第148話 耐性持ちのアクセサリー
妻にどんなアクセサリーをプレゼントしようかと悩んでいたところ、カウンターの奥からイッテツさんとミミちゃん、そして小柄な猫耳? が生えた少女が現れた。
「お待たせしました。彼女が店主さんだそうです」
「やっほー! ミコだよ~」
ミコさんはぴょんぴょこ飛び跳ねながら近づいてくる。
「はじめまして。ハイト・アイザックと言います」
「リーナ・アイザックです!」
「ふむふむ。ハイトさんにリーナさん……名前覚えたよ!」
ミコさんは言葉を発するごとになにかしら体を動かしていた。ニコニコした表情や茶髪のショートヘアも相まって活発な印象を受ける。
人見知りで表情の硬いミミちゃんとは対照的な人物に見えた。
「ミコ。ハイトたちも、友だち」
「知ってるよー。だって、たま~に話してくれてたもん。イッテツお兄さんの友達にすっごい優しい人がいるって。いっぱい遊びにきてくれるから嬉しいとも言ってたね!」
「!? いっちゃ、ダメ。はずかしい……」
ミコさんの口から思いもよらぬことを知らされた。まさかミミちゃんがそこまで俺のことを気に入ってくれているとは。会うごとに笑顔を見れることも増えていたのでそれなりに仲良くなれているのは感じていたが、それを彼女が他の誰かに話すというのは予想できなかった。
でも、考えてみるとこういう話をしてもらえるミコさんの方こそ、ミミちゃんから相当信頼されているのではないだろうか。
「気持ちは口にしないと伝わらないの!」
「うぅ……でも」
「まあまあ、ミコさんそこら辺で」
「そうだねー。あんまりやり過ぎるとミミちゃん限界きちゃいそうだし」
「ところでハイトさんたちはアクセサリーを探していたんでしたよね? せっかくだからミコさんにオススメを聞いてみませんか?」
ミミちゃんが顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。本人が口にした通り、嫌というより恥ずかしいのだろう。イッテツさんもそれを察して、別の話題を振ってくる。
「そうだったの!? てっきり、ミコはミミちゃんがお友だちを紹介しにきただけだと思ってた。それなら任せて! 効果も見た目も2人に似合うものを用意してみせる!!」
ミコさんは胸を張って自信満々にそう言った。
「えーと、実はさっきお互いに似合うアクセサリーを選んでプレゼントしようって話になちゃって……」
妻は歯切れが悪そうに答える。
「そ、そうだったんだ! じゃあ、仕方ない。ミコはカウンターのところにいるから欲しいものが決まったら、教えてね」
シュンっとしてしまったミコさんは、とぼとぼとカウンターの方へと歩いていく。
「あっ、ちょっと待って。見た目とかは自分たちで選ぶけど、効果とかは全然知らないから、そっちは教えて欲しいかも!」
「そうだね。これだけ種類があると1つずつ確認するのも大変だし。ミコさん、俺は妻用に麻痺とか毒の耐性があるアクセサリーをプレゼントしたいんですけど」
「はいはーい! それなら任せて!! 状態異常の耐性がつくアクセサリーは結構種類があるよ。このゲーム、状態異常の数が多いから需要に答えようとしているうちにどんどん種類が増えてきたんだよねー」
俺が直接見た状態異常は自身が操る火傷とスラミンの毒、それから怨嗟の大将兎による怯みや拘束など。他に忘れているものもある気もするが、とりあえずそんなところだ。だが、掲示板によると他にも麻痺や魅了、氷結、出血など10種類以上存在することが分かっているので、いろんなお客さんからのオーダーに答えていれば自然とアクセサリーの種類が増えてしまうのだろう。
「ちなみに状態異常無効とかっていうのは……」
「今のところミコのレベルと熟練度が足りないから状態異常無効は無理。でも、お値段が高くなってもいいなら、耐性を2つつけることはできるよ! そういうのはオーダーメイドになるから後日商品を渡すことになるけど」
「なら、そっちでお願いします!」
「おっけー! じゃあ、つけたい耐性を教えてー」
「魅了耐性と麻痺耐性でお願いします」
俺の発言を聞いて妻やイッテツさんは不思議そうに首を傾げた。
「ハイト、どうしてその2つなの?」
「ほら、俺たちゲーム始めたばかりの頃にナンパしてきた人たちいたでしょ? あのときは穏便に済んだけど、もしかしたら今後リーナを魅了とか麻痺にかけて無理矢理何かしてくる人が出てくるかもしれない。ゲームの機能的にR18レベルのことはできないけど、不快な気持ちにさせたりはできるだろうし、その対策ってこと」
「なるほど~。じゃあ、私もハイトにプレゼントするアクセサリーには絶対に魅了耐性つけるね! いくらゲームだからって自分の夫が他の女に目をハートにして骨抜きにされてるのは見たくないし」
ということで、お互いプレゼントするアクセサリーには魅了耐性をつけることになった。アクセサリーの見た目の方はお店に並べられているものから好きなのを選べばそちらと同じ型に耐性をつけてくれるという話になったので、妻に似合いそうなものを選んだ。
「オーダーしっかりと承りましたー! 2人にお似合いのものに仕上げるから楽しみに待っててね!!」
その後、連絡を取れるようにとミコさんとフレンドになり、俺たちは店を出たのだった。
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