第10話 決闘
はい、スタート。
「氷結魔法!アイスブレード!」
何かファ○ネルみたいな氷の棘飛ばしてきた。取り敢えず避けるまでもない弾速だな。ぶった切る。
「氷結魔法!アイスブレード!」
え、またか。ワンパターンだな。またぶった切る。
「氷結魔法!アイ...」
「待て。何回やるんだよ。」
は?って顔された.....ワンパターンだろこれ。見栄えあまり良くない.....まさか。まさかまさかこれのハメ技で負けなしだった.....?
「これが我が一族の戦い方.....」
華麗なるハメ技一族という事か。運営仕事しなされ。
「中々な戦い方だね。しかしだね.....もっとパパッと..というかそれ以前に剣を使いなさいよ!何が決闘だよ!そんなものなのかよ決闘は!」
うん、分かってるさ。負け惜しみみたいだろう。だがな、だがしかしな
「矢張りこの闘いには華がないんだ。」
つまらないよこれ。
「ならば貴様も自分自身のファイトスタイルを貫けばよかろう!」
自分自身のファイトスタイルねぇ.....誰もがあるものでもないだろうに。独創性が無い若者は多いんだよ昨今は.....あ、
「分かりました。」
持っている剣に魔力を込める。
「変形魔法、
まぁこれだな。数々の白兵戦(そんなにあったかは是非とも銀英伝を読者諸君には読んで確かめてもらいたい)を潜り抜いてきた武器、トマホーク!痺れるな。この武器は。
「ほう.....斤か....」
なんか感心してるな。いや.....どちらかと言えば憐れみの顔だな。
「斤では私に勝てんよ。」
なるほど。憐れみの顔で合っていたか。
「我が一族は元は斤使い、弱点も知り尽くしている.....」
「なるほど。」
どちらが先だったか。俺は先輩の肩を深く切り込んでいた。自身の勝利を確信してしまえば自然と油断が生じる。相手が圧倒的に強い場合は慢心を作り出させる。そこから強引にこちらにツキを持ってきて相手を強制的にターンエンドさせればいい。
「ガハッ。」
何だこれは。どう言う事だ。この私が攻撃を受けた。
「見切れなかった.....」
この少年、さっきまでと動きが天と地ほど違う。どうやら彼の実力を見誤っていたか。
「これが.....カイル君のファイトスタイルか.....」
「えぇまぁ。」
彼は真っすぐこちらの目を見てそう答えた。だが不思議な事に感情が全く読み取れない。ただ目的の為に動く為に邪魔になるであろう余計な感情を捨てたように。やれやれ、私はどうやら彼のスイッチを押してしまったようだ。
「まだ出来るでしょう先輩。」
彼は私に語り掛けるように言った。先程と違って、少し優しさのようなものが垣間見える。
「僕はまだこの闘いに意味を見出せていません。僕は無意味な闘いなどしたく無いんですよ。」
顔は笑っていた。
「.....よかろう、さぁ、こい!君の全力に真正面から答えてやる!」
「遠慮なく!」
彼が本当に何一つ躊躇いなく斤で切り掛かってくる。剣で受け止めようとしたが空いていた足で蹴りかかってきた。それを見切れずもろに左腕に喰らってしまった。この決闘ではもう使い物にならなそうだ。終わったら直ぐに
「ウグッ....」
なんとか意識を集中させて立ち上がると待ってたと言わんばかりに柄の部分で腹を殴られ、勢いに乗せられて校舎に激突した。
「ペッ....」
口に溜まった血を吐き捨て剣を持ち直す。でも支える手が震えていた。怖いのか?私は。特待生とはいえ一介の下級生が。でも彼から感じとれるのは特待生でも下級生でも斤使いの雰囲気ではなかった。
「玄人.....」
彼からは経験の差をとても感じる。動きが読まれているのだ。この少年には私は一体何年かかったら追いつけるのだろう。
「終わりですか?」
「あぁ、私の負けだ。地位と名誉....だったな。ライル君。」
「はっはい!そうです!」
審判の彼は興奮気味だった。私だってギャラリーだったらこんな戦い、とても興奮して野次だろうが声援だろうが飛ばしているであろう。それほど面白く、私にとって有意義な試合だった。
「そうか.....すぐにでも....」
「いいえ、大丈夫です。要りません。」
「....何故だ?受け取らないのは....」
「あ、いや、一種の煽りではありませんのでそこにはご安心を。特にあっても堅苦しそうなので。」
「そうか.....だが我が一族.....ひいては私も中々良い地位だが?中途半端な位でこそあればそれこそ妬まれるだろうがそれもなかろう。」
「だからですよ。」
「.....すまないが君の言う事は私には難しいよカイル君。」
「それもそうでしょう。私の平民での話です。基本平民というものは実力主義です。貴女の言う地位と名誉なんか我々にとっては虚構も虚構で腹の足しにもならない物なのですよ。」
「そうか.....済まなかったな。」
「貴女が謝る事はありませんよ。ただ僕の問題というだけなのです.....そうだ、この闘いを引き落としたライル。」
私を初めて勝負としても人間性としても負かした少年は友達の方を向くと
「あ.....いや.....まさか本気になるとは思わなくて.....だからさ.....」
「じきに先生がここへ来るだろうがこの決闘、無許可だろう?俺は君に乗せられただけだから責めは君だけが負ってくれ。ではライル君。よい放課後を。」
そう言いながら駆けて何処かへ行った。審判役を務めた友達は絶句していたが.....なるほど。私に近づく口実でカイル君と私を闘わせ自分は審判で苦労することなく私に認知されるという計画だったのだろう。まぁ自分がそういう目で見られる事も知らぬわけではないしそれを見抜けなかった私の落ち度もあるから今回は見逃してあげようライル君.....だったかな?
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