンと一緒に帰り始めるわけだが、会話の内容が何も頭に入って来なかった事は言うまでもない。
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