第二章 王都 貴族学校編
第7話 貴族学校入学式
俺は今校門の前に立っている。何故かドでかい校門。どう考えても税金の無駄だと思うしかないこいつだが、平民が汗水たらして作った金でんなもんを建てちまうんだもんな。もっと内部をやるならまだしも.....いや、魔法で作ってるんだろうな。
「君が特待生なのか?」
校門に特に深い思いは無くが、まぁそれなりにはせていると年上の男の子が話しかけてきた。多分サイキより幼い。うん俺が飛び級してるんだから当たり前と言えば当たり前の事なのだが。
「はい。そうですよ。」
ここは慎重に言葉を選ぶべきだ。何せ俺は頭の良さだけで来てる認識になっているのだからな。まぁ魔力と魔法が力を握るこの世界で頭の良さは軽視されてるから相対的なものでこそあるが。やっぱり勉強は大切だね。
「あぁあの頭の良い.....」
うーん。とても気まずい。相手を傷つけないように努力しているのが伝わってくる。おい神。前世の会社の後輩が話してた「ちーとすきる」ってやつをくれ。たしか強いものなんだろ。それがあれば不自由しないで.....まぁしてないか。
「入学式の場所はこっちみたいだから行こうか。」
「はい。そうですね。」
敬語で接しとこう。入学式は平穏に終わるといいな。
「おい、ガリ勉。こっち来い。」
えー。なんということでしょう。入学式が終わった後、貴族のいいとこのボンボンにケンカを売られています。嘘だそんな事と叫んでやりたい気分であるがそうもいかないらしい。しかしそんなにイレギュラーな存在なのか俺は。嫌だよ喧嘩なんて。ほらね足腰から痛みが来る年齢.....いや若いからある程度は何とかなるか。ホルモンも沢山食っても胃もたれしづらいしな。でも穏便に済むなら多少の我慢は必要だ。世の理不尽には随分慣れているつもりだ。
「はい。分かりました。」
「ついてこい。」
言われた通りについて行くと中庭に出た。
「お前みたいな魔力が貧弱な奴がこの由緒ある貴族学校に入ることは許さん。この私が直々に刑を下してやろう。」
つまり気に入らないから俺は私刑に処されるわけか。うーんまぁそこまで間違ってる訳でもないか。実際ここに入学する大半は貴族の御子息様方で魔力も随分とおありになるのだろう。
「見ろっ!」
そうこう考えていたが言われて相手を見ると結構な量の魔力が体を覆っていた。
「特別に最高の状態を見せてやろう。これが俺の魔力だ!」
周りから歓声が上がる。そして彼は腰の剣に手をかける。臨戦態勢だな。そして周りを少し見ると、キャーキャー言ってる女子生徒もいる。分かりやすい奴らだ。
「行くぞ....奥義!『
抜刀し俺に切りかかる。いや突くが正しいかな。いやそれよりだっさ。名前だっさ。いやでも16とかそれくらいだったかな。じゃあそんなもんか。
「ふ....決まったな」
「勝手に殺すな。避けました。」
そんな技名くらってたまるか。俺は負けない。いいや負けたくない。残念ながらこのボンボン君には少し罰を喰らってもらう。つまるところこのボンボン野郎に何か致命傷を与えないといけないってことだけどな。やってやるさ。見ておれ年季.....いや経験にしよう。うん経験。そう、経験の差を!
「ふっ...所詮は悪足搔き.....一気に倒す。」
「まぁせいぜい頑張ってくれ。」
「何を言うか魔力のない身分いやしきものが...」
「.....魔力なんかより科学の方がいいと思うけどな。」
しっかしこいつにも腹が立ってきたな。自尊心の塊だぜこのボンボン。まぁそういう教育受けたんだろう。としたら無理もないか。被害者だな。こいつの私刑を喰らった者たちは浮かばれないな。
「
避ける。
「避けたか.....
また避ける。
「またしても避けるか!
