第20話 己の剣

「これは.....クレイ!なんなんだ!」

遂に人間の培養にでも成功したのか。

皇帝カイザー.....とっくに解ってるでしょうに。わざわざ説明させるのですね。確かに多少の食い違いはあるのでしょうが.....」

食い違いもなにも何一つ解ってないよ。解ってたら銀河帝国の技術者達の生命倫理感が塩一粒分も無いって事になるぞ。

「このZBF-153.....機械人形は魔力を媒介として意識を没入させることによって扱う操り人形の延長線上にある兵器なのです。」

操り人形.....玩具の延長線上が兵器とは皮肉だな。まぁどんな技術も結局は兵器転用されるって銀英伝で誰かが言ってたしな。

「して、この体は何によって形成されている。」

「はい。魔力によって生成した卵子にこちらの精密機器を使用し精子を入れて人工授精させてから遺伝子操作を行い、魔力の質と量、そしてそれに耐え得る強靭な体を作り出し、操作をより直感的にするため、脳の感情及び知能を司る部位を排除しました。」

.....THE非人道的行為だこれ.....

「しかし.....身体と接続するためには莫大な魔力を現時点では必要とし、出来たとしても最大稼働時間は5分程度ですので実戦にはまだ投入は出来ないのです。魔力を効率よく、安定性を向上させるための調整にはまだ時間が足りないのです」

なるほど。良く分からないな。

「だが、諦めるものではありません皇帝カイザー。」

「なんだ。策でもあるのか。」

「はい。入ってこい非魔道具科学武装開発部の者共。」

「はっ!」

掛け声と同時に数名の男たちが入ってきた。こいつらも技術者だろうか。

皇帝カイザー、こちらは魔力を使わない兵器を開発する技術者達です。彼らの魔力は枯渇しておりそれでも役に立ちたいとの事でしたので特別兵器開発部門を設立したのです。そして.....おいリベル。こっちに来い。彼が主任です。」

「はっ。お初にお目にかかります皇帝カイザー。」

「うむ、そんなに堅苦しくせんで良い。」

「お心遣い感謝します。」

「してポプラン、こちらがどう策なのだ。先ほど科学とか言ったな.....魔法と科学の融合でもするのか?」

「これは.....先見の明と言いますか.....」

当たりかよ。

「で、具体的にどうすると言うんだいリベル。」

「は、こちらをご覧ください。」

手に持っていた小型の筒状のものから光が出たと思えば向かいの壁に画像が投影された。なるほど、プロジェクターか。技術力は半端ではないな。

「こちらの円形の機器を頭部に装着していただき脳から出る電波信号をキャッチすることにより、その信号を魔力で機械人形に直接送り込みます。」

「ほう。なるほどいい案だ。しかし.....」

腰から取り出したナイフを相手に突きつけて言う。

「口ばっかの奴は嫌というほど見てきた。お前もその一人か?」

前世でも無理そうな技術をこっちではないがしろにされてた科学で実現すること自体、不可能に等しい。あぁプロジェクターは凄いさ。でもそれとこれとじゃ訳が違いそうだ。

「お戯れを.....」

「我は本気ぞ。」

さぁどうでるかいリベルとやら。

「サイキ、非魔道具科学武装開発部の立ち位置は?」

「あ、はっ!武装開発部の中の生活魔具の下にあります。」

「よし、これが『成功したら』.....」

さぁ、相手の望むものは.....

「皇帝直属の部署とせい。」

「!?」

どうやら衝撃が走ったようだな。こんな甘言に釣られるような奴じゃないだろうがまぁ一応言ってはおくか。

「失敗したらこうだがな。」

首をトントンと叩いてみる。

「まぁ今から降りても良いぞ。さぁ、どうする?」

数秒の静寂の後、決意したようだ。

「.....やります。やらせていただきます!」

「ほう.....失敗したら死だぞ。」

「死を恐れて技術者は出来ません!」

ほうほうこれは.....

「.....ックックックック.....リベル.....余はそなたを気に入ったぞ。中々に面白い男だ。」

中々の男がまだいたものだ。




四日後、呼び出しを受けて人通りの少ない通りのビルに背を向けて立ちながら報告を聞く。

「さてどうだポプラン、例の機械人形は?」

「稼働実験も成功。安定性も勿論だと。」

「ふむ、じゃあ約束は守らんとな。」

「ですね。」

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