第17話 夜の王都で悪魔は踊る その⑦

仮眠をとっていると爆発音が少し遠くから聞こえてきてバッと眠りから解放された。一体何事だ?

「おいバードン。起きたか。」

同僚のウィロスに声をかけられる。

「あ、あぁ。なんなんだこの爆発は...?」

「貴族学校からだ。」

「貴族学校....まずいじゃないか!」

「あぁ、でもまずはこっちなんだ。見てみろ。」

辺りを見ると騎士団員の殆どがいなかった。

「もう行ったのか?」

「いや、爆発の大分前に見回りに行ったまま...」

「....」

思わず息を呑んだ。これは火に油を注いでしまったではないか。

「急ぐぞ。このままでは生徒に被害が出る。」

「言われなくても。」

こうなってしまった以上、最善の行動をするしかない。それが神の騎士団の騎士の役目だ。






「あ、やっちまったか。」

思った以上に威力あったな魔力ボトル全開放。そういうものなのか。

「残り二本....まぁそうポンポンお出しになれはしないし大事に使うか。」

ここで少し魔力ボトルについて説明しておこう。特殊なコーティングを施したガラス....少し分かりやすくするために理科の話をしよう。光ファイバーを御存じであろうか。あれは出された光が光ファイバーの内部で全反射を起こして進むというものなのだが....それと似ていて魔力が特殊ガラスに全反射....正確には反射とは少し違うが便宜上そうさせてもらおう。そいつを起こしているんだ。それで全反射するガラスを加工して瓶の形にし、その中に限界密度を超えた魔力を入れる....するとどうだろう。今週のビックリしてドッキリする兵器が登場するわけだ。あとこいつは最近分かった事だが密度を超えた魔力を戻すと、魔力量が増える。このいまいち原理が分からない現象を俺はそのメカニズムを解明しようと思って瓶の方を改良に改良を重ねていた矢先に今回の出来事だ。全く面倒くさいね。ま、この瓦礫の山の方が面倒くさいがな。

「何処だい侵入者。出ておいで。」

「この....小僧許さんぞ....」

あ、瓦礫の下から下半身と右腕が無い状態で這いつくばってきた。よくやるねぇ。見上げた根性だ。

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう。」

「クッ...」

あ、なんか呪文発動しようと右手構えてる。先程見上げた根性とは言ったがこれでは往生際が悪いかな。引き際を見誤るなよ坊主。

「させるかよ。」

ナイフ三本投擲。脳髄と心臓部と手に一本ずつ。すまないなサバイバル研究会の先輩方。本来の使い方でこそないだろうが緊急事態だ。許してくれ。

「カッ....ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁ!俺が!お前みたいなクソガキに!負けるはじゃねぇ!」

「坊主....負けているではないか。そこまでして己の『勝利プライド』に拘るか。そいつは....」

自分の力に溺れてたか。哀れといえば哀れ。まぁせめてもの情けというものだ。

「まぁ、地獄へ行く前にプレゼントでもしておいてやろう。感謝くらいしとけ。」

「あん?」

「やっとこの世界とおさらば出来るんだからな。残念ながら俺はガキでは無い。見たところお前はその見た目で魔術の熟練度が高い。あれだ。チートってやつだろ。まぁ精神の方は学生のノリくらいだから社会人にもならない間にこっちに来たらしいな。その割に歳はくっているようだが....なんだ封印でもされていたのか。馬鹿馬鹿しい。」

「まさか...お前も...」

「あ、勘違いしないように言っておくとこの情報はプレゼントなぞではないからな。」

魔力ボトル一本開封。

「生成魔法...油。」

「何する気だ?」

「見てればわかる。」

変態とその周りに油を撒く。ここの下は調理室なんだ.....これだけの爆発なら死なないかもしれないが時間的に絶賛稼働中だ。調理員さんはおらず、自動だから問題はない。そしてナイフと同じく常備(銃刀法違反だとか騒ぐ奴らはここが異世界だということを改めて認識してもらいたい)して持ってたマッチを擦って火をつける

「Oh!マッチファイヤー。」

「おいまさか...」

「御上のお手は煩わせないようにしておく。感謝しておけ。」

そう言ってからポイっと投げ捨てる。そして火柱が立つ。

「...ざけるなふざけるな!てめぇ呪ってやる。」

「その手で?」

「まだ口が...ギャー!」

「君の舌にナイフのプレゼント。じゃね。」

「あうあおいあういうあおうあ!」

「何言ってんのか分からないね。次また会えたならその時は滑舌を.....」

言っている途中に大爆発。

「たーまやー。」

さて、部屋に戻るか。






「貴族学校で火災...わぁ、一面記事だよライル。凄いねぇ。」

「当たり前だろ。王国の未来をつなぐ俺らなんだからな。」

「そういうものなのか。」

どちらかと言えば俺は破壊する側なんだけどさ。

「ん、そいつで活躍したのは神の騎士団のバードンさん...」

やはり有能な騎士だったか。優しさのあるあの.....良い青年。

「知ってるのか?」

「俺に聞き込みに来てた。」

「羨ましいな。時の人に会ったなんて。それでだ、カイル。」

「ん?」

「今度な。長期休みの最中に王国バトルトーナメントが開催されるんだよ。腕自慢の猛者が集まるんだ。」

「おいおいまさか...」

「いや、断っておくが俺は一緒に出ようなんて言わないぜ。」

「お、そうだよな。」

ため息をついたのも束の間、信じられない発言をライルが放った。

「カイル『が』出るんだよ。」

「は?」

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