1章 第2話 イケメンの日常
俺、海原雄志(かいはらゆうし)はイケメンだ。
今日も朝から女の子に声をかけられたし今普通に登校しているだけで女の子からの視線があつい。
斜め前にいる女子3人組の声がイヤホン越しに聞こえてくる。
あ、イヤホンはしてるがまだ音楽は聴いてない。
「海原君ってさやっぱかっこいいよね」
「うん、クールだよねー」
「あんなにかっこよくて成績もかなり上の方だよね?スポーツもできるし」
「でもなんでいつも一人なんだろ?友達といるところ見たことないよね」
それ以上は心に来るから言わないで。結構ダメージだから。
「ばかっ。普通に考えたらわかるじゃん」
「「え、なに?」」
え?
残りの女子二人とともに俺の心の声が重なる。
俺も無意識にその女の子を見てしまう。
なんでわかんの?陰キャコミュ障のこと知られてんの!?
「レベルだよレベル」
「「レベル?」」
レベル?どゆこと?俺もわからん。
「いや普通に考えて?海原君のスペックに合う人たちってほぼいないじゃん?自分のレベルより明らかに低い人たちと絡むのが嫌なんじゃない?」
まってまってそんなこと思われてたの!?ただしゃべれないだけ!
そう俺、海原雄志はイケメンなんだが超絶ド陰キャの2次元アイドルオタクなのだ。
「えーなにそれかんじわるー」
「まあでもあれだけスペック高かったらわからないこともないけどね。でも感じ悪い」
あのーお嬢さんたち?後ろに本人いますけど?もう俺のライフはゼロですよ?
すこし間があった後に真ん中にいたボブの女の子が思いついたように話し出す。
「でも、新見さんと新生徒会長の宮前先輩とあと篠原さんは海原君レベルでしょ。うちの学校の3大お姫様」
ここで一応紹介しておくと新見さんというのは俺の幼馴染で、新見遥、篠原さんはクラスの超絶陽キャ女子、宮前先輩は今日就任の新生徒会長だ。
まあ、俺のような陰キャには篠原さんと宮前先輩は雲の上のような人だ。
「えーでも3人とも告白全部断っているらしいよ」
「なにそれお姫様気取り?なんかむかつく」
「「だねー」」
ひーこわ。女子の怖いところ聞いてしまったかもしれん。
これ以上ここに居たら俺の心持ちそうにないのですこし歩くスペースを上げる。
「「「あっ」」」」
俺に気づいた彼女たちの顔きまずそう。
どうしよう。何を言えばいいの?あ、えっと朝だから挨拶か。おはようでいいのかな?
「お、おは……」
「海原くんおはよう!!」
さっきの女子トークの1トーン高い声でボブの女の子がおれの挨拶を遮ぎながら笑っていった。
「「おはよう!」」
後の二人も続いて満面の笑みで微笑みかける。
え?さっきまで俺の悪口言ってたよね?
そんな切り替え速く言えちゃうの?切り替えスイッチって存在してるの?手のひら返しすぎて複雑骨折しない?
頭の中の突っ込みが絶えず思いつくが肝心の挨拶が口から出ない。
「お、おは、おはよ……」
俺はそれだけ言って校門までダッシュして駆け抜ける。
今日はあいさつできた!!!
雄志頑張った!えらいぞ雄志!すごいぞ雄志!
「え、いま海原君おはようって言った……?」
「いった。いったよ!」
「初めて海原君としゃべった!」
「やっぱクールだよねぇ」
「かっこよかった……」
――――――――――――
「雄志……」
3階の窓から小さく雄志の姿が見える。
雄志の後ろにいる女の子3人組がはしゃいでる。
多分雄志がなにかしたんだろう。
あの子たち結構かわいいって女子の間でも有名な子たちだよね?
まぁ……よくも悪くも雄志は興味ないだろうけど。
「遥ちゃんおはよー」
「おはよ」
夏の太陽がまぶしかったので私はカーテンを閉めた。
――――――――――――――
「ゆう……くん?」
私は目の前の走っていく男の子にあの日の懐かしさを感じて声が漏れる。
「望~。おはよ!」
後ろから聞きなれた声がした。
「なぎさ、おはよう」
「なーに、望緊張してんの?新生徒会長のあいさつ」
「き、緊張してないわよ」
「ふーん、そっか。ま、お互い頑張ろ」
「うん、がんばりしょうね」
――――――――――――――
「……………………以上で所信表明演説とさせていただきます」
会場から一斉に拍手が沸き起こる。
ほとんど聞いてなかったが俺も拍手しとく。
なんかよく知らんけどめっちゃ美人でかなり人気ある人らしい。
どっかで見たことある気もするんだけどどこだったかなぁ。
「やっぱここがおちつくなぁ」
俺はいつものお昼ごはんの場所、体育館の男子トイレの個室に居た。
この学校の体育館は数年前に改装工事してトイレもすべて冷暖房効くようになっている。
朝、遥が作ってくれた弁当を広げる。
卵焼きにウインナー、グラタンとスパゲッティあとハンバーグも入っている。
「うまい……」
自分でもある程度は自炊するがやっぱり人に作ってもらうほうがおいしい。
(Nine!)
