第19話 分身
「え?」
「後輩が困ってるのに助けないわけにはいかないからね。」
「いやさっき私が助けましたが.....」
「じゃあ恩返しだ。」
「はぁ。」
中々なぁ.....うーん悪い人じゃないんだけどもそこのとこ付け込まれたんだろうな。だけども.....
「私としては参加証明書『だけ』貰えればいいのです。なにも負けるまで一緒にいてもらう必要はありませんが.....」
ここまで言いかけて流石に止まった。この人は善意で言ってくれてるのにそれを拒否するのも.....
「うん、そうか分かった。じゃあ少し戦って終わろう。」
そんな顔で言わないでくださいよ先輩.....かくなる上は銀河帝国の誰かを使うか。
「じゃあ代役を立てます。」
「代役?」
「親戚の兄ちゃんにでも頼んでみますよ。」
「それじゃあ最初からそのお兄さんに頼めば.....」
「あの人はまぁ.....何と言いますか.....」
思わず歯切れが悪くなる。こんな簡単なことに気付かないで言ったのか俺は。無能も無能だ。転生したから脳も退化したと?認めたくないものだがあり得るかもな。この頃自分の行動が随分と幼稚に思える。まぁ年相応でこそあるが中年にとっては中々なものだ。
「まぁ君にも事情があるんだろう。」
「はいまぁ.....」
「途中でパートナー変更も確か大丈夫だったはずだ。安心しとけ後輩。」
「はい。」
まぁ.....なんとかなるか。
「はいいらっしゃいませ!こちら古今東西の品々を扱っております銀河商会でございます。貴族学校の生徒様とお見受けしました。えーご用件は?」
周りに人は.....いないな。確か合言葉は
「今日は少し冷えるな。アイスティーよりもホットコーヒーが飲みたいんだが。」
「.....分かりました。どうぞこちらへ。」
奥の間へ案内されたらそこには見覚えのある男が居た。
「ポプラン。久し振りだな。王都潜入とは幹部がやることかい?まぁそのお陰で会えたがな。」
「へへへっ。すいません
「この国の技術を盗みに来た。そんなことを言うのではないだろうな。人的資源はともかく少数精鋭の技術者がいるこちらが上回っているであろう。まぁつまり女でだな。」
「はいまぁ。」
「ったく。程々にしとけよ。で、本題に入ろうか。」
「はい。王国バトルトーナメントに出場するのでしょう。その為に使用するものですね。」
「あぁまぁ.....」
「分かっております。早々にリタイアされるのでありましょう。」
こいつエスパーか?リルゥにも言ってないし.....え盗聴された?
「確かにこの国の強者達を見ておきたいというのも分かります。ですが『貴族学校生徒のカイル・サス・サイサルセッチュー』では問題なのでしょう。そんなので勝ち抜いては後々問題が生じる。」
そうそう良くわかってんじゃん。流石幹部。
「しかし私たちに代役を頼んでは安心できない。」
ん?いや君ら十分強いし、逆に役不足くらいだと思うけど。
「そうだと思いまして用意しました。こちらへ。」
そう言って机をどかし、何か呪文のようなものを唱えたかと思ったら隠し階段が現れた。地下にあるというのだろうかその戦士か兵器は。いや、十分強い奴らが用意した戦士ってそれもう最終決戦兵器じゃないのか?そんなの出来上がったらこの世界でさくらかG線上のアリア流れるぞ。と、そんなことを考えていたら着いたらしい。中々厳重に警備された部屋だ。まさか国も新興企業の商会の地下で兵器開発とは思いもしないだろうな。
「おぉこれは.....」
薄暗くて小さい部屋かと思いきや案外中は広いもので数十名の科学者らが熱心に実験、研究をそこで行っていたのだ。
「おいおまえら。」
ポプランが呼びかける。
「そなたらの主である
「おぉ
一人の科学者の筆頭らしいものが出てきた。目深に被ったフードで顔は良く見えない。そんなのでちゃんとできてるのか?
「お初にお目にかかります。魔道具開発主任のクレイと申します。」
「うむ。」
声からしてまだ三十の坂は上ってないだろうな。そんなことより
「ポプラン、見してくれるか?」
「分かりました。お前達!
「あれを実戦投入なさるのですか!?」
え?なんかやっぱヤバいものなの?
「どうしたクレイ殿、なにか問題でも?」
「殿.....失礼ですが私は女でございます。」
すいません。失礼しました。
「あーそれでは
「ZBF-153はまだ実戦投入は危うい状況なのです。まだ調整が.....」
ほぉ.....
「その調整にはあとどれくらいかかるのだ。」
「少なく見積もっても一か月は.....」
ダメだ間に合わん。しかし納期を上の都合で勝手に短縮するのも.....悩ましいところだ。
「なにも開発主任よ、最悪見してくれるだけでいいのだ。でしょう
そうか.....そうだな。
「まぁそうだな。」
「とのことだ。」
「.....はい。分かりました。」
納得いかないという様子だな。まぁいいけど。
「こちらでございます。」
布をかけられているそれは人サイズの大きな瓶のようだった。
「いつまで掛けているつもりなのだ開発主任。早く
「御意。」
布が取られたそれを見て俺は唖然とした。
「これは.....」
「ZBF-153.....
瓶の中には.....人が入っていた。
「これを使用していただきます。
俺はもしかしたらとんでもないものを作らせてしまったのかもしれない。
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