第9話 先輩
さて、入学式で大分やらかしたが、今は落ち着いてそれなりの学園生活を送れている。ウィディという転生者にも会えたし良い方向かは分かりはしないが悪い方向じゃないだろうから気楽に過ごさせてもらってますよ。授業にもついていけてるし万事問題無し。剣術はまぁ....うん、それなりだし大丈夫だ。
「はいはーい。授業始まるよー。座りましょうねー。男子!」
そんな注意を無視して話し続ける男子を女子が鉄拳制裁する。学生時代、親の顔より見たかもしれない光景だ。鉄拳じゃなくて鉄剣だけど。倫理観どうなっているんだこの世界の方々。
「はーい、授業始めんぞ。」
先生が来て、教室をぐるりと見てから所々にたんこぶのある男子生徒に気付くも何事もなかったかのように号令し、授業が始まる。
「今回はレイニング朝のライトニング・フォン・サーベル大王の時代について.......」
ここ最近の光景だ。正しく失われた青春時代を取り戻してるようだ。
「カイル!今日暇?」
そう話しかけてきたのは前の席のライル君だ。所謂陽キャと呼ばれる種族なのだと思う。明るくて人懐っこい性格だな。
「あぁ暇だけど。」
若者の言葉遣いというのも今現在研究中で中々に自然になってきたが矢張り難しい。
「ちょっと見学会行こうぜ!」
はて、何の見学会だ?
「部活だよ。部活!ナイスバディな先輩もいるだろうしさ。」
先程の訂正。陽キャ&チャラ男だ。
「あぁ、行った方が印象は良いだろうしな。行くか。」
サンキュー!という声を言ったかどちらが早かったか彼は荷物をまとめていた。そういや物に魔力通して自由自在に動かせるんだったな。床屋の爺さんと同じかね。
「カイルー。良い先輩いた?俺さぁ、あの先輩中々美形だと思うんだよね。」
そう言いながら指をさしたのは緑髪の美女だった。どっかのパンフに載ってたな。えーと確か名前は
「あぁ三年のサリィ先輩?」
「そうそう。ただあの人中々勝気の武闘派で今のとこ敵う同学年の男子生徒はいないらしいぜ。」
とんでもねぇ人だな。
「まぁでもカイル勝てるんじゃない。」
「無理だろ。」
「いいじゃんいいじゃん。やってみてよ。」
「あのなぁ...」
「サリィ先輩!」
ライルが叫ぶ。そしてその先輩が振り向く。
「このカイル君がお手合わせ願いたいと言っております!」
この馬鹿。
「ほう...この私と.....一年が...」
そうですそうです。三年生様が一年なんかと闘わなくていいです。僕も彼に勝手にベッドされているだけなのです。どちらかと言えばこの彼ライル君を裁いていただいた方がよろしいです。
「なるほど.....しかとその心意気受け取った!受けて立とう!」
何を感じ取ったんだあんた。べつに闘わなくていいよ!
「ではこのライルめが決闘を取り仕切ります。」
「うむ。公正な判断を期待している。」
そう言うとサリィ先輩は剣を構えた。
「ほれ、そなた...カイルだったな。君も構えよ!」
気が付くと続々とギャラリーが集まってきていた。ライルの奴わざと大きな声を出して集めやがったな。引くに引けないこの無駄なプライドを今すぐにでも捨てたい。できないけれども。
「では双方この決闘に賭けるものを。」
「地位と名誉。私はいつもそれを賭けている!」
何回も挑戦されてるんですものね先輩。ある意味不憫か。力を手に入れて挑戦され、それを倒しの繰り返し。それが力ある者の責任。まぁもっとも俺はそちら側に立った事が無いから知った口を利けないんだがな。
「サリィ先輩は地位と名誉っと....カイルは?」
「そうだな.....」
まずい。生憎賭けるものを持ち合わせていないぞ。
「悩んでいるようだなカイル君。ではすまないが私から提案させて頂く。退学....は少し重すぎるし仮にも君は特待生だからな。認められるかさえ怪しい。停学でどうだろう。」
先輩優し.....いや停学も優しくないけどこの前の私刑ボンボン野郎と比べればまだマシと思えてしまった自分が居た。一度地獄を見ると楽に見えるというあれだな。停学がマシと思うほど俺は今切羽詰まってるんだな。中々だな俺も。
「えー。サリィ先輩は地位と名誉。カイルは停学を賭けるで双方よろしいでしょうか。」
「「構わない」」
さてさて俺も抜刀の体勢にしないとな。
「双方合意の下に....決闘始め!」
ここにどちらも得をしない(特に俺の方に)決闘の火蓋が切って落とされた。売られた喧嘩を買う主義の人だったんだな。あまり好かないタイプだな。
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