第110話 交換したアイテム確認(2)

 安いポイントで交換したアイテムは粗方見終わった。ここからは魔物の卵などの高レートアイテムを1つずつ見ていこうと思う。


「リーナは何から見たい?」


 アイテムボックスのウィンドウを開いて、交換した物から選んでもらうことにした。


「うわ~、気になるのいっぱいあるなぁ。でも、やっぱり1番見たいのは魔物の卵かな!」


 一応、リクエストを聞いたわけだが……俺が選んでも最初に確認するアイテムは同じだったな。

 やっぱり魔物の卵はテイマーとして最も気になるものだよね。


「わかった。じゃあ、取り出すね」


 アイテムボックスのリストから魔物の卵を選択。


<魔物の卵の種族を選択してください>


「おっ、こんなの出るんだ」


 イベントポイントを交換する画面でも記載されていたが、この魔物の卵は種族を指定できるらしい。

 目の前に新たなウィンドウが開かれ、種族リストが閲覧できるようになった。


「どうしたの?」


 妻には何も見えていないようで、不思議そうな顔をこちらへ向けている。


「ほら、魔物の卵は種族が選べるって書いてあったでしょ? どれがいいか、今選べってウィンドウが開かれたんだよ」

「なるほどね。それで、ハイトはどんな種族の子を新しく迎えるの?」

「……実はまだ決めてないんだよね。だから今からじっくり選ぼうかなって。とりあえず気になる種族をピックアップしてみるよ」


 種族リストを眺めると結構な数の種族が存在することが確認できるわけだが……本当にどうしよう?

 選択肢が多いのは有難いことではあるが、これは時間がかかりそうだ。


「――――ふぅ。とりあえず3種族まで絞れたかな」


 どのくらい考えていただろうか。ログインした際に湖畔にはなかったはずの魚の小山が、マモルによって築かれているのでそれなりの時間が経過していると思われる。とりあえずそれらをアイテムボックスへと放り込む。


「やっと決まったんだ。それで、その3種類って何?」


 隣ですらっちとスラミンをふにふにして遊んでいた妻がその手を止めた。


「不死系統、竜系統、水生系統かな」

「なるほど。アンデッドかドラゴンかお魚か。う~ん、ちょっと魚だけ浮いてない?」

「水生系統って括りで記載されていたから魚がくるとは限らないけどね。この種族を選択肢に入れたのはこの経営地の特性を考えてのことだよ」

「経営地の特性?」

「うん。ここは――――」


 俺たちの経営地は湖とその周辺。そしてこの湖は川とと繋がっており、辿っていけばおそらく海へ通ずるはず。それなら川を下って攻略を進めることも出てくると思う。そうなったときに水生系統の魔物を連れて行けると探索のしやすさが変わってくるはずだ。まぁ、その川の途中で水生系統の魔物をテイムできる可能性もあるので、選択肢には入れたものの本命というわけではない。


 候補に水生系統を入れた理由を妻に説明すると納得してくれた。


「理由はわかったけど、ちょっともったいなく感じるよね」

「それは俺も同意するよ。だって竜系統とかの方が明らかに強そうな雰囲気が漂ってるもんね」

「そうそう。私だったら、すぐにドラゴンを選んじゃうかな。強そうってのも選ぶ理由の1つだけど、何より背中に乗せて空とか飛んでくれたら最高だよね!」


 確かにそれは楽しそう。

 このファンタジー世界を空から見下ろすのはさぞ壮観なことだろう。


 ただ、俺は高所恐怖症なのだが、そのあたりは大丈夫だろうか?

 現実と同様の恐怖を感じるなら、自殺行為もいいところだよ。


「でも、不死も捨てがたいんだよね」

「えっ、どうして? アンデッドってもふもふでもないし、かわいい子がいるわけでもないよ?」

「たしかに見た目はグロ系のやつが多いけど、マモルと同じ系統なんだよね。不死系統の従魔が増えたら、マモルが喜ぶかなーって」

「あ~、そういうことか。だったら、不死系統でもいいかも! 私たちこれまで散々マモルのお世話になってきたからね」


 そういうことなんだよ。

 だから不死系統を新たな仲間として迎えるかどうかはマモルの気持ちを確かめてからにしよう。


「マモル、おいで!」


 湖で魚を狩っていたマモルが水を撒き散らしながら、こちらへ駆けてくる。


「よし、きたね。実はマモルに聞きたいことがあるんだけど、同じアンデッドの従魔増やして欲しい? 同系統の仲間がいなくて寂しかったりしないのかなと思ってさ」


 濡れた骨身を撫でながら問う。

 すぐに答えが返ってきた。


「どっちでもいいらしいよ」


 マモルから伝わってきた気持ちはそんな感じだ。今の仲間たちと十分仲良くやっていけるから種族なんて特に気にしないと。


「だったら、もう竜系統にしちゃえば? マモル自身がどっちでもいいって言うなら」

「いや~、でもなぁ。最初の相棒が不死だったことを考えると卵もそれに揃えたいって気持ちもあるんだよね。だからマモルが気にしてないのは有難いけど、迷いは消えないな」


 本当に迷ってます。

 竜系統のロマンとマモルのおかげでなんとなく親近感のある不死系統。

 あ~、ほんとにどっちにしよう!!


「そんなに悩むなら、いっそ運に任せてみたら?」

「……それでもいいけど、どうやって?」

「シンプルにじゃんけんで。私が勝ったら竜系統、ハイトが勝ったら不死系統」

「それほぼどっちか決まったようなもんじゃ……」

「何言ってんの。じゃんけんはやってみるまでわかんないでしょ?」


 いや、俺は妻とのじゃんけんでほとんど勝ったことがないんですが。


「それじゃあ、いくよ! じゃん! けん! ぽん!!」


 強制的にじゃんけんが始まる。慌てて俺は握っていた拳をそのまま突き出した。


 その結果――――。


「うそ、だろ?」

「あ~あ、負けちゃった。ハイトにじゃんけんで負けるのほんとに久ぶりだね!」


 負けた妻は少しも悔しそうではない。むしろその表情からは久しぶりにやられたことに喜んでいるように見える。


「どうして勝てたんだろう?」

「運!」

「運?」

「うん! だって、私じゃんけんするとき一切何も考えてないんだよ? ハイトも同じでしょ。それだったら、勝敗は確実に運で決まるよね」


 じゃんけんで妻に勝利したことの衝撃が強過ぎて忘れるところだったが、これで魔物の卵の種族が無事に決まった。


 ――――不死系統の卵だ。


「うわ~、なんか禍々しい色」


 種族を決定したことで、実物として俺たちの前に現れた卵。それは俺の足先から膝上くらいまでの大きさがある。色は全体的に真っ黒で謎の紫の血管みたいな模様がところどころに走っている。


「たしかに。これ……生まれてくる子はちゃんと従魔になってくれるんだよね?」

「それは私にはわかんないよ。でも、流石にイベントポイントで交換したアイテムなんだし大丈夫でしょ」

「まぁ、そう信じるしかないか」


 卵を野ざらしのまま放置するのは良くない。というわけで、必然的に俺が次に取り出すアイテムは決まってしまった。


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