第136話 パルムの初戦闘


 敵はこちらへ向けて進行中。

 魔法はまだ飛んでこない。


「マモルにパルム。ここは遠距離攻撃で少しでも敵のHPを削ろう」


 指示を聞いた2体はすぐに影の形状を変えた。マモルは使い慣れた影の槍を2本放ち、パルムもそれに倣って1本の槍を飛ばす。


「スラッシュッ!!」


 俺も続くように武技を発動。鉄の剣を全力で振り下ろし、斬撃を飛ばす。


 1の斬撃と3本の槍。それぞれが別のフェザースライムへと襲いかかる。物音がしたため様子見でこちらへ接近していた相手だが、視認性の悪い茂み越しでは攻撃が迫っていることに気づけなかったのだろう。俺とマモルの攻撃は見事、胴体にクリーンヒット。パルムの放った影もフェザースライムの翼を抉った。


「このまま畳みかけよう!」


 フェザースライムの恐ろしいところは風魔法による攻撃だ。1発でHPをごっそりと削られるため警戒しておく必要がある。だからこそ敵全員が攻撃を受けて魔法を発動できない今は攻め時だ。

 従魔に言葉をかけながら、俺は走る。先程彼我の境界の役割を果たしていた茂みは敵へ放った魔法と武技に削られているため、視界は確保できている。1番手前で浮遊しているフェザースライムを標的として攻撃を仕掛けた。


 体の右側に構えていた剣を横一閃。敵は翼をはためかせて回避行動を取ったものの間に合わず。再び胴体へ攻撃が入った。反撃をされては厄介なので、俺は更に追撃。返す刃で左翼を切りつけるとフェザースライムは地に落ちた。


 まずは1匹討伐完了。


 早速、次の標的へ攻撃したいところだが一旦落ち着く。今回は初戦闘のパルムが参加している。ステータス的には弱くないはずだが、一応気を配っておかなければ。


 視線を従魔たちの方へ向けるとマモルは使い慣れた影と頑丈な骨の牙で敵を圧倒している。すでに1匹のフェザースライムを討伐済みで、2匹目の相手をしている最中だった。


 問題のパルムの方は少しピンチか?

 ステータスを確認するとHPがごっそりと削られている。おそらく風魔法をその身に受けてしまったのだろう。

 加勢してもいいが、攻撃手としてではパルムのためにもならない。直接敵にダメージを入れるのではなくサポートに回ろう。

 錬金術の素材に普段からアイテムボックスにストックしている石ころ。それを4つ取り出してフェザースライムへ投げる。劣猿王の皮鎧(上)の特殊効果、投擲補正(小)の効果を受けた4投のうち3つがフェザースライムへと命中。ダメージはほぼないが、敵は突然の横やりに驚き動きが鈍った。


「パルム! これを飲むんだ!!」


 アイテムボックスから低級ポーションを取り出してパルムへと投げ渡す。

 意図を理解した従魔はすぐに口に該当する部分に低級ポーションを注ぎ、回復する。


 横やりを入れたことでヘイトを買ったのか、フェザースライムが俺に向けて風魔法を放とうと魔法陣を展開し始めた。

 このタイミングならすぐにスラッシュで反撃すれば先の攻撃を当てて勝てるだろうけど、あえて受ける選択をする。敵を倒すのはあくまでもパルムだから。

 俺は鉄の盾を体の前に構えて腰を落とした。


 一方、ヘイトが自身から完全に逸れたパルムは攻撃に出る。己の体から突如謎の骨を生やしていく。長く頑丈な骨の棒。それが2m近い長さになったところで自切。更にそれに影を纏わせて武器を作りだした。おそらく武器生成というスキルと影魔法の合わせ技。

 それをフェザースライムに向けて構えたパルムはそのまま前進。魔法陣を展開中の相手は反応が間に合わない。

 影を纏った棍棒による強烈な一突き。横っ面にそれを受けた魔物は後方へとぶっ飛ばされた。


<スカルドラゴニュートのレベルが1あがりました>




パルム(スカルドラゴニュート)

Lv.2

HP:63/120 MP:58/90

力:37

耐:32

魔:35

速:27

運:29

スキル:武器生成、龍骨、再生、怨嗟の叫び、影魔法

称号:<闇の住人><龍の血族>




 パルムのレベルアップのアナウンスが流れたことで戦闘が終了したことを知る。どうやらマモルも相手をしていた2匹目のフェザースライムを倒したらしい。相変わらず頼りになる従魔だ。


「お疲れ様、パルム。ちょっと危ないところもあったけど、勝ててよかった。よく頑張ったね」


 頭を撫でるとパルムはくすぐったそうな反応を見せる。


「帰ったら、ご褒美に獣の遺骨をあげるよ」


 余程嬉しかったのだろう。俺からご褒美の話を聞いてその場でぴょんぴょん跳ね始めた。


 身長は以前よりかなり伸びたのだが、見せる反応は未だに幼い。生まれて数週間なので、それが当たり前なのだが外見とのギャップがあって何とも不思議な感じがする。


「喜ぶのはいいけど、冒険はクランハウスに帰るまでだからね。俺がドロップアイテムを回収している間の警戒は頼むよ」


 先輩従魔のマモルは常に気配察知を使って周囲を警戒している。パルムは索敵スキルがないとはいえ、そういった癖をつけておいて欲しいものだ。


 この後、フェザースライムを解体。小さな翼(白)とスライムゼリーを手に入れた俺たちは経営地へと帰還したのだった。



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