第1章 第28話 大きさより形派です!でもちいさすぎるのは……

 「ばか」


 見えなくなった遥の背中を追うようにゆっくりと俺は夜道を歩いていた。

 田舎の夜道なんて街灯はあれどかなり暗い。

 知っている道が知らないような気さえする。

 静かな住宅街はどこも同じような感じでまるで迷路になっている。はじめてくる人なら間違いなく迷ってしまうだろう。


 ピロン


 ポケットの中で俺を呼ぶスマホを付けると、


(大輝が海原雄志をグループに招待しました)


 と通知来ていた。

 お、おれグループなんて参加したことないぞ?

 っていうか都市伝説だと思ってたんだけどほんとにあるんだ……。

 とりあえず参加っと。


 (おー雄志!よろしく」)


 バスケットボールを持ったガタイのいい男の子のアイコン、大輝だ。


 (雄志って遥のNineしってる?しってたら招待してほしい!)


 あぁ確かに遥は人にあまり教えないからしらないか。

 嫌だな。

 なにかわからないけど嫌だ。もやもやとくろいものが胸の中に広がる。

 けど、そうも言ってられないか。


 (うん。了解)


 俺は遥のNineをグループに招待した。

 紗季や良太たちもグループに参加して3人が話し出す。

 既読4となっているから風香も見ているのだろう。

 いつもとおんなじだ。3人がはしゃいているのを2人で見つめる。

 小さな声で風香と話してくすくすと笑う。

 グループNineだからそれはできないけど画面の向こうで風香も笑っている気がする。

 俺はスマホをポケットに戻し月が照らす光をなぞるようにただまっすぐ家に帰った。


 ――――――――――


 「ただいまー」

 「おかえりなさい。ご飯すぐできるわよ」

 「はーい」


 私、新見遥が家に入るといいにおいが漂ってきた。

 今日のご飯は何だろう。焼き魚のようなにおいがする。

 自分の部屋に戻り荷物を置いてベッドに横たわる。

 

 「遥、ありがとな」


 つきさっき言われた雄志の言葉が離れない。たぶんこの言葉が全部なんだと思う。

 もうないはずの手のぬくもりがまだ頭に残っている。

 ほんとずるいよ、雄志は。

 ポケットから取り出してスマホを確認すると雄志からグループに誘われていた。

 紗季ちゃんたちのグループなら入ろう。

 

 (遥だよ。よろしくね。みんなのNine追加してもいい?)

 

 すぐにみんなからいいよーと返信が来る。

 そうだ。紗季ちゃんと風香ちゃんと私のグループを作って今度水着買いに行く相談でもしよう。

 ふふっ

 紗季ちゃんらしい。すごくかわいい女の子なのにアイコンお肉って。

 風香ちゃんはこの猫ちゃんかな?かわいい。

 二人を選択してグループに招待する。


 (おおー遥!)

 (遥ちゃん)


 すぐに参加してくれた。


 (二人ともありがとね。今度水着一緒に買いに行くの相談したいなって)

 (お!そうだな!いこうぜ)

 (私、水着なんて買ったことなくて……)

 (風香ちゃん買ったことないの?海とか行かない?)

 (行ったことないかも)

 (そっかそっかー。ならめっちゃ可愛いの選ぼうね?)

 (う、うん)


 風香ちゃんの水着姿とか女の私でも見たい。

 ん?まてよ?紗季ちゃんも水着なんだよね?

 すっと私は目線を下げる。

 ないことはないけど多分平均よりすこしちっちゃいぐらいの胸をみてため息が漏れる。

 絶対雄志大きいの好きだよね。推してるアイドルとかアニメキャラ大きいし!

 だって私だっていろいろ頑張ったよ?でも成長しないんだもん。

 普通の女子高生よりちょっと小さいけどさ自分でいうのもなんだけど私スタイルはいい方だともうよ?足とか結構自信あるし。

 風香ちゃんってどうなんだろ。でも小さくはなさそうなんだよなぁ。


 「遥~なにしてるの?ごはんよ」


 お母さんがキッチンから呼んでいる。

 豆乳とかいいらしいしちょっと頑張ってみるしかないよね。


 「はーい。すぐいく!ご飯は少なめでおねがい!」








 

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