第5話 戦争
シェーンコップは薔薇の騎士連隊の構成員と一緒に支給された武器と防具の装着をしながら一人考えていた。なぜこのタイミングで戦うのかを。
高級なソファーに座りながら優雅に紅茶を飲む。なかなかカイザーと言うものも良いものだな。しかし
「閣下。」
3歩後ろに控えていたサイキが俺のことを呼んできた。俺のことを立てる為にに控えてるんだろう。やっぱいい部下。
「うむ、なんだね。」
「はい。現在動員可能な人数6000人の準備が整いました。」
「ふむ、では出撃と洒落込もうか。」
「はい。全軍に指令します。」
「そしてだサイキ、この帝国の名は?」
「最初に出会ったとき、『銀河帝国だよなぁ...』とおっしゃってましたので銀河帝国にしていますが....」
サイキが少し不思議そうに俺の顔を数秒見て無礼とでも思ったのだろう。一瞬で姿勢を正した。あぁ俺そんなこと言ってたのね。ふーん。
俺は残っていた紅茶をすすった。少し残したほうが余裕があるように見えたかな?
「撃て!」
我ら銀河帝国の攻撃で戦いの火蓋は切って落とされた。戦場となったのは王都郊外の山。ここが敵組織の本拠地で山が天然の要塞となっていて非常に厄介だ。なので飛行機を使い空中から爆撃、一斉掃射を行う。おいおいゴリ押しじゃねえかと突っ込む人もいるだろうが戦略的条件も満たしていれば小手先の戦術など必要ない!この場合は戦術などアフタヌーンティー程度だ。(暴論)
「しかしこのままいけば倒せるでしょうな。」
サイキがそう言う。うんうんその通りだ。
「そうだなサイキ。まぁいささか芸がないがこの様に戦略的優位にあれば小手先の戦術などいらぬ。しかし....」
まぁやっぱつまんないよね。しゃあないしゃあない。
サイキはカイザーが「しかし....」といった後何も言わずに紅茶を飲んでいることに疑問に思っていた。サイキには何が続くのかなどわからない。カイザーはいつも頭の中で非常に高度な戦術を考えているのであろうから。そうこうしていると敵が打って出てきた。ほぼ自暴自棄のようだ。サイキが陸戦部隊の出撃を進言するとカイザーは無言で頷いた。
「サイキよ.....」
カイザーが私の名を呼んできた。
「はい、何でしょうか。」
「気付かないか?」
カイザーは何かに気付いたのか!?
「いえ、気付かないです....」
「ふむ....」
私はカイザーを失望させてしまった。面目ない。
「サイキ、敵の動きを観察してみよ。」
カイザーはチャンスを与えてくださった。ならば応えなくては。
「私には自暴自棄のように見えますが。」
「サイキ、私は『観察してみよ』といったはずだが?」
カイザーの少し怒気を含んだ声が聞こえた。私は何を間違えた?
「すいません.....」
「そう謝るなサイキ、君のしたことはただ見ていただけだ。観察していることとのその差は火を見るよりも明らかだ。」
「はい...肝に銘じておきます。」
「うむ....」
また黙り込んでしまった。これ以上失望させないためにもしっかり観察しなければ!
敵の動きは自暴自棄.....うん?少しおかしい。自暴自棄にしては統率性がある。じゃあある程度の策でもあるのか。だから味方が中々攻めあぐねる事が出来ないのだ。自暴自棄だからといって片づけていた敵兵の顔も何か活気に満ち溢れている。敵の進軍方向は地雷原があった場所.....ここまで来たとき私は思わず声をあげてしまった。敵は山の上から攻めてくる。古来からの戦術の定石だ。そういや足を必要に狙っている。足を怪我すれば後方に倒れこむ.....まさかカイザーはここまで見通して.....
