第1章 第12話 それは反則だよ・・・・
どれぐらいたっただろうか。
完全に閉め切っているはずなのにミンミンと夏の音が迷い込んでいる。
大本さんたちが去った後、風香は俺、海原雄志の胸で泣いている。
いや、もう泣き止んでるのかもしれない。
自分の泣いた顔なんてみられるの嫌だもんなぁ。
でもこれどうしたらいいの?というかさっき俺恥ずかしいこと言ってたよね。
まさか嫌われた……?
でも雄志君って呼ばれるようになったから嫌われてはないのかな。
ドクドク――ドクドク
風香の心臓の音が伝わってくる。いや、俺の心臓の音?
というか、風香当たってるだけど……。
あんまり意識しないようにしてたけど結構風香のおっ、胸大きい……?
だめだめだ。信頼してくれてるのにそんなこと考えるなんてだめだ。
「ゆ、雄志君?」
「風香……。大丈夫?」
「う、うん。でもそ、その手というか腕が……」
ん?うで……?って!俺いつの間にか抱きしめてるじゃん!最初は頭よしよししてたはずだよね?いつの間に俺そんなに大胆になったの?
「ご、ごめん。ほんとごめん」
俺はすぐに腕を離す。
「い、いや大丈夫だよ」
「いや、でもごめんって」
「そんなに謝らなくても……」
なにか言葉が続いた気がしたが自分の心臓の音で聞こえない。
「そろそろ入っていいか?」
まじめな声とすこしにやにやが混じった声がドアの外から聞こえる。
「う、うん。ありがとう」
風香のその声を聴いて篠原さん、獅子原君、三木君が入ってくる。
「まずはみんなありがとう。でもなんでここに来てくれたの?」
「海原がな、なんか松原のことが気になるって」
「え、えぇ!?」
「ちがうちがう。それは誤解ある言い方!」
俺は篠原さんの言葉をすぐに否定する。
「風香の机に入ってた手紙見えちゃって。あと昨日からちょっと様子おかしかったから」
「うまく隠してたつもりなんだけどダメだったね。ありがと、かい……雄志君、」
「え、な、なま……」
やっぱり雄志って呼んでくれた。嫌われてなかったぽい!
風香の顔がまたすこし赤くなって目をそらす。
「篠原さんたちも本当にありがとう」
「全然いいってことよ」
「あ、あと松原さんさ、気を付けなよ」
「え、えっとどういうこと?三木君」
「松原さん今学校で一番ってぐらい注目されてるから」
「え!?なんで?」
いや、まさかの無自覚?自分かわいいって気づいてない?あなた超美少女だよって今すぐ伝えたいけど恥ずかしすぎて俺には無理。
「松原さんすっごくかわいいからだよ!」
獅子原君すご!?え、俺と同じアイドル好きだよね?ドルオタって俺みたいな陰キャじゃないの?
獅子原君根っからの超陽キャでドルオタなの?欠点なくない?俺完敗じゃない?
「えっとえっと……」
俺の横で風香が顔をさらに赤くしている。風香ならかわいいなんて言いなれてるだろうに、そんな真っ赤にならなくても。
「大輝、松原さんが困ってるだろ。というかそろそろ教室もどろーぜ」
そういわれて腕時計に目線を落とすと、確かに昼休みの残り時間が少なくなっている。
先に篠原さんたちが外に出る。
俺は風香の背中をトンと軽く押して、覗き込みながら、
「いこっか、風香」
といって教室を出た。
――――――――――――――
「雄志くん、それは反則だよ……」
――――――――――――――
「ねえ、海原君」
「うわ!?」
学校では慣れていない声に驚きながらもすぐに冷静を装う。
「なんだ、はる……新見さん」
「遥でいいのに」
「ならあなたも雄志でいいだろ。で、なんなんだよ」
俺と遥は友達という設定にしてるとはいえまだあんまり学校ではしゃべっていない。
こうして話しているときも周りから、
「やっぱり新見さんと海原君ってお似合いだよね」
「なんかあそこだけ漫画の世界線だよね」
なんていう声がめっちゃ聞こえる。
正直恥ずかしいし、今すぐ逃げたい。
「女の世界を海原君はわかっていないね」
「わかんねーよ。で、だから何?」
「逆になにも言ってこないの?」
あーこれたぶん、昼休憩のことばれてるな。まあ、遥なら気づくとは思ってたけど早いな。
答え合わせで風香が篠原さんと教室から出た時をうかがって俺に話しかけてきたのか。
「わかってる人には言いません。ってかそろそろ風香達たち帰ってくるぞ」
「海原君の口からききたかったんだけどね、まあいーや。じゃあもどるね」
遥が俺の席から離れて1分もしないうちに風香たちが帰ってきた。
「雄志君、今日暇?」
「ん?あー暇だね」
すこし間をおいてなぜか頬をピンクに染めなが深呼吸をして、
「そっか、ならさ放課後付き合ってほしいな」
そうかそうか、放課後どっか行きたいところのかな。
えっと今の話で行くと俺と風香の二人でだよね。
俺と風香の二人で、放課後どこか一緒にいく。
これって……、まさか……、
俺、風香にデートさそわれたぁぁぁぁぁ!?
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