第26話 精霊 その①
さて、ロイエンタールと話している途中に鎧のメンテもしてもらったらしいし万全の状態で臨めるな。ある程度前回の試合のデータから改造もしてもらったらしいし、より俺に合った戦闘スタイルを貫ける.....らしい。うーん。データと言っても.....肉弾戦が強化されているのかな。焦って剣よりも拳を先に使っていたからかな。
「王国バトルトーナメント予選第三グループ第十三試合。間もなく始まります。席をお立ちのお客様はすぐに席に座り、観戦の準備をお願いします。」
なんだ凄いアナウンスだな。いよいよ始まると。うーん。あらそういや今回は女性の方なのね。予選開始の時に妙に五月蠅いあの男性の方だけなのかと思ってたからなお驚きだわ。
「選手入場!先ずは衝撃的なデビューを果たしたチームアイス・ゼロ!ルフティ・スビ・フヴィアス選手とレイ選手だ!片方は貴族学校の学生!氷魔法を得意とする美少女だ!前回試合では惜しくも相手を圧倒出来なかったが体力と魔力を奪い.....もう片方の謎に包まれた全身漆黒の鎧の騎士に繋いだ!この謎の騎士について分かっているのは選手登録の際に犯罪歴の無い事をを確認した程度!前回の試合では高純度の魔力を打ち出し相手を翻弄した!さて今回はどんな隠し玉があるのか!」
まぁたしかにこの『レイ君は』人殺しとか間接的にもしていないからね。
カイルでの時も偽装しなければ危なかった。右手を機械人形的肉体で盛っていなければ一発でOUTだった。左手を審議の水晶へかざす時に右手を隠していたおかげで太くなっていることに気付かれなかったからな。あの時程緊張したのはこちらへ来てから初めてだ。
「対するはチームラッケリン・ホワープ!ステイリィ・スギ・デッケルネス選手とバラルタケル・ウィッケンネル選手だ。ステイリィ選手は1000年以上生きると言われるエルフ族の中でも特に寿命が長いと言われる10000年の時を過ごすユナイテッドエルフだ!前回の試合では魔法とは違う不思議な力で一度も攻撃を喰らう事なく相手を戦闘不能にしてしまった恐ろしい戦士なのだ!パートナーのバラルタケル選手はそれにより実力は未知数!だがどうやら補助魔法の適性が高いようだ!全身をローブで隠していてその表情も分からない!こちらも謎に包まれている選手だ!」
魔法とは違う不思議な力.....まさかとは思うが科学.....ではないだろうな。エルフ言うぐらいだし途中で技術革命が起こっても不思議ではないか。何せ我々人類の寿命よりよりも長い悠久の時を過ごすんだもんな。途中で飽きないかね。いや、エルフの大概は一族で引きこもっているって相場が決まっているんだもんな。だとしたら時の流れに鈍くなっていても不思議ではないか。
「フフフ.....レイ!私バラルタケルは宣言しよう!」
ん?なんだ試合前のマイクパフォーマンスか。気が利くね。
「我々は300カウント以内に貴様らチームアイス・ゼロを倒す!」
会場が熱く湧く。
「れ、レイさん.....」
怖気づいたような顔でファビアス君.....いや性別的にあれか。さんにした方が.....うーんでもこれでセクハラだのなんだの言われると.....もう君でいいや。そのファビアス君こちらを向く。
「なに。心配することは無いさ。」
「そうは言っても.....」
「命の取り合いではない。あくまで模擬だ。ならば全力を出せるというもの。」
そんな怯えた顔をするんじゃないよ。
「ほら、泣くな。折角の良い顔がダメになるじゃないか。闘志を燃やした戦士の顔になりなさい。」
「レイさん.....」
とは言え.....こうも大々的に宣言するってこったぁ、何かそこまでにさせる自信の源があるってわけだよな。
「そいつを壊さないとまずまず土俵にすら上がれないという事か.....」
非常に厄介だ。だがまぁ、戦術がどれだけ通るか試してみる良い機会か。
「ではファビアス君.....私が先に出る。」
「あ、はい。了解です!」
試合会場の初期位置について相手を見る。
「ありがとう.....黒き騎士よ。私は是非とも貴方と先に剣を交えたいと思っていたところなのだ。お気遣い感謝する。」
「こちらのパートナーをビビらせて降ろしておいてよく言うわ。」
「まぁ良いだろう.....どれ、手合わせ.....願わせてもらおう!」
「王国バトルトーナメント予選第三グループ第十三試合.....開始!」
ゴングが鳴り、戦いの火蓋は切って落とされた。
最初に仕掛けてきたのは相手だった。
「手は抜かないぞ.....」
そう言ってから何やら高速で詠唱を始めた。おいおいこいつは不味い奴なんじゃないかな。詠唱を中断させてやらないと。そう思い斬りかかるが、何時の間にか前にはおらず、右後ろ斜めにいた。
「な.....」
しかもそれでおいて詠唱は続けているときた。なんだよ今の回避は自動だとでも言うのかいエルフの嬢ちゃん。
「喰らえ!」
詠唱は終わったようで四方八方を何時の間にか水の剣が囲んでいた。そしてそいつは俺に一直線に飛んできやがった。
「ぐ.....」
流石に四方八方ともなると完全な逃げ道も無いもので全てでこそないが大概の水剣を喰らってしまった。しかし.....おいおい開発主任さん、対魔力コーティングを施しているとか言っておきながら随分傷ついちゃっているんじゃないの。水圧なのかい凹んでいるぜ。魔力で作られたものなら水圧だろうが高熱だろうが無意味なのではなかったのかい.....とすると.....やはり本当に選手紹介でも言っていた通り、魔力ではない謎の力なんだな。ははは.....笑えないな!相手は俺に攻撃がお見事ナイスヒットしたのを確認するとどこから出てきたか火の灯る槍を構えて突進してきた。
「.....」
リアクション出来る余裕も無いな.....紙一重の回避だぜこいつは。マト〇ックスじゃないんだからさ。だが回避方向が右と突進方向が前ではある程度距離は稼げるか.....
