第一章 不本意なる転生

第2話 二度目の誕生

気が付いた時には産声を上げていた。そう、まさしく二度目の誕生である。周囲には安心している人々が見える。まぁ、無事に赤ん坊が生まれたんだしそりゃそうか。父親らしき影は.....いないんだな。仕事だろうか。駆けつけろよ。

「しっかしあれすね。カレンさんのお子さんはなんだかこうあの利口な顔をしてますね。」

「そうですね。おとなしそうだ。」

青年の言ったことに大人たちは次々と納得する。指示語が多いことはおいておこう。でも確かに曲がりなりにも46まで生きてたわけだし利口そうな顔じゃないと俺は神を軽蔑するだろうな。いや、もうしてるか。こうして俺は誕生したわけだが大人たちの会話を聞いていて多少はこの世界と俺の生まれた一族のことが分かった。

まずこの世界には魔力が存在する。異世界って言ってんだからある程度予想はしていたがほんとにあった。次にこの一族についてだ。中流階級の平民でそれほど貧しくない。まぁ、中流だしな。家名はサイサルセッチュー。そして俺の名前はカイルらしい。ミドルネームはサス。だからカイル・サス・サイサルセッチューとなるわけだ。無駄に長い名前だな。まぁ、あんまり不自由はしないだろうし普通に生きようかな。




「母さん。ただいま。」

母がキッチンから出てくる。

「あぁ、カイル今日は...」

「分かってる。髪切りに行くんでしょ。」

「そっ。ちゃんと覚えてたのね。えらいえらい。」

「いやさすがに10歳だからさ。」

「それもそうね。はいはいお金。」

母はそう言い僕の手に代金を置いた。

「ひとりで行ける?」

「もちろん。いつも通りね。」

俺がそう答えると母はにっこりと笑いまたキッチンに戻った。10の息子に一人で髪を切りに行かせることに疑問を持つ方もいるだろう。でも俺は前世の記憶を持って生まれてきたことを負債のように思っている。だからこそ少しでも楽をさせてあげたいから7歳のころからほとんどのことは自分でやってきた。


「おぉ、いらっしゃい。カイル君。」

「おじさん、こんにちは!」

いつもの散髪屋にきた。ここに来るのはおじいさん、おばあさんが大半の昔ながらの店だ。年齢層が高齢だからいつも行くと利口な孫を見るような優しい視線に包まれる。中年にもなってこんな経験はしないだろうと思っていたが異世界に来て嬉しいこともあるもんだ。

「じゃあカイル君はいつも通りかな?」

「うん。いつも通りでお願いします。」

手順は元の世界と似ているが違うのは『鋏を持たずに』髪を切るということだ。鋏に魔力を込め、操作する。ここのおじさんはなかなかの手慣れで同時に複数の鋏を操る。よって短時間で切れる。町の人の話からも中々凄いおじさんだ。

「さぁカイル、どうかな。」

「うん、とってもいいよ。ありがとう。」

俺はそう言い、お金を置いて店を出た。疑問を持った人もいるだろう。「異世界なのに魔力以外普通やん。」って。確かにそうだがここの町は元の世界にいたとき仕事で行ったイギリスののどかな田舎町って感じで空気も澄んでてとても良い。そんなことを考えていると前に人影が現れぶつかりそうになった。集中しとかないとな。

「あっすいま....」

言い終える前に腹を殴られた。少年を襲うそういう趣向の方か?

「よし、ガキは眠った。早くいくぞ。」

あ、これ誘拐だ。

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