第27話 精霊 その②

こいつはどうなっていやがるんだ!多方向からの視覚情報が一気に流し込まれてくる!

「はぁ.....はぁ.....」



皇帝カイザーが去った後、ポプランは手に持っている何やら箱のようなものを拭きながら鼻歌を歌っていた。そしてロイエンタールを見つけると声をかけた。

「おぉロイエンタール、こっち来いって。」

「どうしたポプラン。」

面会の後、特に仕事のないロイエンタールは珍しく誰も口説こうともせず、ただそこらをぶらぶらとしていた.....まぁ同じ最高幹部.....もとより友人の部下たちを口説く事が出来る男の方がどうかしているであろう。

「こいつを覗き込んでみろ。」

そう言い、ポプランはロイエンタールに小さい一面だけ開いた箱を渡す。

「なんだ一体.....うん!?なんだこれは!」

冷静だったロイエンタールが驚く。

「こいつはな、非魔道具科学武装開発部の新兵器だ。箱の底に絵が見えただろう?そいつはな、今リアルタイムで起こっている出来事なんだ。そんなに驚いた顔でこっちを見るなって。まだ試作品で魔力を供給させているんだが直に使わなくなるらしい。実はこの画期的なアイデア自体は.....まぁ開発部からしたら少しは複雑かもしれないが研究員ではなく俺の秘書官なんだ。でもそれなりに慕われているようだし、寧ろ思いついたことを心の底から喜んでくれているのかもしれないが。新しい発明の内容ではなく誰がを優先するほどうちの研究員達は名声を求めた飢えた狼ではないと思いたいのだがな。あ、そうだ。お茶いるか?新しい美味しい茶葉なんだ。少し待て.....よし後二分くらいで出来る。話を戻そう。それも思いついたのがつい此間のことなんだ。開発が成功した新型の非魔力式拳銃を本部まで持っていったんだがな。そこでオーベルシュタインに会ってだな.....笑えるんだが少し言葉を交わした時にあいつの義眼の調子が悪くなって一度取り外して新しいものに変えたんだがそれを知らなかったうちの秘書官がこりゃまたドギャーっと吃驚しちまって泡吹いて倒れたんだと。どうやら義眼そのものは知っていたんだがまさか交換が取り外し式だとは夢にも思わなかったらしい。その後に大声を出してしまったことを謝罪したんだがそこでだな.....流石の好奇心というか怖いもの知らずというか.....『その義眼、少し見してくれませんか。』と言ってだな、予備を見してもらったらしい。そこで義眼内部の水晶から陽と陰、彩度だとかの情報を感知してそこから脳に送り届けるというメカニズムを知ったらしい.....おいおい大丈夫か。何。『そんな原理だったのか』だって?.....実は俺もこの秘書官からの報告で知ったものだ.....そこで我が秘書官思いついてしまったんだ。『これ.....兵器として使えるんじゃないか』と。まぁ元々潜望鏡はあったが、そいつを使うには鏡が必要であくまで密閉空間から外部の状況を大体見るくらいでしかないだろう.....いわば潜望鏡の出口と入り口がどれだけ離れていてもその状況をしっかり見れる偵察機を作れないだろうかとね.....あ、出来たか。ほら注いで.....さぁ出来た。ほら飲め飲め。どうだ美味いだろう。こういう茶葉も手に入れてるのもこの秘書官なんだよ。さて、どこまで話したっけロイエンタール.....うん。あぁそこまでだったか。ありがとう。えーそれでこっちに帰ってから早速それについて開発部に少し冗談的に言ったのだが.....まぁ研究者の性なんだろうな。それを聞いた途端すぐさま研究員らは設計図を書き始めたんだ。それで少ししたら全員で設計図を見せ合って無駄を省きより効率的に.....とまぁこんな感じで試作品プロトタイプを作る準備を進めて多少の魔力.....あぁそんな目で見るな。そいつらは魂を売ったわけではない。あくまでも保険の補助機能くらいでのmg程の魔力だ。主に使用しているのは電気.....えー確かにそうなんだが少し違う.....電波。そう電波だ。面白いだろう。この電力だとか電波の電気の力は魔力に変わる新しい力だ。さてさてこいつの研究の副産物としてこの電気を拳銃に使うことによって弾速を魔法弾使用時と同スピードになるように画期的に早くし、魔力消費を抑えるという銃開発部との共通プロジェクトも始まってだな。いやー安泰安泰。我が秘書官が叫んでくれたお陰だよまったく.....ん、どうしたロイエンタール。顔が青いぞ。腹に何か当たったか?あぁさっき貝を食っていたろ。あれだな。ん?後ろ?後ろに何がいるって.....」

「ポプラン様。」

後ろに立っていたのは随分ご立腹な表情のポプランの秘書官であった。

「あ、秘書官.....これは.....」

「仕事が目いっぱいありますので.....ロイエンタール様との話が終わりましたら直ぐに執務室へお願いします。」

「.....ワカリマシタ」

これを見ていたロイエンタールは思わず吹き出しかけたがとてもその様な事をしたら秘書官の怒りの矛先がこちらへ向くだろうと思いとどまった。



「何故.....何故貴様避けられるんだー!おかしい.....おかしいいんんじゃなあいかああああああ!」

そんな大きな声出すな。神経が苛立つだろ.....俺だって分からないさ。この死角が見えてしまう謎の空前絶後の超絶怒涛の技術は俺の与り知らぬ商会の広大な地下のところで発展してるんだからさ。

「ん。」

情報伝達が切れたな。なんだ殺気だとか危険だとかを感じなければ起動しないのか。省エネだね。その精神大事よ無くさないでね開発部の諸君。

「まぁ良い.....そうだな。黒い騎士よ、君には敬意を払わなければならん.....だがそれであっても.....」

「お、そいつはそうだな!」

右ストレートからのーーーー!

「&魔力爆発!」

大きく吹っ飛ばす。

「.....卑怯だぞお前.....」

「それを君に言われる筋合いは無いね。卑怯も辣韭も無いだろ。」

自分が動ける事を確認しながら満面の笑みで言う。

「このド阿保。」

「き.....貴様!」

さてと頭に血が上ってくれたらしい。単純で助かる.....っていてて.....流石に腹貫通は魔力で緩和してると言っても痛いものは痛いからな.....そう時間はとれないか。警戒すべきはエルフの彼女ではなくそのパートナーだな.....補助魔法だったかな。彼の得意な魔法は。だったら補助は補助でも付与が出来てしまうんじゃないか。服でも鎧でも武器にでも。そうでもしないと詠唱途中に攻撃されて回避なんて出来ないだろう。詠唱して使う魔法には大変集中力を使うというからね。

「実質一対二じゃないか.....」

まぁでも付与ならリアルタイムで変更は出来ない地雷みたいなものなんだろう。そうであってくれたまえ。でないと胃に穴が開くさ。極論を言うと地雷だろうが時限爆弾だろうが爆発する時に近くにいなければどうってことは無い.....これがかの有名な当たらなければなんとやらってやつだな。さて気付けば400カウントを超えている。どうなることやら。

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