第11話 夜の王都で悪魔は踊る その①
クローバー寮のある薄暗い一室、三人の少年少年達はそこだけ明るくなっている机の上に乗っている台をもう視線が熱すぎてその台もう直ぐ溶けるんじゃないのかと言うほどにその一点を見つめていた。
「さぁ...カイル...もう、逆転できないぞ...」
その中の男が言った。
「本当にそう思うかライル?」
もう一人の小柄の少年が言った
「...どういう事だ?」
「フッ.......」
少年が言った
「国士無双!」
「なっ.....」
一同啞然としている中、少年は言った。
「ロン。」
「「「くっそー!!」」」
少女は廊下の見回りをしていた。それが仕事であるのだが何よりも血筋が関係しているのだろうと少女は思っていた。誇らしいことだった。
少女の名はレシィ・フォン・クロリース。
一族は判事や騎士団団長を務めていたりと何かと「正義」を重んじる一族だった。弱き者には手を差し伸べ、強き者には立ち向かう。そういう一族だったのだ。そうしていると何やら叫び声が聞こえてきた。この時期になると浮かれてくる奴は多い傾向にある為中々骨が折れるようになってきている。厳重注意案件である。そう彼女は思いながら部屋の扉を開け、注意をしようとした。
「ちょっとあなた達何をして...ほえっ!?」
「やめ...やめ..ちょ...待って..」
「うるせぇ!有り金全部持ってきやがって明日までどうすんだよ!」
そこから見えたのは羽交い締めにされてる小柄な少年であった!完全に案件ものである。しかし小柄な少年はまだ戦うつもりの様であった。
「明日じゃねぇか!」
「カイル...」
「ん?何だ、ローザ..ウッ..」
「私の4000ルビー返せ!」
今度は腹パンである。少女はこの開幕早々のバイオレンスによって幾分か静寂の使徒となることになったのである。
「いや...公正なゲームで...」
「イカサマしてんだろ絶対に!ゲームの製作者だからちょちょいのチョイだろ!」
「してないしてない...」
少女は叫びの神のビンタを頬にくらってようやく金縛りから解けたらしくようやく注意の声を再度発することができた。
「ちょ、ちょっといい加減に...」
「あん?」
ローザという名の少女が睨みを利かせる。だが
「ってなんだレシィちゃんか。おらライル、離してあげなよ。」
「ちっ仕方ねぇな。」
ボンッと音が鳴って落とされた少年はしきりに文句を言っていた。
「ゲホッ..ゲホッ....あのなぁ公正なルールでやってたからな。」
「俺はイカサマされたことじゃなく有り金全部取られた事に怒っていんだぞカイル。」
「そりゃ賭けたお前が全部悪い。」
いつまでも続く気配のあった小競り合いをようやく止めたのはローザだった。
「はいはい喧嘩終わり。ごめんねレシィちゃん。」
そうローザが言ってくれたおかげでようやく男二名は静かになった。それに更に睨むローザの姿は女神を思わせるほど綺麗だと少女はその時感じた。だが彼女は直ぐに自分の役割を思い出し、ローザに聞いた。
「あの、何をしてたんです?」
「ゲームだよゲーム。」
「なんて言う?」
「なんて言うかって...カイルお前のゲームだろ。あとライル、今レシィちゃんいるんだからおとなしくしてろ。」
「はいはい。分かりましたよローザさん、おとなしくしてます。」
「女が居るからだな。」
「ウッセ。」
一触即発の空気だがローザは構わず続ける。よくある光景なのであろう。
「で、何だっけ?」
カイルと呼ばれた少年はさも面倒くさそうに質問に質問を返してきた。
「お前は爺さんかカイル、さっき金を私たちから金をむしり取ったあのゲームだよ。」
「あぁ、麻雀か。」
合点がいったようで笑みを浮かべた後に一瞬真顔に戻ってまた微笑むという器用な芸当をやってのけた。
「まぁじゃん?」
「ボードゲームだよ。」
「へぇ...自分で考えたんですか...凄いですね。」
「ありがとう。」
愛想のよくない人だなとレシィは思いつつも役目は役目なのだから相手の愛想とか好感度とかは関係ないと自分に言い聞かせた。
「あっ、でもお金を賭けるのはこれからはやめてくださいよ。今回のようなトラブルになる可能性が...」
「あぁ約束しよう。俺も懲り懲りだ。」
「ご協力をお願いします。カイルさんだけじゃなくてライルさんもローザさんもです。」
「「はーい。」」
「良く分かったみたいだから今回は反省文はなくていいでしょう。」
「「誠にありがとうございます!レシィ様!」」
ローザとライルが合唱する。
「恥ずかしいからやめてくださいよ。」
「さーせん。」
そう言ってイカサマだと言い出した男は笑った。
「そうは言っても楽しそうよレシィちゃん。」
「え、本当ですかローザさん!気を付けようかな...」
「感情もっと出して良いよ!ほら、笑顔可愛いし!」
「そぉですか?ありがとうございます。」
「うん、じゃね。」
「また今度!」
レシィはこの学校にはユーモアに富み、親切な人も多いのだなと思う一方、一部カイルさんみたいな人はいるのだなと感じ、それでも位は結構上のほうなのだったと思い出し肩を降ろした。カイルも位だけで実権なんてものもないが、一応准教授級ってことになっているのだ。
まったく災難だよ。麻雀教えてあげたのに不正を疑われてリンチされるとは。あの.....何だっけ。あの人が来てくれてほんと助かったよ。
「サイキ達に教えたら好評だったんだけどな...」
まぁそんなに上手くいかないか。今後の糧にしよう。そう思いながら意味もなく廊下を歩いていると
「おーいカイル。」
と声をかけられた。おそらくあいつだろうと振り向くとライルと少々大人びた少女が立っていた。いや、さっきの方が子供っぽかったのかもしれないのだが。いや脳内にしても失礼か。脳内で考えていることを読み取ったり感じ取ったりする魔法使いがいないことを切に願う。
「なんだライル、女なんか連れて。おっと恋愛相談は遠慮させていただくぜ。」
一応渾身のギャグだったのだが軽くスルーされあの神もどきの気持ちが少し分かったが彼は私の感傷など知りもしないので何事もないように続ける
「そういう関係じゃないよ...なりたいけど。」
「あの、何か言いました?」
「いいえ何も。あちらの男性がカイルです。」
隣の少女とライルが話し合っている。
「ん?どういう事だライル?俺にはまだ話が飲み込めないんだが。」
「俺も分からないんだよ。こちらの方...」
「リルゥ・グレイスと言います。」
「リルゥさんがお前に会いたいって言ってたからさ...」
「はい。お話ししてみたいなぁって。」
なんか...喋り方がふわふわしているな。この世界にもそういう人間はいるのだな。
「それじゃあカイルそういう事で。リルゥさん、また今度俺ともじっくりお話ししましょう。」
「はい、また今度。」
こっちを見ると
「では、私の部屋に。」
何でだろうか....とは思わない。入学してから色々有ったしな。ついていく途中に壁に貼ってあった校内新聞に目をやるとあるコラムの筆者の名前がリルゥ・グレイスだった。取材であろうか。
「こちらが私の部屋です。」
「片付いてますね。」
「ありがとうございます。でももう気づいておられるのでしょう。では...」
何を気づいてると言うんです?触れる間も無く彼女の雰囲気がどっと変わる。
「銀河帝国の現在の状況を報告させていただきます。
え?
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