「うわ!?」
あ、やべスマホのマナーモード解除してなかった。
うちの学校では持ってくるのはいいが放課後以外は電源オフにしないといけない。
もし鳴ったら没収される。
まあでも俺にNine送るの遥しかいないから授業中なることはないんだよな……。
スマホの画面を見るとやっぱり遥からのNineだった。
(雄志、今晩ひま?暇だよね?夜ごはんいっしょにたべよ)
遥のやつ俺がぼっちなのしってて遊んでるな。
(了解。でも明日、新見家でごはんだろ?二日連続いいのか?)
明日は俺の誕生日で、毎年新見家で過ごすことになっている。
さすがに二日連続は気まずい。
少し間が空いて返事が返ってくる。
(雄志の家で食べよ。私作るし)
(え、俺んち?いいけど朝作ってくれたから俺作らして?)
(え、作ってくれるの?)
(うん)
(わかった。ありがと)
OKのスタンプだけ送ってスマホの画面を閉じる。
「はぁ……」
遥はいくら幼馴染とは言え俺に油断しすぎてる。
高校生の女の子が夜同級生の家にくるなんて普通じゃ考えられない、ましてや遥は学校でも有数の美少女だ。
もうちょっと危機感持ってほしい。ほんとに、マジで。
まあ、そろそろ教室戻るか。次の時間体育のやつら来たら出ていけないしな。
「あ、あの……」
「は、は、はい?」
教室に戻る途中、朝目の前にいた女の子から話しかけられた。あのボブの子だ。
「え、えっと。海原君……。そ、そのキンスタってやってる?」
えっとどういう状況?キンスタ?あ、あのキンスタグラム?
あの陽キャたちの間でマウント合戦繰り広げられてるという噂のやつ?
やってるわけないしまず、この子の名前知らないんだが?
「え、えっと、そ、その、な、なま……」
あーーーもう!また俺のコミュ障陰キャ発動したじゃん!名前すら聞けんのか俺は!
「何やってんのこいず……。か、海原君!?」
だれだれだれ。新しい人来たよ、君誰!?
「小泉なに抜け駆け!?自分だけ連絡先聞くなんてずるいよ!私にも教えて海原君」
「え、え、えっ。い、いやそ、その」
まさかやってないなんて言えないし名前なんて二人も来られたら聞けないしどうするどうする。
「ご、ごめんなさい!い、いまスマホ教室だからごめんなさい。許してください。ごめんなさーーーい」
もう最後のほう早口すぎるし走りながら言ったから聞こえないと思うけど嘘ついてごめんなさい。でもあんなキラキラした人たちは怖いし、無理ほんと無理。ごめんなさい。
「はぁはぁ………はぁ……」
走って教室に入ったからかめっちゃみんなにガン見された。
そんなに見ないでくださいごめんなさい。
「走ってるのもかっこいい……」
「やっぱかなり運動もできるんだね」
遠くにいる女子がそんな話をしているが俺はただ逃げてきただけなんだけどな……。
「海原君モテモテですね」
「ふぇ!?」
後ろから小声なのに殺気を放った声が聞こえる。
遥だ。学校ではほとんどしゃべらないのにこういうときだけ話してくる。
今日の夜ごはん、遥の嫌いなピーマンにしますよ?
って学校で言えたらいいのだが俺はなんにも言えず席に座る。
「か、海原君だ、大丈夫?」
そう話しかけてくれたのは横の席の松原さんだ。
前髪を下ろして眼鏡かけてマスクをしている、正直俺と同じ陰を感じる女の子だ。
席替えが担任の方針で4月から行われてないせいでずっととなりなのでたまに声をかけてくれる優しい子だ。
「う、うん。あ、ありがとう、ご、ごございます」
陰キャ同士仲良くしたい。
学校が終わりスーパーに着て俺は買い物をしている。
今日は卵と玉ねぎが安いな。
玉ねぎは切って冷凍しておけばいつでも使えるのが便利だ。
あ、今日は親子丼にしよう。鶏肉安いし、なにより簡単だ。
遥はおれより料理うまいから俺が手を込んだのつくるより自分で作るだろう。なので遥が来るときは遥がよく作ってくれるのだが俺が作るときはあえて簡単な男飯を作る。
おいしそうに食べてくれるので正直めっちゃうれしい。
もうだいぶカゴにいれたしそろそろ帰ろうかな……。
「海原君……?」
背後から思いもしない声が聞こえてくる。松原さんの声だ。
「えっ?」
いや、マジで声は松原さん。
でも目の前にいるのは超美少女、松原さんは普段眼鏡で前髪長くて全然目の前にいる子と違う。
前髪は左右に散らして、長い黒髪がなびいている。
現代の美少女大和なでしこといっても過言ではない。
「え、えっと、ど、どこかでお会いしましたか?」
正直俺はイケメンなのでよく知らない人から声をかけられ、逆ナンされることもある。まあ、コミュ障過ぎて走って逃げるけど。
「えっと松原だよ?ごめんね学校と雰囲気違うね」
……………………?
…………………………?
「えーーーーーーっつ!?うそ、うそ、うそ!?ま、松原さん!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます