第1章 第20話 夏の予定と幼馴染

 夏休みまであとすこしということもあってだろうか、学校中が浮足立っているのが肌に伝わってくる。

 海に行こうとか、プールに行こうとか夏祭り、花火大会に行こうとかたくさんの声が聞こえる。今までの俺、海原雄志ならまったく縁のない話だ。

 もちろん誘われないわけではないけど、人見知り過ぎてしゃべれない俺は、

 

 「海原君、夏休みいっしょに遊ぼう?」


 って言わてもなにもこたえられずに逃げるだけだった。

 だけど、今年の俺は違うぞ?風香や篠原さん、獅子原君、三木君と仲良くなったからな。夏休みの予定は埋まること間違いなしだろう。

 そんなことを考えながら俺は教室のドアをあける。


 「おはよう」

 「おお、海原おはよう!」「雄志君おはよう」


 篠原さんと風香が手をふってくれた。風香とはきのうの通話ぶりだ。

 獅子原君は朝練だろうけど三木君はどうしたんだろう。


 「おはよう、二人とも。三木君はまだ?」

 「良太か?良太ならまだきてねーな」

 「そっか、珍しいね」

 「今さ松原さんと話てたんだけど海原夏休みなんか予定ある?」

 「俺?基本的には無いな」

 「ならよかった!そしたらさ、一緒に私らと海行かね?」

 「ふぇ!?」

 「なんだよ、その声」


 俺の腑抜けた声に篠原さんがけらけらと笑って風香もくすくすと笑っている。


 「なんでもないし。でもおれ海なんか行ったことないよ?」

 「え、海原かなづち?」

 「ちげーよ、基本的なやつは泳げるわ」

 「なら一緒に行こうぜ?」

 「いーよ。獅子原君と三木君もいるでしょ?」

 「もちろん」

 「松原さん、一緒に水着買いにいこうぜ」

 「うん」

 

 風香の水着?風香すっごいスタイルいいしスレンダーな女の子だから絶対清楚系の水着似合う。

 白とかどうだろう?うん、すごくいい。想像しただけだけど満点だ。


 「海原、何を想像しているんだ?」

 「はい!?」

 「いや、さっきからにやにやが止まってねーぞ?」

 「雄志君……」

 「風香引かないで!?」

 「松原さんの水着でも想像したんだろ?気持ちはわかるがやめとけ」

 「そ、想像したけどさぁ。でも、篠原さんも絶対水着姿かわいいじゃん」

 「はい!?」

 「いやだって、風香も篠原さんその……かわいいじゃん」


 暑い。冷房ガンガン効いてるはずなのに暑い。


 「お、お世辞はほどほどにしとけ!松原さんトイレいこ!」

 「う、うん」


 篠原さんが風香の手を引いて教室から出ていく。


 「お世辞じゃないんだけどなぁ」

 「雄志ってそういうところあるよね」

 「はる……新見さん?っておい名前!」


 いつから聞いていたのか遥が1つ机をはさんでしゃべりかけてくる。

 俺と遥は学校ではただの友達ってことにしているのでお互い苗字で呼んでいる。


 「まだそんなに人いないしいいじゃん」

 「それでもだよ」

 「しかたないなぁ」

 「で、俺にどんなところがあるんだよ」

 「いやぁ雄志って自分のことわかってないなって」

 「どゆこと?」

 「そういうところだよ」

 「おいまてよ」

 「あ、放課後生徒会でね」

 「お、おう」


 それだけいって遥も教室から出ていった。ちょっと機嫌悪い感じしたけどなにか俺しました?

 遥は笑っていても怒ったり悲しんでいるときもあるから正直わかりにくい。


 「おはよ、海原君」

 「おお三木君、おはよ」

 「今一人?」

 「うん、風香も篠原さんもお手洗い行ってる」

 「そっか」

 「ねえ、単刀直入に聞いていい?」

 「うん、松原さんのこと好き?」

 「へ?」

 「だって松原さんとすごく仲いいじゃん、しかも名前呼び出し」

 「いやそれは幼馴染だから……」

 「で、好きなの?」

 「嫌いではないかな」


 遥の顔がちらつき好きって言うことはできない。いまの俺があるのは遥のおかげだから遥を裏切ることはできない。


 「そっか」

 「よお~、良太、海原」

 「獅子原君おはよ」「大輝おはよう」


 獅子原君がミントのような香りとともにやってくる。朝練終わりの体育会系男子って感じ。これで超優しんだから俺が女の子なら惚れてる。


 「おぉ、大輝おは」「獅子原君、おはよう」


 篠原さんと風香も帰ってきていつメンが集合した。それから夏休みのことを話しあったあと担任が入ってきたので俺たちは解散した。



 「つかれた~」

 「おつかれさま、雄志君」

 「風香もおつかれさま」


 授業が終わったというのに夏の太陽はまだ高いところにある。


 「風香昨日ありがとね、通話」

 「ううん、こっちこそありがと」

 「なんで風香がお礼いうんだよ~」

 「なんでもだよ」

 「ええー?」

 

 くつくつと笑っている風香はドキッとするほどにかわいい。座っていると同じ目線になるからか目が無意識的に合うのもよくない。


 「夏休み楽しみだね」

 「うん、楽しみ」


 獅子原君たちと決めた予定が何個か入ってまじで楽しだしなにより風香と休日に会えるのがすごく楽しみ。


 「ねえ、雄志君?」

 「ん?」

 「もしよかったら、その、みんなで遊ぶ以外に……二人で……」

 「え、ふ、二人?」

 「ご、ごめん。いやだよね。ごめんね」

 「ちがうちがう!嫌じゃない!全然いいよ」

 「本当だよ」

 「そっか、うれしい」


 太陽のせいかすこし赤く染まったような風香がさらにいつもよりかわいく見せる。


 「ごめん、松原さん」

 「はる……新見さん!?」「新見さん?」


 急に話かけてきた遥に俺と風香は目をまんまるく見開いた。


 「海原君このあと私と用事あって。だから海原君借りていいかな?」

 「え、あ、うん。雄志君は私のじゃないし……」

 「うん、ありがとね」


 美少女二人がいや、ほとんど遥が圧倒的な威圧を出している。

 まじで遥さん怖いですよ?ほんとに、それやられた方泣きますよ?

 ってかなんでそんなに怒っているんですか……。


 「じゃあ、借りるね」


 そう言った遥に俺は連れられて教室を後にした。


 




 

 


 


 

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