またまた避ける。
「何回も避けるな。私を恐れているのか?」
「....」
笑いが広がる。ほら、やっぱり弱いじゃないかって感じの。違う違うそんなんじゃないよ。俺はたしかに魔力少ないからお前に勝つには攻撃を避けつつ会心の一撃を食らわせるしかないってことだ....こんな戦場の駆け引きもわからないほど腐敗してるのか貴族社会は。そういや帝国貴族も末期はこんなもんだったな。いやでも相手は子供だしな。しゃあないしゃあない。
「これで最後だ...
「黙れ。」
まぁこいつもメルカッツ提督の表現を借りると精神的な病気にかかってるんだろうしな。せめて楽に無駄なプライドを打ち砕いてやろう。これも情けさ。
「そういや君に一つ昔話をしてあげよう。古代の英雄に限界を超えた魔力濃度を操るものが居たようだ...」
「いきなり何の話をしているんだ?逃げすぎて頭が馬鹿になったか?」
「もしかしたら気付かないだけでなってるかもしれんな。続けるが魔力の限界濃度は決まっている。今お前がまとっている魔力の濃度は限界を10として9程度だ。凄い濃度だ。遺伝だとしてもよく腐らせずに鍛え上げたものだ。そこは敬意を示そう。それで、俺は0.1だな。このままでは俺はどう頑張っても勝てはしない。ならば....」
俺は右手に体のありったけの魔力を集中させる。
「俺もその限界を超えるまでだ。」
次の瞬間俺の右手が白い炎に包まれた。
「魔力の色は様々だが純粋な魔力は黒だ。それが限界を超えて白くなったんだな。もっとも深くは俺も分からん。誰かギャラリーで学者を目指している生徒が居たら是非ともこの後このメカニズムについて深くご教授願いたい。」
周りは驚愕の表情を浮かべる。
「そ、そんなことが...」
「嘘..だろ....」
うーんこれ戦略というよりゴリ押しだな。全く不甲斐無い。えー、ではここで少し説明しておこう。何故俺が限界を超えた魔力が使えるのか。答え。集中力。噓だろおいって思う人もいるかしれないが事実そうなんだ。銀英伝を一気読みすることによって集中力(あと速読)が身に付いた。それと集めてからなんとなーくびくって感覚が来たら少し力を抜くってのもポイントだ。つまるところ、やろうとした奴は力を込めすぎていつまでもできないって事だったわけさ。案外楽にできんだぜこれが。あと体が耐えられるのかという問題だが魔力がほぼない状態で生まれてんだから体は強い.....関係ないかなこれは。
「クソがぁぁぁあああああああああ!
あ、説明途中に来た。お前さ、戦隊ヒーローが口上を長々と述べてる時には怪人は襲わないって事知らないのかい?さて、呼吸を整え剣を狙う。それじゃあなぞらしていただきまして。
「.....
「なっ.....」
相手は折れた剣を持って絶句する。
「剣っつうもんな横からの力に弱いもんだ!」
殴り折った勢いに身を任せ空いていた左手で顔面にジャブをかける。
「さぁて、坊主こっからが本番だ。準備は良いかい?」
顔を殴られ慌てふためく相手の背に回り相手の両手をつかみジャンプし頭部を蹴って相手を倒す.....これが本当の喧嘩さ。多分。
「最悪武器なんぞ使わなくとも勝てんだよ。」
辺りは静まり返った。経験値は貯めときなさい。これで少しは溜まったかな。
「お...思いあがるなよ....お前は...俺...私に対して...紙一重で勝ったんだぞ....これは事実だ....」
紙一重か。
「あぁそうだな。もしかするとあるいはそうかもしれない。お前は俺に紙一重で勝った。言い得て妙だが。」
少しかっこつけたい事もあって間をほんの少し開ける。
「それが俺とお前の差なんだ。」
「な.....」
「その紙一重とやらに甘えていろ。お前が『敗北した』という事実を認めずにな。」
「.....」
さてどうしようか。俺はボンボン野郎の骨を多分折った。うん、骨を折った。これは変えられようのない事実だ。だが折った相手がいけない。なかなかどうして貴族のボンボンだ。もしかしなくても俺、退学になるのでは?
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