「気付いたかサイキ、敵には中々知恵のある軍師がいる。我々を罠にかけるつもりだったらしい。」
あぁ自分はなんと愚かなのだろう。先入観からすべての可能性を捨ててしまっていた。一回先入観を捨てて観察する事で敵の動きに気付くとは!凄いお方だ。
「そのようですね。」
「うむ、だが所詮は悪知恵だ。」
カイザーは椅子から立ち上がると全軍に通達した。
「下に手榴弾を投げ込め」と。
軍師いたのか。サイキと話してて分かったわ。少し圧迫面接ぽかったけど後で謝ればいいかな。でもこんな子供騙しの策が成功するか。
「あ。」
イゼルローンの時みたいにすればいいのか。とすると今戦ってる敵部隊を引き付けるか。そのうちに入ればいい。シェーンコップが敵組織から亡命するときに何らかの敵組織印の移動手段を持ってきてると楽なんだが。
「シェーンコップを呼べ。」
サイキにそう言うと少ししてシェーンコップがやって来た。
「はい。何でしょう。」
「卿が亡命した際に何らかの移動手段を使ったか?」
「はい。馬車を。」
馬車!そんなんで!ってここ異世界だったか。出来ればもう少し近代的な異世界が良かったけど。飛行機とガトリングがあるだけましか。
「それと軍服は今あるか?」
「はい。少し壊れていますが。」
「サイキ、敵部隊の状況はどうだ。」
「はい。馬車等を使い我々部隊を追撃しています。」
「じゃあローゼンリッターを要塞に送り込むか。」
「!!」
二人に驚きの表情が広がる。そらそうか。それなりに考えたら無謀な作戦よ。でも成功すれば味方の血が少なくすむ。
「あぁ、変装させて送り込むんだ。少し壊れた馬車とともに軍服を着た者が来れば味方と思うだろう。何か重大な情報を手に入れた。まぁ想像を絶する新兵器とでも言っておけ。それを言って指令室に通してもらってだな。あぁ、サイキ。前に言っていたものを。」
「はい、こちらでございます。」
以前に少数製造するよう言っておいたガトリング砲からの改良を加えて自動小銃としたもの。まだまだ一般兵でも使える操作性ではないらしいがエースはそれなりに使えるらしい。
「シェーンコップ、こいつで撃って司令室でも撃っておけば降伏するだろう。命が惜しい奴らだ。でわれらの部隊に食いついてた敵部隊は一気に包囲殲滅するからその心配はいらん。じゃあシェーンコップ、やってくれるか?」
「は、はい!至急出撃させます!」
これでうまくいくといいんだけどな。うまくいかなくても許してやるからさ。
.....作戦は何故か成功した。おいおいちょろすぎだろ。これが組織の腐敗か。敵ながら同情させてもらうわ。まぁ成功した要因を聞いてみるとシェーンコップは
「カイザーから『敵に理性を取り戻させないことが大切だ』とおっしゃってましたからそれを実行したまでです。」
つまりずっと煽ってたわけね。世界一姑息で有効な手段だな煽るって。
「聞くが要塞にいた敵兵は?」
「抵抗したんで要塞のシステムで皆殺しにしました。」
そう笑顔で報告してきた。怖い部下を持ったものだ。敵に回したくないものだ。しかも笑顔で報告してきたよ。サイコパスなのだろうか。
「まぁまずまずの結果だ。」
途轍もなく良い結果だけどな。
「有難うございます。」
「うむ。サイキ。」
呼ぶとすぐに来た。
「はい。何でしょうか。」
「私は家に帰らせてもらう。母上が心配するのでな。それとこの要塞だがイゼルローンとなずけよ。前の名前の...」
「ダブルウイングと同じじゃ兵士の士気にも関わりますしね。」
「そうだな。」
ダブルウイングとか中二病なのか。いや、もしかしてこれが普通なのかな。
「サイキ、あとは任せたぞ。」
「了解しました。」
さて、めんどくさい後処理から逃げよう。
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