「甘いぞ!」
次の瞬間何が起こっていたと思う?そいつは.....俺でも説明が着かないのだがな。簡単に言うと槍が腹を貫いていた。
「レイさん!」
「落ち着くんだファビアス君!」
とは言ったが一番焦っているのは俺だよ。どういう事なんだこいつは。俺の攻撃を何時の間にかワープして避けた事と同じ原理なのかい?
「仲間の心配をしているとは余裕だ.....」
「うおら!」
抜刀も出来なそうだし、苦し紛れの攻撃にはなるが殴るしかないか.....うん?何だ?腕に魔力が集中して.....
「うぐぁあ.....」
そう叫んで相手は壁まで吹っ飛んだが.....どういう事だ?指先で魔力が爆発しただって!?指の部分が光っていやがる.....そうか.....こいつが前回の試合からデータを取るという事か!
「不覚.....まさかその様な隠し玉があったとは.....この痛みは私の驕り高ぶった事への戒めと受け取ろう.....だが今の攻撃は既に見切った!そう易々と同じ攻撃は喰らわぬ!」
安心してくれエルフのお方。俺も初めてだ。
「だが.....黒き騎士よ、そなたのその魂の攻撃を貰った代わりだ.....私の攻撃には一切魔力を使用しておらん!私は精霊の力を借りているだけにすぎん!」
精霊だって?そいつは対魔力コーティング様が全く役立たずになるわけだ。
「さぁ!お互いの秘密は明かされたな!正々堂々戦おうというものだ!」
.....
「と言うとでも思ったかこのド阿保!」
なんだ.....目の色が変わったか.....っておいおい火の玉大量発生でこちらに向かってくるじゃないの。
「水のカーテン!」
咄嗟の防御、しかしあらら貫通.....ですよねー。
「ははは!無駄だよ!精霊力は魔力を超越した力!魔法などでは止められん!」
おいおいなんとか直撃は免れたが.....おいおい鎧に開いた小さな穴から血が出てくるじゃないの.....いつかの漫画じゃないんだからさ。
「.....ん?」
なんだ左手が温かい.....ここから力が出るような.....
「どうした?こちらを向け!その鎧を今にも剝ぎ取ってやるぞ!そしてそのクソ汚いてめぇの面を何回も剣で滅多刺しにしてやるぜ!」
.....あのさっきから気になっているんですけど.....キャラ変が過ぎませんかね.....戦いになると熱くなっちゃうタイプのお方なのかね。苦手だわ.....と、他人の精神状況は兎も角、なんだこの温かさは.....うん?グレネードから変更したのか?左手の方が少し発射口が小さくなっている.....
「何やら分からんが使ってみるか!出ろ!」
そうして勢いよく小さな球状の弾は散っていき.....相手には当たらなかった。なんだよ散弾銃だって言うのかい?だとしてももう少し前に向かって飛んでいくだろ!
「なんだどうした残念だったな。喰らえ!ウインドカッター改!」
うぉっとV字の物が飛んできた。そこまで弾速は速くないな.....
「避けたか.....だが意味のないことだ!」
また水の剣が.....ん?なんだ頭が痛く.....な.....後ろにウインドカッターが見える!無論すぐさま避ける!そして右後ろ斜めからにも水の剣を感じ.....いや、見た!こいつも避ける。
「な.....完全なる攻撃を.....貴様!なぜ後方からの攻撃を.....見切ったのだ!」
言い終わると同時にゴングが鳴り当初予告していた300カウント経った事をただ無常に告げていた。
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