イケメンなのに陰キャすぎて幼馴染としか喋れません

@himenoaki

第1章 幼馴染

第1話 俺イケメンなのにぃぃぃ!!


 「雄志君ってまさかの陰キャオタク……?アニメなんて好きなんだ」

 「い、いや、す、すきというか……」

 「なーんだ。いつもクールぶってるわけじゃないんだ。ただの陰キャなんだ」

 「い、いや……」

 「私、陰キャ嫌いなの。もう私に話さないで。さようなら」


 「はぁはぁはぁ……」


 朝のまぶしい光が部屋にさしこんでいる。

 なんて目覚めの悪い夢をみたのだろうか。

 今日から7月だからだろうか、朝ですらすでにもう暑い。

 俺、海原雄志(かいはらゆうし)はうるさいアラームを止め洗面台へ向かう。

 冷水で自分を目覚めさせて鏡に映る自分を見る。


 「やっぱ俺はイケメンだ……」


 そうなのだ俺はイケメンなんだ。イケメンでスポーツも勉強もできる、ただ……ただ……。

 濡れた顔をタオルで拭きリビングに向かう。

 なにかいい匂いがしている。ウインナーでも焼いているのか?


 「あ、雄志おはよー」

 「あぁ遥いたのか。おはよ」

 「いたのかじゃないよ!超絶美少女の幼馴染がこんな朝からご飯作っているんだよ?普通の男ならいちころだよ?」

 「イケメンに作れて幸せだろ。まあありがとな」

 「学校でもそんなんだったらいいんだけどねぇ」


 ため息をつきながら俺の朝食と弁当を作っていくれているのは新見遥(にいみはるか)だ。

 遥は俺の幼馴染で隣の家に住んでいる。

 母親同士が親友でいま俺が一人暮らしをしているから遥のお母さんが心配して遥をたまにご飯を作りに来させてくれる。

 自炊するし家事は全部基本出来るがそれでも一人は寂しい。

 だから俺も遥が来てくれるのはうれしいしかなり感謝している。


 「「いただきます」」


 俺と遥の声がリビングに広がる。

 今日はスクランブルエッグとウインナー、あと納豆ごはんだ。


 「はるか~、おれの大好きな朝食じゃん」

 「うん。雄志の15歳最後の朝食だからね。雄志が好きなのにしたよ」

 「えー、ありがと。やっぱ遥は素敵なお嫁さんになるぜ」

 「えっ……はいはい。わかったから早く食べな。遅れるよ」


 俺は遥の作ってくれたスクランブルエッグを口に運ぶ。

 甘くておいしい。

 遥のお母さんが作ってくれたのを一度食べたが甘くはなかった。俺のために改良してくれたんだろうか。

 ウインナーも塩コショウの味付けだけだが完璧な焼き具合だ。めっちゃうまい。 



「「ごちそうさまでした」」


 遥が自分の鞄を持って席を立つ。


「じゃあ、雄志学校でね。先行っとくねー」

「おう。ありがとな」


 俺と遥は一緒には学校に行かない。

 一緒にいるところをみられたらいろいろまずいからだ。

 とりあえず俺は食器を洗いながら横に置かれた弁当を見る。


 「遥、作ってくれたのか。ありがと」  


 誰にもいないリビングに水の音だけが聞こえる。

  


 俺は学校まで歩きながらイヤホンを耳につける。


 「ねえねえ、今日こそ声かけても大丈夫かな」

 「え、でもイヤホンしてるし邪魔じゃないかな……」


 曲を流す前にすこし離れたところにいる女子高生の声が聞こえてくる。

 うちの学校の制服ではない。

 (話しかけてくんな、話しかけてくんな)

 俺は必死に念じる。女子高生が俺に近づいてくる。

 ここで逃げるわけにもいかないので女子高生のほうを向く。 


 「あ、あの……。毎日見かけていて……」


 うわ。話しかけられてしまった……。

 後ろからもう一人の女の子が応援している。


 「も、もしよかったらお友達になってくれると嬉しいです!」


 目の前の女の子が顔を真っ赤にしながら頭を下げる。

 い、いや俺この子の名前も知らないしな……。かわいいとは思うけど。

 とりあえず名前聞くか……。


 「あ、あああのの……」

 「へ?」


 目の前の子は子犬のように首をかしげる。


 「いや何でもないです。ごめんなさい。急いでるでのごめんなさい。また今度の機会があったらよろしくお願いします、ごめんなさい。この度はありがとうございました」


 俺はそれだけ言って走り出す。

 

 またやってしまったぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!

 

 あんなに頑張って声をかけてくれたのになんの返事もできなかった。

 ふ、普通にかわいかったし名前ぐらい聞きたかったのに!

 俺は、人と話すことが極度に苦手だ。

 遥と家族以外とはほとんどまともにしゃべれない。

 多分俺のことを短くまとめるなら

   イケメン二次元アイドル陰キャオタク

 といったところだ。

 多くの人は容姿端麗、学力優秀、スポーツ万能と聞くとどう感じるだろう。

 しかも俺は高校生だ。そしたらこんなことを言われるかもしれない。

 「1軍、陽キャ」と。

 振り向けば女の子がざわめき、休み時間にはクラスの一軍が俺の周りを囲む。

 放課後には毎日男友達や女友達と遊びやデート、そんなことを思いつくかもしれない。

 でもな、俺にはコミュ力がないんだよぉぉぉぉ!

 コミュ力がなさ過ぎて友達どころか誰とも話すことができない。

 それが俺、海原雄志15歳。

 せっかくイケメンに生まれたんだから俺に青春を謳歌させてくれぇぇぇぇぇ!!

 

 






 

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