第1章 第22話 「女の子はめんどくさいけどめんどくさいっていっちゃだなんだよ」

 「「おはようございます」」


 眠たさと少しの緊張が混じった俺の声と落ち着いた女の子らしい遥の声が生徒会室に響く。


 「まだ、来ていないみたいだね」

 

 すこし俺たちが早かったのか望先輩たちはまだ生徒会室にはいないようだった。

 朝の挨拶は元気よくと昔から言われたが俺には難しい。だって眠いし、俺自身逆に言われたらうざいもん。

 

 「俺、ここの席で良いかな?」

 「うん。先輩たちが使ってるところ意外なら多分大丈夫」


 大きめの1つと長机とパイプ椅子が7個並んでいるなか俺は遥の目の前の下手側に座った。

 

 「それにしても緊張した~」


 学校では珍しく気の抜けた声がはるかから漏れる。


 「何が緊張するんだよ」

 「いやだって、視線集まりすぎだからね」

 「それはあなたのせいだろ?」

 

 遥は学校でも有名な美少女だし普通にアイドルっていわれても納得するほどにかわいい。

 街ですれ違ったら二度見するぐらいには。絶対に直接言えないし言ってもなんか殴られそうだけど。


 「いや、雄志のせいでもあるでしょ。一応ビジュはいいし」

 「ビジュとかいうな」

 「ならオタクって言おうか?」

 「それのほうが落ち着く」

 「なんで」


 と、まあふざけてはいるが本当に街ゆく男性の目線で多分数十回は殺された。通学ラッシュのピークに重ならなくてよかったほんとに。多分、トラックにはねられて転生して異世界最強みたいな話になっちゃう。


 「でも、あんまり学校の人いなくてよかったね」

 「それは、私と一緒に歩いているのが見られたくないってこと?」

 「違うって!その、遥と一緒に歩いているの見られてもし変な噂立ったら迷惑かけちゃうじゃんん」

 「変な噂って?」


 こいつ絶対わかってるじゃん。超にやにやしてるし。


 「遥に迷惑かかること」

 「そんな風に雄志は思ってたんだ」

 「いや、だって……。なんていえばいいんだよ」

 「私めんどくさい女だね」

 「う、うん」

 「あーめんどくさいって言われた。結構傷つく」

 「自分で言ったじゃん」

 「女の子はめんどくさいけどめんどくさいっていっちゃだなんだよ」

 「わからねぇ」


 そういいながらもくすくすと笑っているので怒ってはいないらしい。


 「あ、あのぉ~そろそろ私はいってもいい?」

 「「渚先輩!?」」


 いつもとは違い申し訳なさそうにドアの隙間から先輩が俺たちを覗き見ている。


 「そんな二人でいちゃついていたらさすがの私でも入りにくいよ~」

 「い、いちゃついてなんてないですよ!」

 「いや、今のはもういい感じだったよ?」

 「渚先輩、いいいですから早く仕事してください」

 「遥ちゃん目がこわい~。わかった。ごめん、ごめんって」

 

 遥が束になった書類を先輩に押し付けるとその長い髪をポニーテールにまとめて仕事にかかりだす。

 見た目は、陽キャというかギャルのようだが仕事はできるんだよなこの先輩。あと、ポニーテールがすごく似合ってる。すこし高めのポニーテールがグッド!


 「望先輩はまだ来られていなんですかね?」

 「望?望なら多分学校来てるよ。教室に鞄あったし」

 「そうですか。どこかで用事されているんですかね」

 「たぶんね。明日で1学期終わりだし、二学期は体育祭も文化祭もあるからその関係で先生といるのかも」

 「なるほど」


 やっぱり生徒会長となると先生方と話すべきことがたくさんあるのだろう。昨日も先生となにか話していたし。

 30分ほどもくもくと仕事した後、ひとしきりついたのか遥がそういえば、と話し始めた。

 

 「たしか9月に体育祭で11月に文化祭でしたよね?なにか決まっているんですか?」

 「体育祭は今日、明日に応援団のメンバーだけ決めるらしいけどまだそれすら決まってないからまだなんにも決まってないんだよ~。まあ、競技とかは毎年あんまり変わんないけどね」

 「そういえばうちの学校って高2が体育祭も文化祭も主体となってやるんですよね?先輩方はなにかやられるんですか?」

 「んーどうだろ。文化祭はクラスの手伝いぐらいはするかもしれないけど体育祭は運営だから応援団とか入れないかな」

 「先輩の踊りとか見たいです!」

 「遥ちゃんとゆうくんと望とうちでなんかやる?生徒会の出し物みたいな」

 「え、いいですね!生徒会の人気向上にもいいかもです」

 「さすが遥ちゃん、抜け目ないね~」

 「なら文化祭の自由発表のステージとかどうです?」

 「それだ!じゃああとで望にも相談してみるよ」

 「「はい!」」


 ギャルで陽キャっぽくてなんかにがて意識あったけどやっぱ渚先輩いい人だよね。

 俺が言うのもなんだけどやっぱり人は見た目で判断したらだめだな。

 そんなことより、え?先輩たちと遥の踊り見れちゃうの?ご褒美ですか?

 まだどうなるかわかんないけどもし叶ったらめちゃくちゃ最高じゃん。

 望先輩も遥も学校では3大お姫さまって言われるぐらいかわいいし渚先輩も正直めっちゃかわいい。

 しかも練習とかなったら3人の体操服姿見れるんだよね?ありがとうごさいます。ほんとに。


 「どうしたの?ゆうくん」

 「な、なんでもないです」

 「雄志また変な妄想してたでしょ」

 「えーゆうくんなになに」

 「なんでもないですって!」


 遥さん洞察力高すぎでは?たぶん俺にやにやはしてたけどそんなにわかりやすかったですか?

 よし、無心にして仕事しよう。心は無。奇数でも数えようかな。


 「もう時間も時間だからみんな教室もどろっか」

 「はい」「了解です」


 朝礼まで15分を切っていたので俺たちは片づけを始める。


 「ごめん!わたしそういえば先生に呼ばれてたんだった!あと、任せていい?」

 「大丈夫ですよー。やっときます」

 「ごめん、ありがと。また放課後にね。おつ!」

 「「お疲れ様です」」


 そういうと渚先輩は走って自分の教室のほうに行ってしまった。


 「私も片付け終わったから先行くね」

 「あ、まってよ。俺も行く」

 「でも私と一緒に居たら噂が出るんでしょ」

 「いやだからさ、俺はいいけどさ遥に迷惑かけるじゃん」

 「はいはい。じゃあね、また放課後」

 「うん。おつかれさま」


 足音が小さくなっていく。

 クソッ!

 なんていうのが正解なんだよ。

 だって、もし本当の海原雄志がばれたら遥の築き上げてきたものに傷をつけるじゃん。

 おれだってもっと遥と一緒にいたいけど最近すこし話し始めただけでそういう噂ちらほらと聞くようになったのにさ。

 多分遥は俺に言わないだけでめっちゃモテて告白もされているからもし本当に彼氏とかできたらそいつにも迷惑かかるしさ。


 バタバタバタ

 ドン!


 すごい足音とともに遥が勢いよくドアをあける。


 「遥?」

 「迷惑じゃないから」


 ドン!

 バタバタバタ


 夏休みまであとすこし、浮ついた学校と流れゆく雲の中俺はただ茫然と立ち尽くした。

 

 

 

 


 

 






 



 

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